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アクション最前線

2016/07/29

子育てを始めた人が、今、政治を語らないとヤバい3つの理由

 


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左:小川智康(おがわ ともやす):NPO法人YouthCreate

1987年生まれ。大学生時に国会議員のもとでインターンをしたことをきっかけに、若者の投票率向上を目指す学生団体「ivote」の設立に参加。現在は、若者と政治をつなぐNPO法人「YouthCreate」(http://youth-create.jp/)の専従スタッフ。1児の父。

中央:中村優子(なかむら ゆうこ):NPO法人フローレンス

1983年生まれ。フローレンスにて小規模保育事業を統括するディレクター。小規模保育園の新規開設などを担当し、事業エリアでのロビイング活動も行う。3児の母。

右:藤岡聡子(ふじおか さとこ):KURASOU.

1985年生まれ。徳島県生まれ三重県育ち。夜間定時制高校出身。自身の経験から、「人の育ち」「学び直し」「生きて老いる本質」をキーワードに活動を行っている。2014年に親の学び直しの場「KURASOU.」(http://kurasou.org/)を設立。二児の母。

フローレンス、KURASOU.、YouthCreateの3者対談
保育事業者、親の学び場、若者の政治参加支援の現場にある危機感

子育てを始めて公的サービスとの接点が急激に増え、それとともに疑問や怒り、改善すべき点を感じている人は少なくないだろう。「何で!?」「どう考えてもこうすべきじゃない!?」「おかしい!!」「いったいどうなってんの!?」。地域の政治や行政に対して抱くこの感情を、思い切って外に出していかないと「ヤバい」―――保育事業者(フローレンス中村優子)と、ハンドブック『子育てと政治をつないだら』を制作した2人(KURASOU.藤岡聡子、YouthCreate小川智康)が、子育てにかかわるすべての人に訴える。


中村:こんにちは。フローレンスで、待機児童問題解消のための小規模保育を都内の6区でやっています、中村です。その中で感じているのは、待機児童を解消しようという意欲のある自治体とそうでない自治体の差がすごく大きいこと。事業者としては、ちゃんと予算、補助をつけてくれる自治体に積極的に行くことになるので、差はどんどん開いていると実感しています。

藤岡藤岡です。2014年から「KURASOU.」という親の学び直しの場を運営しています。私が親になったときに、子を介して知り合う人とは「うちの子が・・・」という子どもが主語の話が多く、親となった私たちが主語となった会話が少ないなと思いました。一番身近な食べ物についても、何が安全か?ということすら、事実を学べる場がないわけです。もしかしたら、親にこそ学び直しの場が必要では?と思い、団体を始めました。初期のころは政治の他にエネルギーや食、廃棄物やインクルーシブについてのテーマを設けていたんですが、2016年現在は「政治との関わりかた」「暮らしの中にある人権」にしぼる方針としました。ハンドブック『子育てと政治をつないだら』もその一環です。

小川:NPO法人YouthCreateスタッフの小川です。YouthCreateは「若者と政治をつなぐ団体」として2012年に始めました。メンバーはもともと、国会議員の元でインターンをやっていたつながりで。「政治の場になんでこんなに若い人が少ないんだろう」というところから始まりました。今の活動は、地方議員と若い人で一緒にお酒を飲んだり食べたりしながら語り合うVotersBarや、18歳選挙権関連の事業が多いですね。

①政治の場で「親の存在感」は薄すぎる!

藤岡2016年4月から、私の住んでいる区で外部評価委員を務めているんですね。これは行政が行なった事業に対して自己評価したものを、大学教授や公募で選ばれた委員が区民の目線で評価するものなんです。応募して委員となりました。ただ、委員会は平日の昼間にあるので、私もかなりタイトなスケジュールの中で参加しています。

委員の構成は一番若くて20代後半の主婦の方、次は私、そして次は60代後半から70代の方。委員が評価する内容に「保育所運営」に関するものがあるので、とても自分ごとですよね。なのですごく質問します。現場で感じた意見も行政の担当課長に伝えるんですが、質問すると、「そういった声はあがってきていません」と。きっと、今までの外部評価委員会でも、現場を知らない委員は「そうですか」となってきたと思います。行政の方や委員の方が悪いというわけでなく、私たち親が、良い意見も、改善して欲しいという意見もしっかり声をあげられていないんだなと思ったんです。暮らしの仕組みをつくる政治・行政の場で「親の存在感の薄さたるや!」と愕然としました。私たちが存在感を出していかないと、自分たちの首を絞めていくんだなと思った瞬間でした。

小川:僕も自分ごとなんですけど、うちに生後4か月の第一子がいて。やっぱり子どもが生まれて役所に行く機会が圧倒的に増えた。公的なことについて気づくこと、考えることも増えますよね。それを外に出せるかどうか。YouthCreateとKURASOUでワークショップをやっているんですが、「安全安心に政治を語れる場」になるように考えてます。

藤岡「何派か?」とか言われると、ウッとなり話せませんよね(笑)。KURASOU.を立ち上げたもう一つの背景としては、世の中に「答えありき」の勉強会しかないなとも思っていて。同じ考えの人だけが集まって、同じような話をする。でも社会は色んな人がいる。その前提で始めないと、と思うんです。「答え」はそれぞれ自分の中にあるはずで、きっとそれを導き出したり、人と対話する機会がないだけなんだと思うんです。

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②当事者の声がなければ、自治体は「他人事」

中村:ワークショップには人が集まっていますか?

藤岡ワークショップは、最初参加者3人だったんですけど(笑)、徐々に徐々に、一定の層にはKURASOU.のワークショップの存在が知られるようになりました。それはすごくいいことなんですが、一方でそれだけでは社会は変わらないなぁという思いもあって。ワークショップへの参加はなかなか難しくても、”なんだか世の中の動きについて、きちんと知りたくなった……”という親が、ふと手に取れて、手元に残るものを作りたかった。

小川:ハンドブックには「政治・行政への声の届け方」を載せて、用語や仕組みを解説しています。これが全部じゃないし、どれがいいのかは問題によって違うんだけど、区長にメールするなど一人でもできることはある。で、ちゃんと返事が来たりもします。選挙だけが民意を反映させるものではないということ、知ってほしいと思ったんです。

中村:区の職員のインタビューも載ってますよね、感動しました(笑)。

藤岡子育てに使われている予算とか、男女が政治に参画するようになった年(1946年)や子育てに関する年表をまとめ、何が何でも行政や政治のせいにする、ということよりも、今と昔を比べて今はどうだろう?と客観的に判断できるものにしたくて。

なので、対談相手も、議員さんではなく行政の方にお願いして。行政の人が何を考えているのかを知りたいと思いませんか?私だけかな?(笑)インタビューでは、「市民が街の主役、お客さまではないよね」「要求ばかりではなく、互いにできることを考えてから、一緒にこの先やりませんか、というのが理想なんだよね」という話をしてくれています。インタビューさせていただいたお2人にはそんな話ができるほど成功体験があるから語れる。そんなの無理だよ、という話でもないはずなんです。

中村:自治体の人はほんとに忙しいんですよね。国からトップダウンでどんどん制度変更が降りてきて、それを適切に書類に落とし込むというだけで死ぬほど忙しいみたい。だから、保育園を新しく作るとか、そんな大変な仕事をわざわざ自分からやるようなことはできない。インセンティブがない。その結果、当事者が声を上げない限り、自治体は他人事です。ほんとに、声を上げないとやばいんです!と言いたい。

やる気のある自治体とそうでない自治体の差も開いてきています。市民の声に応えていこうという自治体は、区長レベルで方向性を打ち出している。公募の計画を聞くと、初期でいくら、運営費でいくらというのをさらっと出してくれる。一方で、「次の4月に向けて新規開設の予算はどうですか?」と聞いても「今のところ予定はないです」、つまり「取りあえず現状維持」というところもある。事業者はふつう、前者の区に行きます。

藤岡:フローレンスは自治体へのロビイングはしてるんですか?

中村:国レベルのロビイングは代表を中心にいろいろやらせてもらっているんですが、私たちは、事業を展開しているエリアで、もっと細かい、「イケてない」ところを区に対して要望しています。「親の外国語対応のために、翻訳予算をつけてください」とか。役所の職員のところにも行くんですが、議員のところにも要望書を出す。ほんとに細かいんだけど、言わないとわからないんです。「こういう保護者のニーズに事業者として応えられません」と。幼稚園などの既存インフラの事業者さんと連携しにくい時に、保育課長からひと言言ってもらう、ということもあります。

藤岡:政治にかかわるのってけっこうテクニカルなところがありますもんね。どうやって保育課長のところに(意見をしに)行けるのだろうとか。(距離が)遠すぎて。

中村:でも、正しい主張で根拠をつけて(意見を)組み立てれば、例えば「隣りの区ではやっているのにこの区では何でやってないんですか」とか比較したりすると、効きますよ。こういう成功体験を第一歩にしてほしいです。

③アクションを起こす親の背中を子どもは見ている

中村:フローレンスでは、保護者のことを「クルー」って呼んでいて、お客様扱いはしません、子どもの未来のために一緒に最善を尽くしていきましょう、だから汗もかいてね、と言っているんです。
クルーやパートナーシップという関係性がいろんなステークホルダーと結ばれていくことしか、地域の子育てをよくしていくという確かなものはないのかなと思っていて。そういう背中を見せるのが我々の務めかなと思うんです。

藤岡:ワークショップには夫婦で、子連れで来てくださいと言っているんですけど、そうすると「夫婦で会話が増えました」「愛が深まりました」ってメールをもらったりして。私なんていいことしてるんやろ、と思うんですけど(笑)。でもいろんな話をしている姿や関係性を子どもは見てるんですよね。

小川:親世代って地域的な既存の組織がなくて、高齢者とか「なんとか連合」みたいなので役所とつながってはいないですけど、我々にはネットがあるので。

中村:そう、全国的にも盛り上げていくことができます。

藤岡:親の存在感を見せていかないとほんとにマズいんですよ!都知事選もあるし、選挙だけではないですから。かっこいい背中を子どもに見せていきたいですよね。

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KURASOU.とYouthCreateが作成したハンドブック「子育てと政治をつないだら」についてはこちらからどうぞ。

ハンドブック「子育てと政治をつないだら」 | KURASOU.

書いた人:大島迪子