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2016/11/08

【社会起業のレシピ】vol.17「本格的な準備をしよう(資金編)」

 


「小さく始める」が鉄則

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街頭募金は実は馬鹿にならない額を集めることができる

テストを繰り返して「これはいけるぞ」と手応えをつかめたら、いよいよ本格的なサービス展開を考える段階だ。まず必要になるのが「お金」。なにせ、ソーシャルビジネスを始めるにも、「先立つもの」(=お金)が不可欠なのだから。では、スタート時点でどのくらいの金額を準備しておけばいいのか。理想は、財務モデルをつくって分かった損益分岐点までビジネスがまわせていけるお金だ。それくらいの兵糧は持っていたほうがいい。

【目安は200万〜300万から】

もし、それがかなりの金額になってしまうのならば、損益分岐点をなるべく近づける努力が必要だ。スタッフを雇わない、事務所は自宅で、実家暮らしで生活費を抑える……など、固定費を減らしていくことだ。そもそも、NPOやソーシャルビジネスが扱うのは、誰もやらないような、儲けがあまり期待できない分野であることが多い。だからこそ、小さく始めることがベター。それがリスクを最小限に抑える方法である。実際、まわりを見渡しても、200万~300万円からスタートするケースが多い。

銀行からお金は借りられない

では、そのお金をどうするか。

もともとお金がある人なら、自腹を切ればいいのだが、なかなかそうもいかないだろう。だったら、足りないぶんは、銀行からお金を借りればいいのだろうか?「NO!」である。スタート時点では、まず銀行は貸してくれないと思ったほうがいい。だから、銀行以外でお金を調達する方法を考えなければいけないのだ。そこで、NPOやソーシャルビジネスにお勧めのお金の調達方法を紹介する。

(1)内から借りる

お金の調達方法としては、もっともやりやすい方法だろう。弱点は、集められる金額にある程度限界があることと、人間関係を壊しかねないリスクがあることだ。「一生恨まれる額」ではなく「返ってこなくても仕方ない」と思ってくれる程度のお金を、身内の財政状況に合わせて借りよう。

(2)助成金

NPOやソーシャルビジネスなどの活動に企業や財団などが援助してくれるのが助成金だ。金額は10万円程度から500万円くらいまでと、いろいろある。使い勝手も組織によって異なる。助成金は申請すれば誰でも受けられるものではなく、審査を通過する必要がある。

【助成金を取るコツ】

通過するには、実はコツがある。それは、その助成金を提供してくれる組織がどういう活動に資金援助したいと考えているのかをしっかり読み取り、それに沿った申請書を作成すること。読み取るのは難しくない。募集要項にはその意思がしっかりと書かれているからだ。また、過去の助成実績を見ることでも、彼らの意思を判断することができる。ただし、意思を読み取れても、自分たちの活動がそれに沿ったものでないのならば、申請はしないほうがいい。無理やり先方の意思に合わせようとしても、結局ボロが出てしまい、通過できない可能性が高いからだ。「この意思には応えられるぞ」と確信が持てるものに申請することをお勧めする。

【申請書をどう書くか】

さて、次に申請書をどう書くか。ただ書けばいいわけではない。先方の意思にきっちり応えられることをしっかりアピールするのだ。たとえば、革新性のあるプランを求めている組織であれば、「われわれのこの部分は、このように革新的だ」とピンポイントで応えていく。

僕は、助成金申請書は、営業企画書やエントリーシートと似ていると思う。相手のニーズに自分たちの事業がどれだけマッチしているのかを熱く伝えていくのだ。僕は助成金の審査にしばしばかかわらせてもらっているが、実際、こうした書き方ができている申請書は驚くほど少ない。ひたすら自分たちの思いだけを語り、相手が知りたいことにまったく答えていないものが多いのだ。ということは、逆に相手の意思に応えられる申請書が書ければ、ほかの団体よりグンと抜きん出て、通過できる可能性は高くなるともいえるだろう。

なお、申請書を書く際には、最初から書き込んでいこうとせず、3ステップに分けるといい。ステップ1は「骨組み」づくり。質問に対して箇条書きで答えていく。そこに「肉付け」し、文章にしていくのがステップ2。最後のステップ3は「装飾」。読みやすいかたちにするために、写真や模式図を入れたり、小見出しをつけたり、強調した箇所を太字にしたりするのだ。こうした配慮があるだけで、審査員の印象もずいぶんとよくすることができる。

【助成金検索サイト】

更に、助成金を提供してくれる組織を探す際には、以下の2つのサイトを利用するといいだろう。
CANPAN
NPOWEB

(3)ビジネスプラン・コンテスト

ビジネスプラン・コンテストとは、公的機関や大学、企業などが主催してビジネスプランを募集し、優秀なプランには賞金を与えるというものである。賞金は数万のものから、数百万円までいろいろ。起業したい人の資金調達の方法としてしばしば活用されている。かくいう僕もかつて、こうしたコンテストに出まくって賞金稼ぎをしていた。ビジネスプラン・コンテストで賞金をモノにするポイントは、なんといってもプレゼン力。審査員の共感を得られるプレゼンができるかどうか。

まず押さえておくべきは、プレゼンの基本である。「問題」→「理由」→「解決策」という3部構成で自分のビジネスプランを説明していく。「こういった社会問題がある。その理由にはこうした事情がある。それに対して、われわれはこのように解決する」といった具合にだ。

【パーソナルWHY】

ただし、これだけでは審査員の共感を得るのは難しい。冒頭でしっかりと「どうして自分がそれをやるのか」と「パーソナルWHY」を伝えておく必要がある。でなければ、「内容はわかったけど、べつに君がやらなくてもいいよね」となってしまう。これではどんなに立派なビジネスプランを語っても、説得力のないプレゼンになる。

とりわけ、NPOやソーシャルビジネスでは、「パーソナルWHY」を語っていくことは必須といえる。なぜなら、事業に真実性や倫理観といったものが非常に問われる世界であるゆえに、それを立ち上げる人のパーソナリティーが共感の有無に大きく影響するからだ。そして、しっかりとした「パーソナルWHY」があれば、それはまわりを感染させる力となり、活動に協力してくれる人を広げていくことにもつながっていく。

といっても、「パーソナルWHY」をお涙ちょうだいの話にする必要はない。そのためにウソの物語をつくったところで、百戦錬磨のツワモノが集まる審査員たちを騙すことはとうていできない。それどころか、ウソがバレたら二度目はないと考えたほうがいい。「パーソナルWHY」は、自分が経験した真実を語ればいい。それには実は、現場で100人の話を聞いた経験が大いに役に立つ。そこで出会った人の言葉、目の当たりにした光景……そうした経験が、相手が納得し、共感できる「パーソナルWHY」へとつながっていくのである。

(4)クラウドファンディング

これは、インターネット上で、ビジネスプランや必要な金額等を提示し、一般の人々から資金を募る方法である。クラウドファンディングは、NPOやソーシャルビジネスと非常に相性がいい。なぜなら、そこで語られる「思い」は、共感を呼びやすく、「ならば、お金を出そう」と思ってもらいやすいからだ。また、一人が出資する金額が比較的小さいことも、個人の出資を喚起しやすいといえる。

助成金やビジネスプラン・コンテストの場合、お金を得られるかどうかは一か八かのところがあるが、クラウドファンディングは違う。やればやったぶんだけ集まる可能性が高い。その意味で、非常に使いやすい資金調達の手段なのだ。僕がソーシャル・ビジネスを始めた10年前には、この方法は存在しなかった。うらやましいかぎりだ。

【クラウドファンディングでも、パーソナルWHYは重要】

ただ、出資者の心をつかむには、「思い」がものすごく肝心となる。なので、「パーソナルWHY」がものすごく重要になる。これは、対面でプレゼンをするビジネスプラン・コンテスト以上であろう。ネットをはさむぶん、プレゼンのときのような空気感染があまり期待できない。「パーソナルWHY」そのものから、あなたの本気度が問われることになる。

なので、クラウドファンディングは、スタートアップの時期に自分の「パーソナルWHY」を磨いていく方法としても活用できる。資金調達もできれば、一石二鳥である。どんどん活用することをお勧めしたい。

【クラウドファンディングサイト】

なお、クラウドファンディングのプラットフォームには、おもに以下のものがある。
READYFOR?
ShootingStar
CAMPFIRE
それぞれプラットフォームの特性を調べ、自分たちにとって最適だと思うところを活用してみよう。

お金は必ず集められる、ある程度は

以上が、NPOやソーシャルビジネスでのおもな資金調達の方法である。なかには「ベンチャー・キャピタルからの出資を活用する方法はないのか?」といった質問があるかもしれない。僕は正直、これは難しいと思う。というのも、NPOやソーシャルビジネスの場合、経済的リターンが少ないため、無配当・無上場での出資となり、ベンチャー・キャピタルから相手にされないケースが多いのだ。

一方で、「それでもよし」とする「マインド出資」もある。「おまえがそこまで頑張るのならば、俺、出資するよ」といった場合だ。僕の友人には、その方法で「株式会社」にしてソーシャルビジネスを展開している人が何人かいる。ただし、「マインド出資」だからといって安心できない。なぜなら、人は心変わりするからだ。最初は「マインド出資」だったのが、事業が軌道に乗ってくるにしたがい、配当や上場を求めてくる人も少なからずいる。ここが怖いところだ。「株式会社」として運営していく場合には、たとえ「マインド出資」を得られても、そうしたリスクもあることは肝に銘じておくべきだ。

資金調達は、どの企業においても容易ではない。小さな資本で始めるNPOやソーシャルビジネスでも、それは同じだ。とはいえ、確固としたパーソナルWHYがあり、それをきちんとストーリーにして人に語り続けていけば、お金は不思議と集まる。ある程度は。

そして「小さく生んで、大きく育てていく」というのが、NPO/ソーシャルビジネススタートアップの定番パターンである。


>>【vol.18「本格的な準備をしよう ~人編<1> ボランタリーチーム~」】に続く

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YOMIURI ONLINEにて2012年11月から2015年6月にかけて連載された、「社会起業のレシピ」を、フローレンスのコーポレートサイト(本サイト)にて毎週1本ずつ公開していきます。(※「草の根ロビイング」を除く)

貧困や格差、高齢化など、私たちを取り囲む社会課題は尽きません。そうした課題を解決するための手段の1つとして注目されているのが「ソーシャルビジネス」です。

社会課題を解決するための「仕組みづくり」はどうしたらいいのか。お金はどうやって回していくのか。人を集めるには、行政とうまく付き合う方法は……など、2004年の起業当初から現在に至るまで10年以上にわたる著者 駒崎の軌跡を、超実践的なノウハウ含めて具体的に明かしていきます。

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