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アクション最前線

2017/08/18

ひとりのお母さんが #医療的ケア児 の未来にもたらした一筋の光

  


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フローレンスの運営する障害児保育園ヘレン、障害児訪問保育アニーでお預かりするお子さんの中には、生きるために医療的デバイスを身につける必要のある子どもも少なくありません。

そういった子どもたちは、医療的ケア児と呼ばれます。

障害のある子どもを支援するための法律は、障害者総合支援法ですが、この法律が施行された当初は、医療的ケアという支援のニーズが認識されておらず、医療的ケア児は、法律上の支援の対象にはなりませんでした。

そのため医療的ケア児は保育や療育を受けられず、その家族は24時間子どもにつきっきりになり、まとまった睡眠もとれない、ということも少なくありませんでした。

医療的ケアのある子ども(医療的ケア児)

その医療的ケア児問題に、2016年に大きな進展の一歩がありました。
障害者総合支援法が改正され、医療的ケア児という文言が法律に明記され、その支援が自治体の努力義務となったのです。

この大きな一歩の裏には、障害児保育園ヘレンに通うひとりのママ議員と、彼女を中心に集まった超党派議員たちの奮闘がありました。

ヘレンに入園したある男の子のお母さんは、野田聖子議員だった

2014年、ひとりの子どもが障害児保育園ヘレンに入園しました。マーくんと呼ばれるその男の子は、痰の吸引などの医療的ケアが必要な医療的ケア児。

そのマーくんのお母さんこそが、自民党の野田聖子議員です。

医療的ケアがネックとなり、マーくんは普通の保育園や幼稚園には行けませんでした。保育園や幼稚園は看護師を置いていないところも多く、またたとえ置いていたとしても、ほとんどの園では医療的ケアを行わないのです。

そのため野田議員は月に数十万円をかけて看護師を雇い、公務中にマーくんのケアをしてもらっていました。

マーくんが入園した障害児保育園ヘレンには保育士も看護師もいますが、国の補助も活用して月々数万円で預けられます。入園の際は、集団保育を受けられることに喜んでいました。

ヘレンにお子さんを預けて働く野田議員は、「偉い議員先生」というよりも、普通のお母さんと同じように、マーくんを何よりも可愛がっていて、朗らかに子育てに奮闘している、という印象でした。

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野田聖子議員の公式ブログより引用 (https://ameblo.jp/seiko-noda/entry-11973590442.html)

絶句する元国家戦略担当大臣

あるとき、民主党政権の時に国家戦略担当大臣を勤めた、荒井聰議員がヘレンに見学に来ました。
そこで荒井議員はマーくんを見かけ、ヘレン入園前に野田さんが何十万円もかけて、マーくんを預けるのに苦労していた話を聞いて、絶句。

「そんな……。野田聖子って言ったら、すごい力を持った政治家だぞ。その彼女ですら、そんな苦労をするって、一体どういうことだ……」

彼は早速、所属する党が異なることも気にせず、野田議員に連絡し、話し込みました。

「野田さん、あなたの息子さんのような状況の子どもはたくさんいる。あなたは”自分の息子のためにやっている”と言われるからやりづらいかもしれないが、それでも立ち上がらないといけないんじゃないか? やるんだったら、協力するよ

そんなことを伝えたのだそうです。野田議員と荒井議員は、息子さんと同じように、行き場がなくて心身ともに疲弊している医療的ケア児とその家族たちの問題を政治的イシューにあげようと、超党派の勉強会を創りました。

その会議は、「永田町こども未来会議」と名付けられました。

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永田町こども未来会議の議員による障害児保育園ヘレンの視察の様子

動き出した永田町こども未来会議

野田議員と荒井議員を中心に、自民・民進・公明党など異なる党から、障害児問題に関心のある議員が集まりました

厚労省内では医療・障害・保育と部署が分かれており、分野をまたぐ医療的ケア児の問題がそのどこにも拾われていないということが判明。関係部署の担当者が全員会議に呼ばれました。

また、就学の問題も絡んでくるので、文科省の障害担当部署も呼ばれ、さらには内閣府も絡むということで内閣までも。

この「関係者を丸ごと呼ぶ」という異例中の異例の会議を何度も開催していくことで、医療的ケア児について初めてまともに省庁と議員が語り合うことになったのです。

その結果 医療的ケア児は、統計すら存在しておらず、よってどこにどれだけの医ケア児がいるかも分からず、当然十分な支援を受けていないことが分かり、さらには、特別支援学校に行っても十分な支援体制がなく、親が付き添い続けなくてはならない、という酷い状況であることも明らかになりました。

野田議員は、当事者の親として、官僚たちが「こういう制度があるはずですが……」などと言っても、普通なら「あ、そうなんだ」で終わってしまうところを、「いや、そんな制度、現場に降りてきてないし、そもそもその制度を回せる人材もいないのよ。だってうちが使おうと思ったら、使えなかったし」と、ゴリゴリ切り込んでいったのです。

これらの調査・議論・対策検討が、ものすごいスピードで行なわれていきました。

超党派議員たちが、もたらしたもの

永田町こども未来会議では、障害者総合支援法の改正に合わせて、医療的ケア児支援を盛り込んでいこう、という狙いがありました。

そして、永田町こども未来会議が動き出して1年と少し経った2016年5月。その改正条文に、日本の法律で初めて、「医療的ケア児の支援」が明記され、「全ての基礎自治体は医療的ケア児支援の努力義務を負うこと」が謳われたのです。これはまさに社会福祉の教科書に載るような出来事でした。

これまで制度と制度の狭間で苦しんでいた人々に、一筋の光明が差し込んだといえます。

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政治の場にいる「当事者」の価値

ここから我々が学べることはなんでしょうか?

それは、マイノリティ当事者が、政治の場にいることの意義です。

野田議員は、医療的ケア児というマイノリティの息子さんを持ち、まさに肌感覚でその苦労を分かっていました。その知識とモチベーションには、力があります。

知識がなければ、官僚の人たちを動かせません。制度論でけむに巻かれてしまいます。
モチベーションがなければ、官僚の人たちを動かせません。彼らは政治家の本気を見ているからです。

マイノリティ当事者には、この2つがあります。マイノリティのために制度を変えるには、マイノリティ自身が政治の場にいることが非常に重要です。

女性を、障害児の親を、障害者を、LGBTを、里親を、外国にルーツがある人を、ひとり親家庭出身者を、ステップファミリーで育った人を、その他さまざまな少数者が、政治の場で血肉が通った言葉で発言し、制度づくりに携わること。そこに大きな意義があるのです。

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誰もが当事者になるかもしれない

障害者総合支援法の改正は非常に大きな一歩でしたが、医療的ケア児支援の取り組みはまだ十分ではありません。

例えば、看護師などのサポートが必要となる医療的ケア児を預かることに対して、報酬単価(補助金)が低いため、医療的ケア児を預かる施設が増えない、という大きな問題も残っています。

こうしたひとつひとつの課題を解決していくためにも、当事者の力は非常に大きなものになります。

ですが、それは「当事者だけに任せる」ということとは違います。なぜなら誰もが当事者になるかもしれないからです

例えば、医療的ケア児は年々増えており、生まれる子どものうちの医療的ケア児の割合も高まってきています。あなたが将来、医療的ケア児の親になったり、友人や親戚に医療的ケア児が生まれる(あるいは、実はすでにいる)可能性はゼロではありません。事故や病気で自分自身が障害を持つことになる可能性だってあります。

誰もが当事者になるかもしれない。そう考えれば、一人ひとりが問題を知り、声を上げることもまた重要であるということも、理解できるのではないでしょうか。

フローレンスでは今後も、医療的ケア児を保育する事業者として、医療的ケア児に関わる問題提起、課題の発信を引き続き行っていきます。

ぜひ、あなたも問題を知り、自分のできることはなにか、考えてみて下さい。遠いと思っていた問題が、近くのものになるのは、すぐかもしれないのですから。

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書いた人:駒崎 弘樹