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2016/09/06

【社会起業のレシピ】vol.8「マネタイズモデル(寄付モデル)」

  


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寄付モデル

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今回は、一般の人がNPOというとよくイメージする「寄付を募る」というマネタイズ手法を紹介したい。例えばホームレスやカンボジアの子どもたちや絶滅寸前のゾウガメ等は、支援に対する支払い能力がないことが多い。こうした場合、第三者でその問題に関心があり、問題解決に金を払ってもよいと思う個人や団体を「顧客」にし、彼らから寄付を引き出す。

共感

今、「顧客」と書いた。寄付という文脈なのに似つかわしくないように思われると思う。しかし、「寄付マーケティング」という言葉があるくらい、寄付にはビジネス同様に、いやビジネス以上に戦略性が必要だ。まず、世の中に数多ある問題の中で、その問題に共感をしてもらわなくてはならない。そのためには、困っている人たちの困り具合を可視化し、その要因をクリアカットに見せ、他ならぬ自分たちにはその解決策があることをアピールしなくてはいけない。企業であれば、テレビや新聞、ラジオにインターネットと、あらゆる方法で広告を打てばよい。モノが売れれば利益が生み出されるので、そこから広告費は補填できる。しかし、寄付マーケティングの場合に潤沢な広告予算を持っている、ということはまずあり得ない。さらに広告費に過剰にお金をかけるというのも、本末転倒である。ゆえに、困っている人を可視化させ、要因と解決策をセットにしたパッケージを持っていても、それを人に伝える方法が限られる。

広報

しかし予算の限られた寄付マーケティングにも、企業とは異なる強みがある。それが広報力だ。簡単に言うと、新聞やテレビ等のマスメディアや、SNS等のソーシャルメディアに、その社会性ゆえに取り上げてもらいやすい。予算を広告費にかけるのではなく、広告費はゼロに近くさせ、本業に予算をかけるという意味においても、本質的な方法だ。

イシューをマーケする

では、例えば「アフリカの子どもたちを助けるために、寄付を募っています。テレビの人、来て!」とTwitterでつぶやいて、取材がくるだろうか。おそらく確率は低い。まず、広報をする時には、自分たちの団体を広報するという観点ではなく、その「社会的課題(イシュー)を広報する」というスタンスに立たなくてはならない。メディアの方々も、団体がビッグネームでもない限り「本当にその団体に言及して大丈夫なのか」という疑心暗鬼とともにある。なので、団体自体を広報したいとは思いづらい。しかし、その社会的課題(イシュー)自体に関しては、取り上げても問題はないし、むしろイシューを可視化するのがメディアの仕事なので、積極的に取り組みやすいのだ。

イシューはつくるもの

とはいえ複雑な社会的課題をそのまま説明していると、忙しいメディアの人々は「よく分からない」で終わってしまう。それを理解しやすい「イシュー」として切り口を整えなくてはいけない。そうした意味で、社会的課題からエッセンスを絞り出し、イシュー化する手続きを踏むことによって、広報力が高まると言えよう。

具体的な広報策

イシューを片手に世の中に訴えていく時には、様々な手法がある。基本的にはA4・1枚のプレスリリースを、当該省庁の記者クラブ室に投げ込む。このプレスリリースの作り方にもコツがあるが、それは後に広報について書く予定なのでそこに譲りたいと思うが、簡単に言うと「何か新しいこと始めます」でないといけない。また、そのイシューについて話し合うシンポジウム(やイベント)を開催し、そこにメディアの人々に来ていただき記事化してもらう方法も伝統的にとられている。

寄付者の獲得とホームページ

こうした広報によって、自らの掲げるイシューと、その解決者であるあなたの団体が浮かび上がってくるに従って、そのイシューに関心を持つ方々が寄付者になってくれる。このラストワンマイルで機能するのがホームページだ。ホームページが信頼置けそうか、そしてそこから簡単にクレジットカード寄付等ができるかどうか、が問われる。多くのNPOは寄付者のユーザーエクスペリエンス(UX)を無視しており、非常に寄付がしづらいことが多い。これでは、せっかく共感した人を寄付者にすることは難しい。

寄付者から協力者へ

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オフィスの入り口に並ぶ表彰や認定証の盾。社会的信用は大切だ

寄付モデルにおいては、寄付者の方々は「顧客」である。顧客に1回お金を出していただくだけで放置していたら、二度とお金は出してもらえない。継続的にキープインタッチする仕組みをつくり、彼らが継続的に寄付し、そして時には口コミの発信源となり、他の寄付者を連れてきてくれるようなサイクルを作っていかねばならない。言うは易し、行うは難しで、私の団体もそこまでのレベルにはまだ至っていない。

しかし、業界には優れた先行事例はあり、例えば、あしなが育英会や、NPO法人かものはしプロジェクトは、多くの寄付者を巻き込み、時に彼らが寄付を集める人(ファンドレイザー)となり、ともに社会問題の解決の担い手になっていく、という正のスパイラルを生み出していっている。

寄付モデルの本質

寄付モデルはそうした意味では、単に収益構造が寄付であるということを超えて、寄付という投票であり投資である行為を通じて、多くの人々が「チェンジメーカー」になっていく装置だとも言えるだろう。

欠点と解決策

しかし寄付モデルの欠点も忘れてはならない。それは不安定であることだ。例えば大きな国内で大災害があった場合、海外の問題にアプローチする団体は受難の時を迎えてしまう。人々の共感という移ろいやすいものを基盤にせざるを得ないことから、構造的に不安定性を内包してしまう。こうした不安定性を乗り越えていくために、一部事業を入れこんでいく形(支援している海外現地で作ったものを売る等)は考えられるだろう。また、イシューの専門家として執筆を行い、それを基に講演業を営むことで、コンスタントな収入を得ている実例は多い。


>>【vol.9「マネタイズモデル(受益者労働モデル)」】に続く

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書いた人:駒崎 弘樹


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