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働き方改革

2016/12/09

サイボウズ・メルカリ・フローレンスが目指すアジャイル的「働き方改革」とは? 〜自ら働き方を選べる時代の人事施策〜

   


サイボウズ・フローレンス・メルカリが目指すアジャイル的「働き方改革」とは?

2012年に上梓され話題となった、リンダ・グラットン教授による『ワーク・シフト』で示唆されていた、時間にも、場所にもとらわれない働き方……そんな世界が当たり前となりつつある中、これから、私たちの働き方はどう変化していくのでしょうか。

国を挙げての「働き方改革」推進がスタートした今日、「多様な働き方への対応」は企業戦略の重要課題として注目が高まっています。「働き方改革」をリードする「サイボウズ」「メルカリ」「フローレンス」の3団体はどう進化し続けるのか。長時間残業問題、自ら働き方を選べる時代の人事施策とは……人事担当が、それぞれの想いと「多様な働き方への対応」について語ります。

アジャイルとは『すばやい』『俊敏な』という意味。ユーザーの要求を随時取り入れ、実際に動作するプログラムを短いサイクルでリリースする、日々テストし結果をフィードバックする、チーム連携を重視する、計画よりも具体的な実践を重視する、などが特徴。アジャイルの考え方は、特に変化の激しいWeb系、オープンソース系の開発で重視されている。

青野 誠(あおの まこと)

青野 誠(あおの まこと)

サイボウズ株式会社 事業支援本部 人事部 マネージャー。離職率が高かったころの同社に新卒で入社、営業やマーケティングを経験後に人事部へ。人材採用・育成、制度作りに携わる。1児の父。

ishiguro01sa

石黒 卓弥(いしぐろ たかや)

株式会社メルカリ HRグループ。NTTドコモに新卒で入社。営業、人事、新規事業会社立ち上げ、その後に新規サービス企画を担当。2015年にメルカリにJOIN。採用を中心とした人事企画を担当。現在3児の父であり、第三子出生時には2ヶ月の育休を取得。

斉藤 幸子(さいとう さちこ)

斉藤 幸子(さいとう さちこ)

認定NPO法人フローレンス 働き方革命事業部 人事マネージャー。新卒で入社した「100年続く、旧態依然とした」IT企業にて人事などを担当、その後2008年にフローレンスに転職。新規事業立ち上げなどを担当後、現職。3児の母。


■自ら「働き方を選ぶ」時代の到来
  • 斉藤 幸子(さいとう さちこ)

    斉藤

    フローレンスに来る前は、新卒で入った、100年ぐらい続く古いIT企業に勤めていたのですが、ここは典型的な長時間労働を良しとする会社でした。

    人事担当だったため、社内から変えていこうとしましたが、一向に変わらず「これはこの会社だけの問題ではない。社会を変えるしかない」と転職を決意したのが8年前です。

    ちなみに私は社内結婚だったのですが、夫の働き方がとにかくひどい(苦笑) まあ家に帰ってこない。子育ても戦力外です。

  • ishiguro01sa

    石黒

    僕も3児の父親ですが、パートナーが子育て戦力外だと大変ですよね。

  • 斉藤 幸子(さいとう さちこ)

    斉藤

    本当にきつかったですね……。フローレンスに転職後は、人事と並行しつつ中小企業向けの「働き方革命コンサルティング」を推進していました。ちょうど「ワークライフバランス」が注目されつつあり、フローレンス代表の駒崎が「働き方革命」という書籍を出した頃です。およそ7年前から残業禁止や在宅勤務などを推進し、当時は先駆け的存在でした。

    その後広報や新規事業立ち上げを経て、今年7月に5年ぶりに人事に戻り、今に至ります。

  • 青野 誠(あおの まこと)

    青野

    7年前から在宅勤務スタートとはまさに先見の明ですね。5年ぶりの人事ということは、以前とは状況が変わりましたか?

  • 斉藤 幸子(さいとう さちこ)

    斉藤

    当時と比べると、働く環境もフローレンス自体も大きく変わりましたね。特に働く人が求めるものが変わった気がします。企業に与えられた働き方をただ受け入れるのではなく、自らが「働き方」を選ぶ、そのために会社や仕事を変えたり選ぶことが当たり前になりつつある気がします。

    また、当時は働き方改革を標榜する会社はまだまだ少なかったのですが、近年は多くの会社が積極的に推進するようになってきましたね。サイボウズさんの「選択型人事制度」やメルカリさんの人事制度「merci box (メルシーボックス)」の取り組みも刺激的ですし、大変参考になります。

  • ishiguro01sa

    石黒

    たしかに、働き方を自ら選ぶ時代が到来しましたよね。パートナーは変わりました?

  • 斉藤 幸子(さいとう さちこ)

    斉藤

    残念ながら夫の働き方は、まだまだ改善の余地ありだと思っています。基本的に7時前に家を出て、帰宅は22時とか23時とか。出張で長く家を空けたりもよくあります。夫が平日の子育てにあまり関われないと、「母一馬力でも回る仕組み」をつくるしかなく、その課程で子どもたちはすっかり自分のことは自分でできるようになりました。

    夫も土日はがっつり子どもと関わっているので今はあまり口うるさくは言いませんが、夫の働き方を変えることはまだ諦めていません(苦笑)。

    そういう意味でも、日本全体の「働き方改革」はこれからが正念場だと思っています。

フローレンス 斎藤幸子

■人事も「ABテスト」していくサイボウズ
  • 青野 誠(あおの まこと)

    青野

    僕は2006年にサイボウズに新卒で入ったんです。新卒を採用し始めた頃で、当時は帰りたくても帰れない、有休も取りづらいという空気がまだありましたね

    入社する前年の2005年度の離職率は、28%という驚異的な数値を記録していました(苦笑)。

    入社後は営業や新規事業を担当した後、3年半前から人事に異動しまして。現在は採用、研修、制度設計に携わっています。

  • 青野 誠(あおの まこと)

    青野

    多様な働き方を可能とする制度として「選択型人事制度」を2007年からスタートさせました。具体的には、社員一人一人が、ライフスタイルの変化に合わせて自らの働き方を選択できる制度です。

    育児、介護に限らず通学や健康など個人の事情に応じて、勤務時間や場所を決めて宣言することができ、現在は9分類の働き方から選択可能です。

  • ishiguro01sa

    石黒

    具体的にはどういう効果があるんですか?

  • 青野 誠(あおの まこと)

    青野

    大きいのは「チームへの宣言による状況の可視化」です。メンバーがいつ出社するかわからない、という状態を避けたかったのです。5時で帰る人がいても納得感があり、チームでフォローできる。

    ですが……大きな声では言えないのですが、実は9分類じゃ足りなくなってきまして。

  • 斉藤 幸子(さいとう さちこ)

    斉藤

    ええっ!

  • 青野 誠(あおの まこと)

    青野

    先日マネージャー陣での合宿がありまして、「増やすか、一度撤廃して柔軟性を高めよう」という話題が出たばかりです。よく驚かれるのですが、サイボウズは人事制度も非常にアジャイル的というか、仮運用で効果測定して臨機応変に改変していくことが普通なんですよ。

サイボウズ 青野 誠

  • 青野 誠(あおの まこと)

    青野

    もともとこの制度、立ち上げ時には2分類しかなかったんです。ところが、ものすごいスピードで環境変化が起き続けている。働き方の多様化に対応して9分類に落ち着いたのもつかの間、副業の解禁などさらなる多様化が急速に進み、もはや今のままでは対応しきれなくなってきました。

    ただ、これ以上増やすと細かすぎて管理しきれないというジレンマを抱えています。

  • ishiguro01sa

    石黒

    一般的には人事系の施策って、一度決めたらなかなか変更できないイメージがありますよね。だからこそ一度進めた人事施策を、状況変化に応じてしなやかに見直せることって実はすごいことですね。メルカリでも「Webサービスのように人事施策を考えよう」と言っています。現在のビジネスのスピード感からしたらそれが当然なのかもしれません。

    ちなみに、社員が一度決めた分類は変えられますか? そのときの評価ってどうなるんですか?

  • 青野 誠(あおの まこと)

    青野

    あくまでもこちらは働き方の「宣言」なので、業務評価とは別軸です。変更も都度できますよ。いずれも難しいのはやはり給与との連動です。労働時間は短くてもアウトプットが非常に高い場合は、それを評価するべきです

    そもそも時間と場所という2軸で宣言させること自体も再考していますし、今後働き方の多様化がますます進むことが想定されるため、制度自体も柔軟、かつ可変である必要性を痛感しますね。

  • ishiguro01sa

    石黒

    大きな会社だと人事って非常に強い存在と捉えられがちですよね。でも僕らは人間的に、しなやかに作り変えていきたい。いつ終わりになるかわからないなら、とりあえずはじめようと。

■残業時間が月平均15分以内のフローレンス
  • 斉藤 幸子(さいとう さちこ)

    斉藤

    残業すべてを悪だとは考えませんが、業務評価という視点で考えると「労働時間に関係なくアウトプットを評価する」という視点は、今後より重要になりそうですよね。ちなみにフローレンスでは、そもそも時短勤務をしているスタッフが多いということもあるのですが、全社平均の残業時間は月平均で15分程度です

  • ishiguro01sa

    石黒

    以前もフローレンスさんからお聞きしたことはありましたが、月平均わずか15分は衝撃ですね。どんなところに工夫があるのでしょう。

  • 斉藤 幸子(さいとう さちこ)

    斉藤

    ベースには「時間と場所に縛られない働き方も報酬の一部」という考え方があります。

    子育て期のお母さんお父さん社員が多く、時短勤務者も多いため、18時前後でほぼ全員帰りますね。経営者や管理職も一気に帰るので、心理的に帰りやすいというのはあるでしょう。ちなみに男女比率は8:2と女性が多く、おうち保育園の園長を含め、管理職も8割は女性です。

    労働時間ではなくプロセス(課題に向かう姿勢)やアウトプットで評価することも重要です。そのため、短時間で質のよいアウトプットを出すための工夫や仕組みがたくさんあります。例えばメールコード制の徹底、MTGルールの徹底、フリーアドレス、そして保育業界での導入はまだ珍しいと思いますが、在宅勤務やノマド勤務(カフェなど出先での勤務)も推奨しています。もちろん副業もOKです。

  • 青野 誠(あおの まこと)

    青野

    僕も今フローレンスさんで月2回人事プロボノをしていますが、フローレンスさんの人事施策はすでに先進的なのに、よりしなやかに、より良く改善していこうとする姿に学ぶことも多いです。

次ページ:「アウトプットだけを評価する」メルカリにおける労働時間と働き方とは?



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