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2017/01/31

【社会起業のレシピ】vol.27「供給ラインの整備(1)~人材の募集をどうするか?~」


需要が増えたら、供給も増やす

スタートしたソーシャル・ビジネスを無理なく安定的に拡大していくには、需要と供給のバランスをつねに保つ努力が必要だ。利用者(需要)が増えたら、モノやサービス(供給)も増やしていく。このバランスが重要になる。たとえば、モノを販売するビジネスであれば、生産量を増やす検討に入ることになる。サービスを提供しているのならば、その主体となる「人」を増やすことになる。
とくにソーシャル・ビジネスやNPOの場合、福祉や保育、教育などの人的サービス業が多く、「供給」といったら「人」を指す場合が多い。つまり、人材を増やす。そこで、今回から2回にわたって、人材をどう「募集」し、どう「採用」していくのかについて見ていきたい。今回は「募集」について。

地方部はハローワーク、都市部は自社ウェブページ

需要がまだ小さいころは、人が必要になっても、大々的に人材募集を行う必要はないだろう。まわりに「いい人いない?」と声をかける程度でかなり間に合う。つまり、知人経由の募集チャネルだ。

その後、よりたくさんの人材を集めなければいけない段階に入ると、これでは対応できない。人材募集の仕組みを整えていくべきだろう。 採用の初期段階において、募集の方法は大きく分けて3つ。

ハローワークの活用自社のウェブページでの募集、そして、既存のスタッフによる口コミである。

ただし、3つめの「口コミ」は、スタッフの組織へのロイヤルティー(忠誠心)が高くないと期待できない。なので、実際は、最初の2つがおもな募集チャネルとなる(なお、スタッフのロイヤルティーを高める方法については、次回も含め、後述する)。地方部でソーシャル・ビジネスを展開しているのだったら、ハローワークが効果的だろう。無料で求人することができるうえに、ある程度、数も集まってきやすい。

一方、都市部の場合は、一部に例外はあるものの、ハローワーク頼みでは不十分。幅広くいい人材を集めようと思ったら、自社のウェブページを活用することをすすめる。そこに「スタッフ募集」の項目をつくり、応募条件や採用後の処遇のほか、仕事の内容や1日の仕事の流れ、この団体で働くメリット、楽しさなどを盛り込むといい。

ウェブページでの募集コンテンツが充実していれば、会社説明会や、別途、詳細な募集要項を郵送するといった手間を省くことができる。採用のための費用を抑えることができる。資金の少ないソーシャル・ビジネスやNPOでは、ウェブの活用が不可欠なのだ。

ウェブページに誘導する仕掛けづくり

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フローレンスのウェブページに掲載している求人の例。判断の役に立つよう具体的な項目を並べている

ウェブページを使って人材募集をする場合、応募してくれそうな人をウェブページに誘導する工夫も必要である。その1つが、SEO(Search Engine Optimization)対策をしっかりしておくこと。自分たちのサービス内容を示す言葉(たとえば、フローレンスだったら「病児保育」)と「採用」で検索すると、自分たちのウェブページが上位に表示されるようにしておくのだ(SEO自体のテクニックに関しては、関連書籍やウェブページがたくさんあり、かつ時代によってアルゴリズムは変わるので、最新の情報を得るためにはそちらを参照されたい)。

また、フェイスブックやツイッターなどのSNSの活用も忘れてはならない。そこで募集中の旨を伝えれば、ウェブページに誘導することもできる。

ちなみに、SNS単体だけでは、採用手段としては不十分だ。見る人に「これだったら応募してみようかな」と思わせるのに十分な情報を載せられない場合が多いからだ。求人に応募するとは、自分の働き先を決めること。重大な意思決定を要する。判断するための情報量が少なければ、一歩を踏み出すのに躊躇してしまう。あくまでも、ウェブページに誘導するツールとしてSNSを活用していこう。

そのほか、ヤフーやグーグルなどの検索サイトの「検索連動型広告」を利用する方法もある。これは、検索サイトでキーワード検索をすると、広告スペースに、それに関連するウェブサイトとして表示してもらえるサービス。広告なので費用はかかるが、新聞などの求人広告のように一律の徴収ではなく、クリック数に応じての徴収。成果に連動して費用を支払うことになるので、一般的な広告よりはコントロールが利く。ちなみにグ一グルの場合は、非営利団体に無料で広告を掲載させてくれる制度がある(Google Ad Grants)。資金の少ないNPOにとっては、ありがたいサービスだ。ただ気をつけないといけないのは、キーワード広告でいくらお金をかけても、それを押して行き着く先の自社ウェブページがしっかりしていなければ、誘導しても採用希望者を惹き付けられない。いきなりキーワード広告に走らず、自社ウェブ等を整備した上で投資していくと良いだろう。

ボランティア募集でも「お願いしたい人」を明確に!

なお、ここでは有償スタッフの募集についてメインに書いたが、ボランティアを募集する際にも、ウェブページは有用である。スキルなど応募の条件、仕事の内容、待遇(交通費や働く時間)、期間などを具体的に記しておこう。「だれでもいいから」では、ほんとうにだれでも来てしまう。それではまわる仕事もまわっていかない。また、待遇や期間などをあいまいにしておくと、実際に仕事をお願いする段階になって、お互いに「そんなはずじゃなかった」に陥りかねない。とくにボランティアの場合、賃金が発生しないぶん、「なんとなく」になりがち。お互いに気持ちよくスムーズに仕事を進めるには、募集の段階から、具体的に丁寧にやっていくことが大切なのだ。

>【vol.28「供給ラインの整備(2)~『採用の仕組み』をつくる~」】に続く(2/7更新予定)

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