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アクション最前線

2019/01/08

フローレンスの赤ちゃん縁組事業が、育ての親となる方から費用をいただく理由、また同時に寄付を集める理由

 


家庭養護

2016年4月に始まったフローレンスの赤ちゃん縁組事業が目指すのは、生まれたばかりの赤ちゃんの虐待死がゼロである社会です。

日本では2週間に1件、赤ちゃんの虐待死事件が起こっています(※)。生んでも育てられないと悩んだ末に、生みの親である母親が赤ちゃんを遺棄することになったケースも少なくありません。この背景には、予期しない妊娠に悩む女性が誰にも相談できないという問題があります。

※参考:厚生労働省 平成23年「社会保障議会児童虐待等要保護事例の検証による専門委員会 第8次報告」

こういった問題を解決するため、フローレンスの赤ちゃん縁組事業では、以下の取り組みを行なっています。

(1)予期しない妊娠をした女性、あるいはその周囲の方々から相談(オンライン、電話等)を受けるにんしん相談

(2)子どもの育ての親を希望するご夫婦に対して研修等を行い、生みの親の方が特別養子縁組を希望する場合にその縁組をあっせんする、特別養子縁組あっせん

https://engumi.florence.or.jp/

(1)のにんしん相談は、相談者の方から相談費用をいただくことはありません。

(2)の特別養子縁組あっせんについては、養親を希望される方から費用をいただいています。

なお、2018年4月より施行されている特別養子縁組あっせん法において、特別養子縁組のあっせんは、事業に自治体からの許可が必要となっており、フローレンスも所管自治体である東京都より許可を受けています

参考:民間養子縁組あっせん機関による養子縁組あっせん事業の許可等について 東京都福祉保健局

■養親から費用をいただく理由と、寄付を募る理由(1)養親を希望する方々

フローレンスでは、前述のにんしん相談対応と、特別養子縁組あっせんを、ボランティアではなく事業として行い、専従スタッフによる安定した支援活動を継続的に提供しています。

養親を希望する方々に対しては、赤ちゃんを迎え入れるための研修(※)、ご夫婦への面談、家庭訪問、その他各種事務作業なども行っています。これらの取り組みには、スタッフ人件費、施設利用費などが費用としてかかります。そういった事業を運営する費用を、養親の方々に負担していただいております。

なお、特別養子縁組あっせん法においては、養親となる方から事業者が徴収してよい手数料の種類が定められており、フローレンスがいただいている費用は全てそれらに該当するものです。

参考:民間養子縁組あっせん機関による養子縁組あっせん事業の許可等について 東京都福祉保健局

※特別養子縁組あっせん法施行により、民間事業者においては厚生労働省の定める研修科目の実施が必須となりました。フローレンスではこの科目全てを網羅した研修を実施しています。

■養親から費用をいただく理由と、寄付を募る理由(2)にんしん相談

予期しない妊娠をした女性やその周囲の方々から相談を受ける、にんしん相談については、ウェブサイトからの問い合わせや電話、メール等で受け付けており、前述の通り相談費用は一切かかりません。

ソーシャルワークの訓練を受けた専門の相談員をフルタイムで雇用し、週5日相談に応じられる体制を取っています

相談受付サイト:妊娠相談・特別養子縁組 | 認定NPO法人フローレンスの赤ちゃん縁組

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相談受付のイメージ

2016年4月に赤ちゃん縁組事業を始めてから、にんしん相談に連絡いただいた方の数は、2018年10月時点で1215人であり、その中で、実際に特別養子縁組へ至ったのは、13組です。

相談受付の数に対して養子縁組が成立する割合が低いのは、フローレンスの相談支援が「養子縁組前提の相談支援」ではないためです。

一人ひとりの相談者に寄り添い、丁寧なカウンセリングを実施し、養子縁組を希望する方だけでなく、自身で育てる決断をされた方に対しても手厚くサポートすることを大切にしています。

全国から相談の電話やメールを受け、必要があればすぐに現場に急行する対応も少なくありません。にんしん相談に連絡をいただく方々は、まだ妊娠したかどうかわからないという方から、実際に妊娠した方の相談まで、非常に幅広くいらっしゃいます。一度話をして相談が終わるケースもあれば、何度もやり取りをするケースもあります。

そして相談の多くが、医療にたどり着けていない方たちからのものです。妊娠後期の相談者では「臨月を迎えているにも関わらず未受診」という方も少なくはありません。何らかの理由で行政や医療と繋がることができない方々への重要な支援となっています。

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イメージ

にんしん相談では相談者から費用をいただくことができませんが、予期せぬ妊娠に悩む女性に寄り添い、生まれた赤ちゃんの虐待や遺棄をなくすために、この相談対応はなくてはならない取り組みです。このにんしん相談でも、フローレンスではスタッフが相談員として従事して対応しており、人件費、相談支援にかかる交通費、医療施設利用料、携帯電話やパソコンなどの備品や通信環境の整備費など様々な費用が発生します。

なお、特別養子縁組あっせん法施行後、行政の補助も検討されていますが、事業運営に対する費用としては充分なものとはいえません。なぜなら、にんしん相談の中には養子縁組につながらない相談も多く、現状の補助はそうした特別養子縁組あっせんに繋がらない活動費用までを想定されたものではないためです。

にんしん相談に対応するための費用に加えて、特別養子縁組あっせん法の施行等といった法制度の変更への対応、養親あるいはにんしん相談の相談者の方々の情報を適切に管理するための情報システムの構築、事業に従事するスタッフのトレーニングなど、事業を適切に運営するためには様々なコストがかかります。

赤ちゃん縁組事業の事業収入は、原則として養親となる方からいただく委託費のみですが、まだ事業立ち上げ期である現在、その収入のみで全ての費用をまかなうことは困難です。

そのため、各種助成財団などからの助成金、また寄付金といった形で事業運営のための原資を集めています。それが、養親から費用をいただきながら寄付も募っているいる理由です。

委託された赤ちゃんのイメージ

■行政ではない民間団体として、赤ちゃん縁組を「事業」として行う理由

フローレンスは、一人でも多くの子ども達が望まれた環境で家庭養育を受ける権利を守りたいと考えています。そのためには日本に特別養子縁組が広がっていくことが欠かせません。

フローレンスが特別養子縁組あっせんを事業としておこなう理由は、それが、特別養子縁組を日本に広めるために、大きな効果を持つと考えているからです

予期せぬ妊娠に悩む人々に寄り添い、赤ちゃんの虐待死をなくすために、特別養子縁組による赤ちゃんの縁組を広めていくことは非常に重要ですが、国や自治体だけではリソースが足りず、また制度や縁組という営みの周知も十分にはできません

また、ボランティアのみで特別養子縁組のあっせんを行うことも、簡単ではありません。

志ある医療従事者の方がボランティアであっせんを行なっている事例などはあり、とても素晴らしいことで、フローレンスも諸先輩方から学ばせていただくことが多くあります。

しかし、そういったボランティア活動は、医療活動などによる経済基盤を持っており、あっせんに関しては安価に活動できるために成り立つという面もあります。財務状況や活動の基盤が異なる民間の団体が、同じようにボランティアベースであっせんを継続的に行ない、特別養子縁組を全国に広めていくことは非常に難しいと考えています。

こういった背景から、国や自治体、ボランティアの活動だけに特別養子縁組のあっせんを任せるのではなく、民間事業者が事業として日本に取り組みを広めていくことが重要だと、フローレンスは考えております。

もちろん民間の事業者があっせんを行うことで、営利目的となり、本来の子どもの福祉が妨げられることは避けなければなりません。そのため2018年には、特別養子縁組あっせん法という法律も施行され、特別養子縁組あっせんは許可制となりました(施行前は届出制)。

参考:特別養子縁組制度について(厚生労働省サイト)

先に述べたとおり、フローレンスも、運営内容、費用など含めて東京都のチェックを受け、許可がおりております。(またこの特別養子縁組あっせん法において、養親となる方から費用をいただくことは禁止されておりません)

■さいごに

特別養子縁組あっせん法も今年度から施行され、民間団体、行政や医療機関が連携して、養子縁組の支援が必要な母子を支えていこうという機運は社会的にもたしかに前進しています。

本記事はご自身も産婦人科医として特別養子縁組に尽力されている河野美代子先生のブログを通じて、先生からフローレンスにご意見をいただいたことを機会に現状をまとめたものです。

河野先生には貴重なご意見をいただき、心より感謝しております。ありがとうございました。

フローレンスは今後も、赤ちゃんの虐待死をなくし、予期せぬ妊娠に悩む方々に寄り添うため、真摯に赤ちゃん縁組事業を運営してまいります。

特別養子縁組の支援 | 認定NPO法人フローレンスの赤ちゃん縁組




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