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アクション最前線

2019/08/08

我が子を産んで、喜びと恐怖を同時に味わった4年前~医療的ケア児の母親が新規事業「ナンシー」に期待すること

  


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9月から正式サービスインする新規事業「医療的ケアシッター ナンシー」

たんの吸引や経管栄養、胃ろう、人工呼吸器など、医療的なケアが必要なお子さんのご家庭に看護師が訪問し、その家族が抱える課題を一緒に解決するサービスです。

特長は、1回あたりの訪問時間が長く、利用者の負担が少ないことです。

従来の訪問看護では、1回あたりの訪問時間は最大でも90分程度。一方ナンシーは、複数の制度を組み合わせることで、現在行っているテストサービスでは、1回あたり3時間のお預かりも可能にしました。(ご家庭の状況により応相談)

また、小児看護の経験を積んだ看護師が、毎週決まった曜日・時間にご家庭を訪問し、親の付添いなしでお子さんのケアを行います。

ナンシーは、親御さんの就労やこれまでできなかった「やってみたい」ことを、一緒にかなえることを目指しています。

ナンシーを立ち上げるきっかけの一つは、“当事者からの声”でした。

フローレンスでは、5年前に障害児保育園ヘレンを開園、翌年に障害児訪問保育アニーをサービスインし、のべ100人近くの医療的ケアが必要なお子さんをお預かりしてきました。

保護者の声を聞くと、多くは、ヘレン・アニーを卒園した後の不安を抱えていました。まだまだ日本の社会に、医療的ケア児の家族を支えるインフラが整っていないためです。

今回、障害児保育園ヘレンに息子のえいとくんを預け、フリーランスのライターとして働く 野上瑠美子さんに当事者の声として寄稿をお願いしたところ、これまでやこれからの息子さんを巡る正直な思いを届けてくださいました。

ぜひ、皆さんに読んでいただいて、全国の医療的ケア児のご家族に思いを寄せていただけたらと思います。

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息子のえいとくん(撮影:えいとくんのお父様)


生まれてからのことは、鮮明な記憶がありません

私には現在4歳になる息子がいます。いたずら盛りのわんぱくですが、健常と言われる子どもとはいくつか違うところがあります。

まだ歩けません。発語もありません。そして口から食べることも出来ません。でも彼なりのペースで、ゆっくり成長してくれています。

それが可能になったのは、お腹についている胃に直結したボタンから、流動食を注入し、私たちと同じように栄養をとること(胃ろう)が出来るためです。

そう、彼は現在18,000人いると言われている、医療的ケア児のひとりです。

彼が生まれてからのことは、正直あまり鮮明な記憶がありません。

緊急帝王切開で予定よりも早く生まれ、その翌日には心臓の手術。そのままNICUに入院することになりました。2か月半後には退院することが出来ましたが、もちろん健康になったからではありません。家で生活出来る程度には安定した、と医師が判断したためです。

まだ生後2か月。しかも前日までは24時間病院で管理されていた子どもが、育児初心者の私たち夫婦のもとにやって来る。それはとてつもない喜びであるのと同時に、とてつもない恐怖でもありました

現在は酸素吸入も夜間のみになっていますが、3歳ごろまでは24時間使用していました。

栄養も、現在は胃ろうですが、当時は経鼻経管。鼻から胃まで常に管が入っているわけですから、喉は絶えずゴロゴロしていて、痰の吸引も頻回です。

嚥下(えんげ)障害のためうまく痰や唾を飲み込むことが出来ず、むせた拍子に1時間かけて注入した母乳や栄養剤をすべて嘔吐してしまうことも。そんな中、血中酸素濃度を計るモニターのアラームは鳴り続け……。

これが退院後の私と子どもの日常ですが、今挙げたほとんどの対応は、基本的には医療従事者にしか出来ない行為です。

でも例外があります。それが家族です。家族というだけで、まったくの素人が、24時間、幼い命を預かるという大きすぎる責任を負うことになるのです。

世の中に私と目の前にいる病気の子どもしかいないような感覚に

そんな日々を過ごしていましたので、自分が仕事に復帰するということは、半ば諦めに近い、夢のようなものになりつつありました。

でも私はフリーランスのライターです。産休も育休も介護休暇もなく、働かなければ一銭も入りません。

ただそれ以上に不安だったのは、まるで世の中に私と目の前にいる病気の子どもしかいないような感覚に陥ったことです。

やっと授かった子、かわいくないわけはありません。

でもそんな鬱々とした状況は、私だけでなく、子どもにとっても決していいものとは思えませんでした。

ただ医療的ケア児の母親だというだけで、私は保活のスタートラインにも立たせてもらえません。

そんなやるせなさから救い出してくれたのは、フローレンスが展開する事業のひとつ、“障害児保育園ヘレン”の存在でした。

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ヘレンに入園 家族の生活は一変

非常に運よくヘレンに入園することが出来、私たち家族の生活は一変しました。私は仕事を再開させることが叶い、社会とまた繋がることが出来ました。

家の中の空気も、それぞれの時間を持てるようになったためか、風通しがよくなったような気がします。

そして一番の変化は、やはり子どもの成長です

「子どもは子どもの中で育つ」と言いますが、まさにその通りで、大人では決して与えられない刺激や学びを、集団の中から持ち帰ってきてくれます。

もちろん成長のスピードは決して早くはありません。しかし日々確実に、ひとつずつ、出来ることが増えています。

それは非常に熱心に、諦めることなく寄り添ってくださっている、園の保育士さん、看護師さんを始め、スタッフの方々の存在あってこそ。本当に園の皆さんには、いくら感謝の言葉を並べても足りないほどです。

卒園後の不安

それだけ充実しているヘレンでの生活ですが、もちろんそんな毎日がこの先も永遠に続くわけはありません

彼は学年で言えば年中、あと1年半ほどで就学の時期がやってきます。そこでまた新たな悩みと対峙せざる得なくなります。

まずはそもそもの学校選び。

いくつか障害のある彼にとって、どの学校に通うのがベストなのか。その中でも医療的ケアには対応してもらえるのか。通学にバスは利用出来るのか。

健常の子どもとはまた違った視点での選択を迫られることになります。

そして保育園との何より大きな違いは、小学校は昼過ぎには授業が終わってしまう、ということです。働いている親にとって、これは何より大きな障壁です。

親が就労している場合、健常の子どもの多くは放課後を学童で過ごします。一方、発達障害や病気のある子どもが過ごすのが、“放課後等デイサービス(以下放デイ)”です。

ただこの放デイ、現状数がまったく足りていません。そのためいくつかの放デイを掛け持ちし、何とかやりくりしている家庭も多いと聞きます。

しかも医療的ケアに対応していない、つまり看護師さんが常駐していない放デイも多くあります。

つまり経口摂取の出来ない私の子どもの場合、放デイにいる間、栄養はおろか、水分すら摂取することが出来ないことになります。それは夏場であれば、命の危険と直結する状況と言えます。

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将来への希望 社会に根づいてほしい

ではやはり医療的ケア児を持つ親は、働くことを再び諦め、金銭的な不安や社会との隔絶を感じながら子育てをしなければいけないのでしょうか。

そんな悩みに、またもフローレンスが救いの手を差し伸べてくれることになりました。

それが“医療的ケアシッター ナンシー”です。簡単に言えば、看護師さんによるベビーシッター。そのため医療的ケア児でも安心して子どもを預けることが出来ます。

放デイが見つからない、足りないかもしれないと不安を抱えている我が家にとっても、授業が終わった段階で学校までお迎えに行ってくれ、さらに仕事が終わるまで自宅で預かってもらえる。もちろん医療的ケアもおこなってもらいつつ。この安心感は計り知れません

さらにヘレンで日々感じている、看護師さんたちの豊富な経験に基づく、子どもと関わる能力の高さ。それがナンシーでも提供されることになれば、放課後の時間もただ学校と自宅を繋ぐだけではない、子どもにとって非常に有意義な時間になるはずです。

サービスの提供が開始されるのはこれから。正直、どんな一歩を踏み出すのか、まだわからない部分は多いと思います。

でも確実に困っている人はおり、我が家も含め、このサービスを必要としている人がいる。

その声に気づいてくれたことに感謝しつつ、本サービスがヘレンなどと同様、しっかり社会に根づいていくものになって欲しいと願ってやみません。

(寄稿:野上瑠美子さん 撮影:えいとくんのお父様)


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正式サービスインでは、まずは30世帯を対象にサービスを提供し、さまざまなニーズに寄り添いながら事業モデルをつくりたいと考えています。
同時に、このような長時間の在宅支援が全国に広がっていくことを目指し、行政に訴えていきます。

そのためにも、たくさんの仲間が必要です。
「医療的ケアシッター ナンシー」では、現在看護スタッフを募集しています

日本初の試みに挑んでみたい方、小児看護の経験を活かしたい方、一人でも多くの親子の「やってみたい」を一緒にかなえませんか?
8/9(金)、8/23(金)、8/30(金)に採用説明会も開催予定です。まずはお気軽にご参加ください!

「医療的ケアシッター ナンシー」採用情報・説明会情報はこちら

医療的ケアシッター ナンシー/利用案内

〈対象〉
・23区内在住で、0~18歳までの児童。
・ヒアリングにおいてお預かりが可能と判断された医療的ケア児・障害児。

〈訪問回数〉
・週に2回程度。1回2~3時間ほど。(要相談)

〈利用料〉
・法律の定めに従い算定します。なお自己負担は所得に応じた負担上限月額が設定され、ひと月に利用したサービス量に関わらず、それ以上の負担は生じません。

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「医療的ケアシッター ナンシー」について くわしくはこちら

フローレンスはこれからも、親子の笑顔のために、社会課題に取り組み続けます。

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