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2022/12/22

約70人の保育士と考える「インクルーシブ保育」。これからの保育園の在り方【後編】

     


11月21日、東京都の杉並区社会福祉協議会保育部会が主催する、「インクルーシブ保育」をテーマにした講演会が開催されました。

参加者は杉並区内の公私立の認可保育園の施設長及び次期施設長、主任級保育士の約70名。

日本初の医療的ケアの必要な子や重症心身障害児の長時間保育など障害児保育事業を行なっているフローレンスにお声かけいただき、当日はフローレンス代表理事の赤坂と、障害児保育園ヘレン事業部の森下が講師として登壇しました。

前回に続く【後編】では、Ⅱ部で赤坂がお話しした「『みんなの保育園構想』~今後の保育園の在り方について~」をご紹介します。

前編はこちら

約70人の保育士と考える「インクルーシブ保育」。医療的ケア児・障害児保育とは?【前編】
11月21日、東京都の杉並区社会福祉協議会保育部会が主催する、「インクルーシブ保育」をテーマにした講演会が開催されました。 参加者は杉並区内の公私立の認可保育園の施設長及び次期施...

待機児童数が過去最少。「みんなの保育園」構想とは

厚生労働省は2022年4月時点の待機児童数は全国で2944人と発表し、全国のおよそ85.5%の市区町村では待機児童が解消傾向であることがわかりました。

待機児童問題が解決に向かっている中、少子化の影響で定員が埋まらず、経営が厳しく閉園する園も出てきました。一方で普段、保育所にも幼稚園にも通っていない未就園児、いわゆる「無園児」の家庭は社会とのつながりが持ちづらく、孤独な子育てに追い込まれているという現状もあります。

そこでフローレンスでは保育園の在り方を捉え直し、希望するすべての親子がニーズに合わせて保育園の利用ができるよう「みんなの保育園」構想を政府に対して提言。保育園の空き枠を活用し、保育の必要性認定のない専業主婦・主夫家庭などでも利用できるよう求めています。

「ポスト待機児童時代に保育所はどうあるべきでしょうか」

と赤坂は問いかけます。

孤独を極める無園児の子育て。「みんなの保育園」モデル事業化へ

フローレンスは、株式会社日本総合研究所に委託し、2022年3月に全国の0歳以上の未就学児の保護者2,000人にアンケート調査を実施。保育園、幼稚園などを定期的に利用している家庭と、そうでない家庭(=無園児家庭)を比較し、生活実態や精神的な状態、保育所等の利用ニーズを調べました。

その結果、無園児家庭は保育園や幼稚園を定期的に利用している家庭に比べて、子育てで孤独を感じやすく、無園児家庭の半数以上が定期保育サービス利用を希望していることがわかりました。

2022年6月、フローレンスはこれらのアンケート結果をまとめ、無園児当事者の方とともに、すべての親子が保育園を利用できることを求める記者会見を実施。政府はこれを重要課題として受けとめ、来年4月に創設される子ども家庭庁の来年度予算案の概算要求に、無園児を定期的に保育園で預かるモデル事業の実施を盛り込みました。

またフローレンスは仙台市で運営する「おうち保育園かしわぎ」で、今年4月から、専業主婦の家庭など保育要件のないご家庭のお子さんを定期的に預かるサービスを国のモデル事業に先行して独自に開始。

空き枠を活用して週1日~週6日まで、各家庭に合わせた利用頻度で保育を提供しています。

利用者からは「子育てをやめたい、と感じていましたが、子どもがかわいいと思えるようになった」などのコメントが寄せられました。また利用者にアンケートをとったところ、定期預かりサービスを利用することで、子育てに対する不安や孤独感が減少し、子どもに対する愛情や子育ての「幸福感」も増大していることもわかりました。

これからの保育園の在り方とは?親子のセーフティーネットに

「今までは『親が働いていないから、保育園に通えなくても仕方がない』と捉えられていました。しかし、親の就労の有無によって、子どもが専門的で質のいい保育を受けられているかどうかに差が出ているということは、子どもの権利が尊重されていないのではないかと考えています」

と赤坂は訴えます。

すべての子どもが定期的に保育園に通い、つながりを持つことができれば、虐待やネグレクトなどご家庭での問題にいち早く気づけるほか、給食によって栄養をカバーできるなど、親子のセーフティーネットとしての役割も担えるようになります。

また国内の研究では、0~2歳に保育を受けることで、子どもの言語発達の遅れが予防されるほか、攻撃性や多動性も減少するといった効果が期待できることなどが分かっています。

待機児童が解消しつつある今、フローレンスでは保育の必要性認定そのものを見直す必要があると考えています。

地域で開かれた存在を目指して。保育園の新しい機能

フローレンスでは子どもを預かるという役割にとどまらず、保育園が持つ機能を生かし、地域の子育て支援施設としてできることを模索しています。

保育関係者が既存の制度や事業にとらわれず、未来の保育ビジョンを共に描き、学びあい、議論する「あたらしい保育イニシアチブ」では、ポスト待機児童時代に保育園が担える19の機能を発信しています。フローレンスも、この「保育園の多機能化」に賛同しています。

あたらしい保育イニシアチブ

フローレンスが運営する「おうち保育園かしわぎ」では2019年から、週末にこども食堂を開始しました。保育園には給食室や食事に必要な道具も揃い、子どもが安全に遊べるスペースがあるため子ども食堂との親和性が高く、地域の子育て家庭との接点になることが期待されます。現在は、フローレンス運営の保育園で実施園が増えてきています。

さらに、今年の10月からは、子ども食堂に来ることが難しい医療的ケア児家庭に、子ども食堂のお弁当を月に1回無料で届ける「医ケア児おやこ給食便」のトライアルを仙台市内でスタート。フローレンスでは子ども食堂を開くだけでなく、こちらから支援を届けていくアウトリーチ型の取り組みも順次進めています。

赤坂は講演の最後に、

「待機児童が減っていく時代に、保育園が地域の子育て支援の拠点としてできることを保育士の皆さんと一緒に考えていきたいです」

と締めくくりました。


親子が孤立せず、みんなで子どもたちを抱きしめ、子育てとともに何でも挑戦できる社会をつくることは、私たちのミッションです。このミッションに共感し、使命感をもって共に親子を取り巻く課題に取り組んでいただける仲間をお待ちしています。




フローレンスでは、社会問題や働き方など、これからもさまざまなコンテンツを発信していきます。
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