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アクション最前線

2016/10/14

『りんごの木』プロジェクトの”子ども達のミーティング”に学ぶ、保育者のあり方

    


  • 宇野澤ちはる

    こんにちは。「みんなのみらいをつくる保育園」開園チームの宇野澤です。2児の母で、元気な一男一女の子育てにも奮闘中です!私たちは今、2017年4月の「みんなのみらいをつくる保育園」開園に向けて、保育内容や、子ども達との関わりについて頭を悩ませています。私たちが、うんうん唸りながら考えるプロセスが、私たちだけでなく、同じように「子どもが主体の保育」を目指す人へのヒントになるかもしれない!そんな気持ちで、私たちの開園に向けたプロセスをご紹介していきます。今回は、神奈川県にある『りんごの木』幼稚園へ見学へ行かせていただきました!

■「子ども主体」と「何でもあり」の違いは?

「子ども主体の保育」を実現したい私たちは、「子ども主体」と、「何でもあり」の線引きに悩んでいました。

「子ども主体」はともすると、子どもに何でもやりたいことをやらせるということになりかねません。それだけでは、「小学校で、集団生活に馴染めないのでは……」「ただのワガママな子どもに育つのでは……」といった不安も浮かんできます。

保育者から一方的にルールを押しつけたり、指示をすることはしたくない。だからといって、何でもOKというわけではない。そのジレンマの中で、「子ども主体」をどのように実現するか。これが、今、私たちが真正面から取り組んでいるテーマです。

子どもは大人と同じ、ひとりの人間であり、その可能性は無限大であるということ。そして、その可能性を信じることが、「子ども主体」の出発点となる。そんな想いが「みんなのみらいをつくる保育園」の根底にはあります。だからこそ、「子ども主体」と「なんでもあり」の違いを保育者がどのように考えるのか、どのように子どもたちと関わっていくのか、議論に議論を重ねています。

●「子どもの心により添う保育」を実践する『りんごの木』プロジェクト

そこで、今回は「子どもの心により添う保育」を実践されているりんごの木プロジェクトが運営する幼稚園(以下、『りんごの木』)を見学させて頂きました。今回、『りんごの木』で、保育者がどのように子ども達と関わっているのか、子ども達がどのように生活しているのかを見学し、大きなヒントを得ることができました。

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今回『りんごの木』の案内をして下さったのは、保育者の青山さん(写真真ん中)です。青山さんは『子どもたちのミーティング〜りんごの木の保育実践から』(柴田愛子さんとの共著)を執筆しており、子どもの心に寄り添う保育を実践されています。それでは、『りんごの木』の保育の様子をご紹介します!

■登園も、遊びも自分次第

『りんごの木』では、子どもたちは『自由登園』です。登園時間もきっちり決まっておらず、それぞれ自由に登園してきます。子どもたちが着る服も、履くものも自由。見学した日は、よく晴れた暑い日でしたが、雪駄で登園する子が大多数。中には、裸足で登園してきた子もいました(もちろん、お母さんが靴を持っていました)。

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「踏まれたら、怪我をしてしまうのでは?」「お散歩に行く時は、運動靴の方がいいのでは?」ついつい親目線で、いろいろと気になってしまいますが、これは大人の常識の押しつけ。雪駄で遊んで、脱げてしまうのが気になるなら、その子は次からは運動靴で登園するようになるかもしれません。足を踏まれて怪我をしたら、次からは踏まれても大丈夫な靴を履いてくるかもしれません。

大人がルールを押しつけるのではなく、子ども達が経験し、考えるステップがとても重要だと感じました。

登園した後どこで遊ぶのかは、子ども達が自分で決めます。『りんごの木』園の前の広場で遊ぶもよし、遊歩道で遊ぶもよし。部屋の中でかくれんぼをしたり、園の横に置いたプールで遊んだり……などなど。

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遊ぶ場所を自分たちで決めた子どもたちは、とにかく全力で遊んでいました。それだけでなく、保育者も、子どもと一緒に全力で遊んでいたのが印象的でした。大人だから、保育者だからただ見守る、ではなく、子どもたちから提案された遊びで、一緒に試行錯誤していました。これが「子どもの心により添う保育」か、と清々しい気持ちになりました。大人も自由、子どもも自由。それが、『りんごの木』のモットーを支えています。

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■『子どもたちのミーティング』

11時過ぎくらいになると、誰からともなく、遊びの片付けが始まります。『りんごの木』の一日の流れは、きちんと決まっていませんが、11時半頃から『子どもたちのミーティング』を行うことだけは決まっています。「子どものことは、子どもに聞く」徹底した子どもの心により添う保育の実践です。

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『りんごの木』では自由登園なので、みんな登園時間がばらばらです。だからこの時間が、みんなが顔を合わせる最初の時間でもあります。顔を見ながら、出席を取り、一言二言言葉を交わします。めいっぱい遊んだ後のこの時間を、『りんごの木』では、とても大切にしています。

『子どもたちのミーティング』とは?
・4歳と5歳の子ども達が参加し、様々なテーマについてざっくばらんに話し合います。
・話し合うテーマはいろいろ。遊びの工夫について話すこともあれば、行事について話し合うこともあります。
・時間は、15分くらいで終わってしまう日もあれば、1時間みっちりやることも。
・ミーティングでは、保育者がファシリテーターとなり、話し合いを進めます。

・このミーティングは

 ①誰かが意見を言っている時は聞くこと

 ②Yes,Noで答えられる質問は「パス」を使って後から答えることもできる(必ずしも答える義務はない)

 ③参加する(=その場にいる、傾聴する)

ということをみんな意識しています。

それまで一緒に全力で遊んでいた保育者は、さっきとは一転、「ちゃんと座ろう」「意見を言ってる時は聞くよ」と言うべきことをしっかり言います

●ミーティングで出た、『〜〜君がいると嫌な気持ちになる』という言葉に対して……

私たちが見学に行ったこの日のテーマは、大人でも考え込んでしまうものでした。

その日は、風邪で休む子が多かったことから、「誰が休むと悲しい気持ちになるか」という話からはじまり、そこから「誰がいると嬉しいか」と話は展開していきました。ミーティングの中では、大人からすると「言われた方はかわいそうなんじゃないか」と思うような率直な意見も出ました。(例えば、AちゃんはBちゃんがいると嬉しいけど、BちゃんはAちゃんがいなくても平気、といったような意見です。)

そんな中、A君が、『B君がいると嫌な気持ちになる』という発言をしました。

オレンジが保育者青が子ども達の発言です。

ー「なぜB君が嫌なの?」
A君「だって、乱暴するから」

ー「(B君に)なぜA君に乱暴をするの?」
B君「A君のこと好きなんだけど、戦いごっこするとA君泣いちゃうの」

ー「どうして戦いごっこするとA君泣いちゃうの?」
A君「だってB君、パンチやキックして痛いんだもん」

このとき、B君に、A君が嫌がってるからそういうことしちゃダメだよ、というのは簡単です。でも、ここでは大人はファシリテーター。子ども同士で話し合いを続けます。

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「A君、B君と遊ぶのやめたら?」
「B君は戦いごっこしなきゃいいんだよ」
「A君、B君に今度やられたら、もっと強いC君に助けてもらったら?」

A君も、B君のことが嫌いではないので、ついつい遊んでしまうのだといいます。そこで出てきた「誰かに助けてもらう」案。皆さんだったらどう思いますか?

保育者がみんなに質問します。

ー「誰かに助けてもらうのはあり?なし?」

これは、YesかNoで答えられる質問なので、全員が考えて答えます。

「あり!」「なし」「なし」「あり・・・かなぁ?」「たまにあり」

など、YesかNoですがいろいろな意見が出てきました。

「あり」の人の意見、「なし」の人の意見、「条件つき」の人の意見をそれぞれ聞きます。どれも正しく、どれかひとつが正解ではない。でもこの問題についてみんなで考えることが大切です。

「4歳の子なら助けるけど、5歳の子は自分で立ち向かうほうがいい」
「自分のことなんだから、自分で解決したほうがいい」
「泣くくらい乱暴なら助けてあげたほうがいい」

時間は12時半近く。お腹もすく頃です。でも、全員が一生懸命にこの問題を考えています。『りんごの木』の『ミーティング』では、結論を出すことをゴールにはしていません

今回も結論づけることはしていませんでしたが、最終的にはある子が出した「手加減を覚える」という意見に、「そうすれば遊ぶのをやめる必要ないね!」「僕も最初はおもいっきりやっちゃってたかも」と子ども達が賛同し、1時間に及んだ『ミーティング』は終わりました。

未就学児はともすれば、子ども(赤ちゃん)扱いされがちですが、このミーティングを見て、子どもの可能性は無限大で、大人が決めつけてはいけない、という思いを強くしました

『りんごの木』では、『子どもの心により添う保育』を徹底的に実現しています。大人が決めつけるのではなく、大人が与えるのでもなく、子どもの考えや、やりたい気持ちを大切にしていました。あるがままの子どもの気持ち、心を受け止め、みんなで考える。これを日々行っています。

●改めて考える「子ども主体」と「何でもあり」の違い

今回、「りんごの木」を見学させていただき、保育者の関わり方や、「子ども主体」と「何でもあり」の違いがクリアになりました。

それは、自由の前提となる、”秩序”が大切だということです。例えば、『りんごの木』という色んな人達が生きる社会を成立させるために、『ミーティングを行う』という秩序がありました。

子ども達が自由に遊ぶ上でも、おとなの目の届かないところに何も言わずに行かないということだけはお願いしてあります。これも、子ども達が自由に遊ぶための秩序です。

でも、大人たちは”ルール”を押しつけることをしません。『ミーティング』では、決して結論を大人が述べず、子ども達に委ねます。それは、”ルールを疑い、つくり変えていける”、そんな子ども達の無限の可能性を信じるからです。

自分たちで経験し、自分たちで考え、時には話し合い、ルールを作っていく。それこそが、子ども達の「みんなのみらいをつくる力」のもとになるのではないでしょうか。

今回、『りんごの木』の保育を目の当たりにし、自分たちが目指す保育に確信を得ることが出来ました。同時に、子どもたちが、大きく可能性を開花させることができる保育園にしていこう、と決意を新たにしました。

開園まであと半年。スタッフ一同、開園準備に取り組んでいきます。『りんごの木』の皆様、お忙しい中ありがとうございました!


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書いた人:宇野澤ちはる


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