2021年の医療的ケア児支援法の施行をきっかけに、全国の保育園・認定こども園などでの医療的ケア児の受け入れが進んでいます。
一方で、他の自治体や園での取り組みを知る機会が少ないこと、地域によって体制に差が出ていることも見えてきました。
「どのように受け入れを進めていけばよいのか」「自治体と事業者の連携が上手くいかない……」――。
そんな声を受けてフローレンスは、2025年12月3日、自治体・保育事業者などを対象に、実践事例を共有するオンライン勉強会を開催しました。
「地域で入園を進めるための『連携』のヒント」と題し、こども家庭庁および積極的な取り組みをする自治体と保育事業者の方々にご登壇いただきました。
登壇者一覧(当日登壇順)
- こども家庭庁 成育局保育政策課
- 認定NPO法人フローレンス みらいの保育園事業部 マネージャー 川口千里
- 横浜市 こども青少年局 保育・教育部 保育・教育支援課
- 認定NPO法人おれんじハウス 理事長 中陳亮太氏(横浜市・東京都)
- 神戸市 こども家庭局 幼保事業課
- 特定非営利活動法人こどもコミュニティケア 代表理事 末永美紀子氏(神戸市)
当日は、300名近い方にご参加いただき、医療的ケア児の保育に対する全国的な関心の高さがうかがえました。また、事後アンケートでは回答者の91.4%に満足・やや満足とご回答いただける内容となりました。改めてご登壇者の方々にはご協力、御礼申し上げます。
この記事では、各登壇者の発表内容を抜粋してご紹介するとともに、参加者の皆さんから寄せられた感想をお届けします!
勉強会内容
こども家庭庁より国の補助事業について
はじめに、こども家庭庁成育局保育政策課より、医療的ケア児の保育に関する国の補助事業についてご説明いただきました。
入園の際にポイントとなるのが「医療的ケア児保育支援事業」です。

特に重要な看護師等の配置については、各施設に看護師を配置することが難しいという声を受けて、自治体が確保した看護師が複数施設を巡回する場合にも補助が出ています。
災害対策備品整備として緊急時の電源確保のための外部バッテリー購入や園外活動への移動支援へも、現場の声を受け補助が実現しました。
また、「保育環境改善等事業」における「既存の保育所等において、障害児や医療的ケア児を受け入れるために必要な改修等」の補助などについてもご紹介いただきました。
事業の目的や内容、各自治体・施設に支給される補助金がスライドに示された、こども家庭庁の令和8年度の概算要求は下記URLからご覧いただけます。
さらに、医療的ケア児の受け入れ状況について全国の施設数と児童数の推移をご説明いただきました。両方とも着実に増加していることが分かります。

最後に、参加者に向けて、「国としては地域間での格差をなくし全国で進めていきたい。現場の声を聞いて、大切にしていきたいと思っています。」という力強いメッセージもいただきました。
フローレンスの取り組みについて
弊会からも一保育事業者として、小規模認可保育園での医療的ケア児の受け入れ実現までのロードマップについて、みらいの保育園事業部マネージャー川口よりお話ししました。

フローレンスの取り組みについては、こちらの記事でもご紹介しています。

横浜市の取り組みについて
次に、積極的に医療的ケア児の受け入れを進める自治体として、横浜市 こども青少年局 保育・教育部 保育・教育支援課よりお話しいただきました。

医療的ケア児支援法が施行された令和3年、横浜市が受け入れ推進のためのガイドラインを策定した令和4年頃を境に、右肩上がりに入園が進んでいることがわかります。
勉強会では、ガイドラインの中で特に大事にされている部分についてご説明いただきました。例えば、保育の利用開始までに「横浜市医療的ケア児保育教育検討会議」を開催。小児科医、受け入れ実績のある施設長や看護師などにより構成される会議で、医療的ケア児を安全に保育するための助言を受けられるよう、集団生活をする際の配慮事項などを専門家から聴取するものです。
横浜市のガイドラインは下記URLからご覧いただけます。
看護職員を複数配置し、常時、医療的ケア児の受け入れが可能な園を認定する「横浜市医療的ケア児サポート保育園」という横浜市独自の取り組みについてもご紹介いただきました。

国の看護師等の配置に対する補助は、医療的ケア児を現在受け入れている園に支給される仕組みです。「医療的ケア児がいないときには補助を受けられないため、雇用の継続が難しい」という現場の声により、在籍の有無に関わらず看護職員2名分の雇用費をサポート園に助成する制度が作られました。
認定NPO法人おれんじハウスの取り組みについて
続いて、横浜市と東京都で複数の保育園を運営する認定NPO法人おれんじハウスの中陳(なかぜ)理事長より、スライドの3つのテーマを中心にご説明がありました。

おれんじハウスが横浜市で運営する保育園は、先の横浜市の説明にあった「横浜市医療的ケア児サポート保育園」として運営されています。
一方、共同事業体として運営する港区立元麻布保育園は、区全域の医療的ケア児の拠点となる施設として送迎も行っています。横浜市と港区ではカバーする面積が異なり、港区は比較的狭いためこのような形をとっているそうです。また、その他の自治体においても、地域の実情に合わせた柔軟な制度設計がなされていることをご紹介いただきました。

さらに、医療的ケア児を受け入れる際の考え方として「園がすべてを背負う必要はありません」「行政・関係機関・福祉サービスなど複数の連携先・相談先があることが大切」というメッセージもいただきました。医療的ケア児のご家庭がすでにつながっている関係機関に加え、園もつながりながら一緒に支えることが大切です。

神戸市の取り組みについて
神戸市 こども家庭局 幼保事業課からも神戸市の医療的ケア児の受け入れ体制、現在の状況、独自の取り組みなどをお話しいただきました。

神戸市では、医療的ケア児の保育への支援として、看護師の雇用に関する補助、保育環境改善に関する補助、研修への補助を行っています。

受け入れが進んだポイントは、独自の取り組みである「巡回指導看護師の配置」です。こども家庭庁からの説明にあったように巡回で医療的ケアに対応する看護師の配置には国からの補助がありますが、指導や相談に乗る看護師については神戸市独自財源で配置しています。

また、医療的ケア児の優先利用枠を設けて入所調整を行う(4月入所のみ)という工夫もされています。
特定非営利活動法人こどもコミュニティケアの取り組みについて
最後に、神戸市で医療的ケア児が多く在籍する保育園を運営する、特定非営利活動法人こどもコミュニティケアの末永(すえなが)代表理事よりお話しいただきました。
「多職種の理解と協働を進めるには?」「医療的ケア児があたりまえに保育園に通える未来を実現するためには、何が必要か?」といった質問をはじめ、沢山の事前質問にも丁寧にご回答いただきました。
こどもコミュニティケアには同じ町内に3つの施設があり、法人一括採用で多職種のケアスタッフを雇用しています。短時間勤務のスタッフが多く、シフトで動くことが前提として考えられています。“誰かがいるからこの子を見られる”ではなく、“チームみんなでみんなのことを見る”という体制を大切にしています。


参加者からのご感想

保育事業者
・貴重な他園の実践を知ることができ、今後の業務への大きな収穫になった。
・自治体との連携がわかりやすく、園の理念に共感できた。

自治体職員
・国の制度紹介が参考になった。もっと多くの自治体に活用してほしい。
・行政と受け入れ園双方からの好事例が濃い内容。聞き逃せない時間だった。
・好事例の継続的な共有が「あたりまえ」を広げ、園が孤軍奮闘しない環境につながると感じた。
さいごに
地域の保育園での医療的ケア児のお預かりが始まり、戸惑いながらもそれぞれの地域でチャレンジされている自治体や保育園の方も多いと思います。他の地域での取り組みも参考にしながら、疾病や障害の有無にかかわらず、こどもたちが「ごちゃまぜ」で育つ社会へ、ともに一歩を進めていけたら嬉しいです!
わたしたちフローレンスでも、医療的ケア児保育を広めるための取り組みをしています。
医療的ケア児の保育に関わる人が集まり、学びのきっかけづくりや相談ができるオンラインコミュニティ【「医療的ケア児保育」まなびば】を運営しています。関心のある方はぜひご参加ください。
また、今後も誰でも参加ができる勉強会を開催予定です。勉強会やその他フローレンスの取り組みの案内を希望される方は下記フォームからメールアドレスをぜひご登録ください。
| (参考)▼開催済みの勉強会事例。このような情報をメールで直接お届けします。 >事例発表と対話で解き明かす「医ケア児保育の実践のヒント」を学ぶミニセミナー開催 |
フローレンスではこれからも、現場の親子やスタッフの声を社会に届け、培った事業ノウハウを共有していくことを通して、たくさんの仲間とともに社会に「新しいあたりまえ」をつくるアクションを続けていきます。
ぜひ、今後ともフローレンスの活動を応援いただけますと幸いです。
※本勉強会について、フローレンスは「一般社団法人全国医療的ケア児者支援協議会」よりご後援をいただいています。



