デジタル×対面の両輪で支援を続ける

ハイブリッドソーシャルワーク

「こどもの貧困と虐待のない日本」を叶えるとりくみ

ハイブリッドソーシャルワーク

Story ストーリー

デジタル支援と
必要に応じた対面支援を組み合わせた
新しいソーシャルワーク。

「こどもや生活に関する相談をしたいけれど、どこに相談したらよいのかわからない」、「仕事がある平日の日中に、自治体の相談窓口まで足を運べない」。本当に支援を必要としている人ほど、支援にアクセスできない現状にわたしたちは課題を感じていました。
全国的に相談員も不足している今、この課題を解消するには従来の対面中心の方法とは異なる手法の支援が必要です。そこでフローレンスは、LINEを活用した全国対応のLINE相談「おやこよりそいチャット」をスタート。この事業では、相談者や相談内容に応じて対面支援や訪問支援につなぐ「ハイブリッドソーシャルワーク」を実践し、一定の成果を上げています。さらに、生成AIを組み合わせ24時間365日相談に対応できる体制を構築。「テクノロジー×福祉」で、新たな時代をつくります。

Journey & Reflection 歩みと想い

1本道を歩く2人のこども

事業をつくる

「おやこよりそいチャット」でハイブリッドソーシャルワークを実践

「こども宅食」で得た気づきを家庭の支援につなげる
「こども宅食」で得た気づきを家庭の支援につなげる

「こども宅食」では、利用希望者がLINEで簡単に申し込みできるシステムを採用しています。申し込みのハードルを下げると同時に、利用者に奨学金制度や地域の支援イベントなどの情報を届けることが可能になりました。

LINEを通じた情報配信は多くの人に見られており、その中にはLINEを利用してさまざまな相談をしてくれるケースもあります。従来、子育てや行政支援に関する相談は自治体の窓口で対面で行うのが一般的でした。しかし、さまざまな事情で窓口に行けない人も多くいます。
「LINEなどのデジタルツールは、課題を抱える人にとって有用な相談の場になるのではないか」という「こども宅食」での気づきをもとに、LINEで子育て世帯の相談を受け付け、有資格の相談員(デジタルソーシャルワーカー)が伴走支援する「おやこよりそいチャット」を開始しました。
「おやこよりそいチャット」では、相談員がデジタルで相談に応じ、必要な場面では訪問による支援につなぎます。このような新しいソーシャルワークの形を「ハイブリッドソーシャルワーク」と名付け、実践しています。

おやこよりそいチャットを自治体で展開

デジタルとリアルで必要な支援を届ける「おやこよりそいチャット」は、フローレンスが独自に運営する全国版とは別に、自治体からの受託事業として複数の自治体で展開しています。その背景には、ハイブリッドソーシャルワークを国の制度に押し上げたいというビジョンがあります。

21年8月からは、神戸市の子育て世帯向けに自主事業で「おやこよりそいチャット神戸」の提供を開始。23年11月からは神戸市の事業として「ここならチャットKOBE」を受託し、重篤なケースにも対応しています。

さらに、22年5月には山形市で「おやこよりそいチャットやまがた」の提供をスタート。山形市の妊産婦・子育て世帯をはじめ、こども・若者からの相談にも対応しています。

自治体や企業とも連携し、傾聴型生成AIを開発
自治体や企業とも連携し、傾聴型生成AIを開発

「おやこよりそいチャット」を運営するなかで、有人対応では夜間や休日に迅速な対応が難しいという課題が見えてきました。また、全国にハイブリッドソーシャルワークを広げていく上で、地域の相談員不足という課題を乗り越えていく必要もありました。

そこで、生成AI「ChatGPT」を活用したAIチャットサービスの開発に着手。小さな試行錯誤を重ね、傾聴や課題整理を得意とするサービス「いまきくイヌAIちゃん」を生み出しました。このAIは、相談者の「とにかく話を聞いてもらいたい」というニーズに応えるだけでなく、人には打ち明けにくい内容も「AIだから相談しやすい」というケースにも対応できます。利用者の希望や必要に応じて専門スタッフによる有人対応にも切り替えられるため、AIと人によるハイブリッドでの対応を実現しています。

自治体との取り組みも進めています。23年12月には、フローレンスと山形市、株式会社PKSHA Technology、株式会社Sapeetで「孤独・孤立によりそう相談支援に関する協定」を締結。官民連携で傾聴型生成AIの開発を進め、24年7月から傾聴型生成AIと専門スタッフによる孤独・孤立相談「つながりよりそいチャット」を開始し、山形市内の全世代へ提供しています。

しくみを変える

ハイブリッドソーシャルワークの制度化を推進

政府の「骨太の方針」に「相談のデジタル化」が盛り込まれる

24年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2022」において、「妊婦・出産支援として、不妊症・不育症支援やデジタル相談の活用(SNSを活用したオンライン相談などアクセスしやすい妊産婦支援)を含む妊産婦支援・産後ケアの推進等に取り組むとともに、出産育児一時金の増額を始めとして、経済的負担の軽減についても議論を進める」との文言が盛り込まれ、デジタル相談支援(デジタルソーシャルワーク)の重要性が認識されました。

これまで、必要な人に情報や支援が届かないことは大きな課題とされてきました。周囲の目が気になる、平日に窓口を訪れる余裕がない、支援情報がどこで得られるのかわからないなどの理由で、支援を受けられない方が多くいます。

この問題を解決する方法として、ハイブリッドソーシャルワークは有効です。デジタルツールを活用することで、プライバシーを確保しながら相談でき、必要な情報を得ることができます。また、支援者がフルリモートで対応できるため、地域の支援者不足問題を解消する利点もあります。

しかし、政府の方針では対象が妊産婦支援に限定されています。今後は、全国のすべての子育て世帯が気軽にオンラインで相談できるよう、ハイブリッドソーシャルワークの制度化をさらに推進していく考えです。

文化を生み出す

「テクノロジー×福祉」が開く新しい支援のかたち

AIなどデジタル技術を活用し、福祉を未来へつなぐ
AIなどデジタル技術を活用し、福祉を未来へつなぐ

子育て世帯への相談や支援はオンラインでも行える。デジタル活用による支援の実践を通じて、フローレンスは、ハイブリッドソーシャルワークやAIによる相談対応という新しい支援の概念を提唱しています。

少子高齢化が進むなか、福祉業界は深刻な人手不足に陥っています。サービスインフラの維持が困難になる今、福祉サービスのデジタルトランスフォーメーション(DX)やAIの活用は、この課題を解決するための希望でもあります。フローレンスは、これらの実践を通じて未来の福祉のあり方を社会に示しています。

これからしていくこと

デジタル技術を活用したオンラインでの相談受付やサポートは、さまざまな課題を抱える子育て世帯を支援する方法として広まりつつあります。
今後は、傾聴型生成AI「いまきくイヌAIちゃん」とハイブリッドソーシャルワークをすべての自治体が導入し、子育て世帯が24時間365日気軽に相談できる社会を実現していきたいと考えています。これにより、支援が必要な人々がいつでも安心してつながれる環境を整えていきます。

Social Impact 社会的インパクト

赤い文字で「Florence」と書かれた白い壁の一部

おやこよりそいチャットなどでつながった世帯数

10,500世帯

  • 2024年3月時点。
    専門相談員が家庭にデジタルと対面でのハイブリッドソーシャルワーク(相談支援)を行うサービスへの登録世帯数

New Normal 新しいあたりまえ

国会前に集合する医療的ケア児の家族と支援者たち

古いあたりまえ

困りごとは、役所に足を運び
対面で相談するのがあたりまえ

新しいあたりまえ

AIやデジタルツールを通じて、
気軽な相談から最適な支援を得られるのがあたりまえ