社会みんなで命に向き合う
にんしん相談・無料産院
「どんな親子も孤立しない日本」を叶えるとりくみ
Story ストーリー
「予期せぬ妊娠」から
「赤ちゃん遺棄」という流れを断つ。
デジタル妊娠相談と無料産院による
新しいセーフティネット。
2016年に始まった「にんしん相談」は、予期せぬ妊娠をした女性が相談員とともに解決策を見つけるための支援サービスです。AIチャットボットを使うことで曜日や時間に関係なく「困ったときにはいつでも相談できる」体制と、LINEを使った匿名相談や必要な場合に受診・窓口同行を行う有人対応など複数の支援体制を整えています。また、赤ちゃん遺棄が社会からなくならない要因のひとつは、妊婦が経済的に困窮して医療機関の受診をためらい、未受診のまま出産に至ることがあります。そこで、寄付をもとに健診・出産費用を負担する「無料産院」事業を開始しました。
「生まれたばかりの命を社会で守る」。その思いを胸に、わたしたちは命に向き合う取り組みを続けています。
事業をつくる
伴走型の「にんしん相談」で予期せぬ妊娠に悩む女性を支援
「誰にも相談できない」を解消する、相談員による支援を開始
フローレンスは、16年に「赤ちゃん縁組」事業をスタートすると同時に、予期せぬ妊娠に悩む女性に相談員が対応する「にんしん相談」を行ってきました。
開始から現在まで、4504件のにんしん相談、チャットボットでは1万1070件の相談を受け付け、さまざまな公的支援の情報提供も含めて、相談員が寄り添い、ともに考える伴走支援を実施しています。その中には「お金がなくてどうしてよいのか分からない」という相談も多く、保健センターや病院と連携して、孤立する妊婦を医療や公的支援につなげる取り組みも併せて行ってきました。
また、「どうしても自分では育てられない」と妊婦が決断し、特別養子縁組を希望する場合には、生まれてきた赤ちゃんにふさわしいと思われる育ての親を紹介しています。
AIを導入し、すべての妊婦を支える相談支援体制へ
24時間対応のLINEチャットボット相談員「エナガさん」をスタート
妊娠や特別養子縁組に関する相談を受けている中で、「曜日や時間を問わず、匿名で相談したい」というニーズがあることがわかりました。そこで、多くの方が利用するLINEを活用して、相談者が匿名で質問できるシステムを構築することに。電話で対応していた相談に、LINEチャットボットを導入し、24時間365日いつでも相談に対応できる体制を整えました。
20年にスタートした「にんしん・養子縁組相談窓口」の「エナガさん相談室」は、チャットボット相談員の「エナガさん」がLINEで相談に対応するサービスです。支援を必要とする方に、正しい情報を24時間届けるシステムとして、多くの方をサポートしています。なお、このサービスは株式会社アクセンチュアの支援によって実現しました。
AIの実装で「エナガさん」の機能を向上、より相談しやすいサービスに
24年2月には、チャットボット相談員「エナガさん」にAIを実装し、「対話機能」と「分析機能」をアップデートしました。センシティブな相談内容には専門相談員が対応し寄り添って支援していくことは変わりませんが、AIの力により、さらに相談しやすいサービスを目指したものです。
「対話機能」では、相談者は用意された質問を選択するのではなく、自分の言葉で相談できるようになりました。新たな「分析機能」では、回答の精度が向上するだけでなく、AIが学習することでサービスがさらに改善され続けるようになっています。
なお、これらのサービスの土台となる対話エンジンは、株式会社PKSHA Technologyからの技術提供を受けて実現しました。
しくみを変える
赤ちゃん遺棄を防ぐため、「無料産院」事業を全国へ
経済的困窮が生む「医療機関とつながれない」状況をなくすために
赤ちゃん遺棄の要因のひとつに、経済的困窮のため妊婦が受診を避け、その結果医療機関とつながれないまま孤立するケースがあります。
フローレンスでは、「妊娠しても金銭的な理由で医療機関に通えない」妊婦を救うため、寄付をもとに「中期以降ハイリスク妊婦への初回受診料支援」を行う取り組みを22年10月に試験的に開始しました。
これは、経済的に困難で孤立している妊婦の初回受診料をフローレンスが負担することで、母子ともにリスクの高い「未受診」での出産や赤ちゃん遺棄の防止を目指すものです。
志をともにする病院と日本初の「無料産院」事業へ発展
初回受診料支援の考え方を発展させ、フローレンスが健診費用や出産費用を提携先の医療機関に支払う「無料産院」事業も展開しています。
この事業は、孤立し経済的に困窮する妊婦の金銭的不安を取り除き、安心して出産できる環境づくりを支えるものです。また、行政と連携し、切れ目ない支援が受けられるようなサポートを目指しています。日本初のこの取り組みでは、開始初年度に11組の妊婦と赤ちゃんを支援しました。
よりよい支援をこれからも継続的に提供するため、関係機関などへの事例共有会などを実施して内容の改善にも努めています。提携する医療機関もさらに増やしながら、ひとりでも多く支援できる体制を目指していきたいと考えています。
「特定妊婦の健診・出産無償化」に向けた政策提言で、すべての妊婦に安心できる出産を
誰もが安心して出産でき、赤ちゃんが地域で見守られて育つ未来を目指す
国に先駆けて無料産院事業を実施し、孤立し経済的に困窮する妊婦に必要な支援を届けてきたわたしたちは、政策提言の場では、「健診・出産の公的支援の拡充」を訴えてきました。
中でも「特定妊婦の健診・出産無償化」については、無料産院での支援事例をもとに、これからも力を入れて訴えていきます。
23年3月、政府が発表した「こども・子育て政策の強化について(試案)~次元の異なる少子化対策の実現に向けて~」に、「出産費用の負担軽減」が盛り込まれました。
出産だけでなく、実際は、妊娠確定診断や健診費用の負担も大きいもの。とくに困難を抱えた特定妊婦に対しての経済的支援を厚くすることで、妊娠をきっかけに孤立に追い込まれる状況が無くなり、誰もが安心して出産できる社会に近づくと考えています。
これからしていくこと
にんしん相談ではAIをさらに活用し、予期せぬ妊娠をした妊婦が孤立しないよう、24時間365日相談可能な体制を整えます。また、無料産院事業の実績をもとに、課題を抱えた妊婦が負担なく健診や出産ができるよう政策提言し、赤ちゃん遺棄に進む手前で医療と支援につながれるセーフティネットを全国に張り巡らせます。
また現在分断している、児童相談所と養子縁組あっせん団体との間に強いパートナーシップを築き、赤ちゃんの命を救う養子縁組を滑らかに行っていけるようにしていきたいと考えています。
無料産院事業で支援した親子
11件※
- 開業初年度(2023年度)の実績、無料産院事業を利用して提携病院で出産した件数
にんしん相談 相談員対応件数
4,504件※
- 事業開始から2024年3月時点までの合計数
エナガさん相談室につながった相談者数
11,070人※
- 事業開始から2024年3月時点までの合計数
古いあたりまえ
「妊娠したかも。誰にも相談できない。
どうにもできない」と孤立
新しいあたりまえ
「妊娠したかも」と思ったらいつでも相談。
医療や福祉とつながれる
こどもたちのために、
小さな変化を起こしませんか?