こどもと保護者、地域をつなぐ場づくり
みらいの保育園
「子育てがしんどくない日本」を叶えるとりくみ
Story ストーリー
小さな実践から、
保育の歴史と存在意義を
変える制度変革へ。
認可保育施設の「定員20人以上」という規定を取り払った、日本初の9人の保育園「おうち保育園」の実践が、小規模認可保育所の国策化へとつながりました。そしてすべてのこどもが保育園に通えるようにと広めた「みんなの保育園」構想は、「こども誰でも通園制度」として全国に広がりつつあります。
フローレンスの「みらいの保育園事業」は、まさに保育園の未来を生み出していくプロセスです。
事業をつくる
「20人の壁」を破った「おうち保育園」
小規模な保育園の必要性と「20人の壁」
無事に出産を乗り越え職場に復帰したくとも、こどもの預け先がなく保育園の空きの順番を待つしかない。「保育園に預けられず、育児休業から復帰できない」というフローレンスの若手社員の声をきっかけに、待機児童問題解消に向けた取り組みが始まりました。
当時、認可保育所をつくるには、施設に「定員20人以上」のキャパシティが必要でした。これが「20人の壁」です。しかし、20人以上のこどもを預かる保育園をつくる空き地は都内にほとんどありません。そこで、空き家となっているマンションや戸建てを活用した、「まるでおうちのような」小規模な保育園づくりに着手しました。
日本で初めて「定員9人」の保育園が誕生
「空き家を活用した小規模保育園をつくれば、待機児童問題を解決できるかもしれない」
この構想を実現するために厚生労働省に政策提言を行い、厚労省の試行的事業として、2010年に江東区に開園したのが「おうち保育園しののめ」です。
少人数制のメリットは大規模な施設が不要なことと、保育士がしっかりとこどもに寄り添った保育ができること。すぐに定員は充足し、おうち保育園には多くの政治家や官僚が視察に訪れ、のちの国策化へとつながっていきました。
しくみを変える
小規模認可保育所の国策化と「みんなの保育園」の実現
全国7,000箇所以上に拡大した小規模認可保育所
おうち保育園を視察した政治家の方や、当時の厚労省待機児童対策チームのリーダー・村木厚子氏の尽力もあり、おうち保育園のような定員20人未満の保育所を「小規模認可保育所」とすることが「子ども子育て支援法案(子ども子育て支援システム)」に記されることになりました。
同法案は国会を通過し、70年以上ぶりに認可保育所制度が大きく改革されました。「20人の壁」が取り払われることになったのです。
その後、小規模認可保育所は22年時点で7,000箇所を超えるまでに拡大。待機児童解消に大きく貢献しました。
さらに、仲間とともに立ち上げた「NPO法人全国小規模保育協議会」として提言を続けました。そして23年4月の制度改正により、当初0~2歳児のみが対象だった小規模認可保育所でも、3~5歳児の預かりが可能になりました。
働いていない保護者をもつこども「も」保育園へ
フローレンスに寄せられる子育て相談のなかには、児童虐待に関するものが少なからずありました。相談を通じて、児童虐待の背景に、ワンオペ育児や貧困、DVなどさまざまな要因があること、児童虐待のある家庭の保護者は働いておらず孤立しているケースが多くあることもわかりました。
保育園が保育を通じて保護者に寄り添い、子育ての負担を減らし親子をケアすることが、児童虐待の予防にもつながるのではないか。支援の手が届きにくい、保育園や幼稚園に通っていない「保護者が働いていない家庭のこども」も通園できるようにできないだろうか。そもそも、保育園はすべてのこどもたちに開かれているべきではないか。
そんな視点から、わたしたちは「みんなの保育園」構想を打ち出しました。
まず保育園や幼稚園に通っていない未就園児(無園児)家庭を社会に可視化すべく、この課題をメディアを通じて広く伝えながら、政府に直接政策提言を実施。これらの活動が、政府による「こども誰でも通園制度」の創設につながりました。
130年前に保育園が誕生してから揺らがなかった「保育園は働く保護者のこどもが通う」という原則が変わり、保育園がすべてのこどもに開かれることになったのです。
文化を生み出す
保育園の存在意義を見直し、地域づくりの拠点とする
「無園児」を世に広める取り組み
保育園や幼稚園に通っていないこどもとその保護者は、地域社会との接点が少なく孤立してしまうケースが少なくありません。そんな「無園児」親子がやがて孤立し、困った時にサポートが届きにくい「無縁児」「無援児」となるリスクをなくしていきたいと考えました。
そこで未就園児を「無園児」という造語で表し、社会問題としての関心を高めた「#無園児を無縁児にしない」キャンペーンの実施などを通して、「みんなの保育園」構想を広く世間に伝えていきました。
「保育園多機能化」の構想とアクション
過去の待機児童問題が解決しつつある今、保育園のあり方にも変化が必要です。
わたしたちは在園児の保育だけでなく、保育園が「こどもをまんなかにした地域づくり」のハブになっていくことが必要だと考えました。その軸として「保育園多機能化」を提唱し、自らも機能のひとつとして19年に「保育園こども食堂」を始めました。
しかし、当時は自治体が保育園の「目的外使用」と判断するケースが多く、多機能化の実現へのハードルが高い、という課題がありました。そこで、並行して国への政策提言を行いました。そして23年にこども家庭庁から、保育園でのこども食堂などの福祉活動を許可する通知が発出されます。これが後押しとなり、全国に活動が広がるようになりました。
現在フローレンスは、こども家庭庁「ひとり親家庭等の子どもの食事等支援事業」の中間支援団体として、保育園こども食堂への助成事業を行い、全国への広がりを支援しています。また、小中高生の職場体験「フローレンスのこどもインターン」や、プレパパたちの子育て支援実践研修「パパトレ」などさまざまな取り組みにチャレンジしながら、さらなる多機能化を進めています。
こどもたちが主役の「シチズンシップ保育」
探究型の保育を自社運営保育園で実践
変化の大きい社会のなかで力強く生きていくためには、「自ら考え、行動する力」を身につけることが重要です。フローレンスの保育園では、こどもたちが自分たちから参加し、みんなに貢献し、楽しむ心を持った社会の担い手として活躍していくことを願い、こどもが主体となったシチズンシップ保育を実践しています。
「こどもかいぎ」をきっかけに、シチズンシップ保育を積極的に発信
わたしたちはシチズンシップ保育の取り組みのひとつとして「サークルタイム」という、こどもたちが話し合う時間を大切にしてきました。
同様の取り組みは他の保育園で「こどもかいぎ」として実践されていましたが、その取り組みが映画化されることとなった際には、協賛・後援としてサポートを行いました。また、映画化と関連して出版された書籍『「こどもかいぎ」のトリセツ』(中央法規出版)には監修として参加。
現在も、全国の保育園でこどもかいぎが実践されるよう、メソッドの認知拡大に向け、発信を続けています。
これからしていくこと
保育園は、主に働く保護者のこどもが通う施設でした。「みんなの保育園」構想をさらに実現し、保育園は「すべてのこどもと保護者に寄り添い、彼らと地域をつなぐ」場所へと役割を広げていく活動を続けていきます。
そしてわたしたち自身も最良の事業者として、こどもをまんなかにしたさまざまな実践に取り組みながら、政策提言・文化醸成の両輪で、保育園をこどもと地域のウェルビーイングを生み出す存在に変えていきたいと考えています。
お預かりした「無園児」の人数
618人※
- 2022年の1年間のお預かり人数
古いあたりまえ
保育園は、働く保護者のこどもが通う福祉施設
新しいあたりまえ
保育園は、こどもと保護者に寄り添い、
彼らと地域を結びつける場所
こどもたちのために、
小さな変化を起こしませんか?