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eスポーツを特別支援学校のお子さんたちとやってみた!~インクルーシブ・テックに楽しく触れよう~

eスポーツを特別支援学校のお子さんたちとやってみた!~インクルーシブ・テックに楽しく触れよう~

#障害児・医療的ケア児家庭支援

「我が子ともう少しコミュニケーションがとれるようになりたい」

「この子が好きなものや考えていることをもう少し知りたい」

障害児を育てる親御さんや障害児支援に携わる方の中にはこのように思う方もいらっしゃると思います。

フローレンスは、2014年に障害児保育園ヘレンを開設して以来、障害児保育・家庭支援に10年ほど取り組んできました。お子さんたちと過ごす中でわたしたちがたびたび驚かされたのは、お子さんたちの可能性です。

入園時には経口で食べられなかったお子さんがお友達の様子を見て経口で食べることにチャレンジするようになったり、発語が多くなかったお子さんがお友達との交流を重ねる中で名前を覚えて呼びかけるようになったり・・・!

わたしたちの想像をはるかに越えてお子さんの可能性が花開く瞬間に何度も立ち会い、親御さんとともに喜び驚いてきました。

そういった中で最近お子さんたちともっとコミュニケーションをとっていくために活用していきたいと考えているのが、“インクルーシブ・テック”です。

東京都知事賞受賞作品

こちらのとても素敵な作品は、フローレンスの医療的ケアシッター ナンシーを利用中のお子さんがベッドの中から、わずかに動く指で入力できるデバイスを操作しパソコンで作成したものです。東京都知事賞を受賞しました。

医療的ケアシッター ナンシー利用者

このお子さんのように、わずかな力でも押しやすいスイッチやレバーなどの入力デバイスや、視線をマウスのように用いる視線入力などのテクノロジーを日常生活に取り入れることで、一見外から分かりにくいお子さんの思いやアイデアを表出するサポートになります
わたしたちは、その体験がお子さんの好きなことや得意なことを探すお手伝いにもなり、将来的には就労など社会参画につながる可能性もあると考えています。

このように障害による課題を乗り越え、誰もが参画できる「インクルーシブ社会」の実現をサポートするテクノロジーを、わたしたちは「インクルーシブ・テック」と呼んでいます。

しかし、その活用も楽しくなければ続きません。
そこで注目しているのが、ゲームでお友達と競争したり遊んだりする「eスポーツ」です!

eスポーツイメージ

お子さんの特性に合う入力デバイスを使ってeスポーツに取り組むことで、お子さんたちが「おもしろい!」「またやってみたい!」と楽しみながら、いつの間にか入力デバイスを使うことが当たり前になり、他にも応用できるようになることを目指しています。

わたしたちは、今年の夏に向けて、インクルーシブ・テックを使ってeスポーツやゲームアプリを楽しむ体験をいろいろなお子さんにお届けできるよう、準備を進めています。

学校の授業でゲーム!?自分好みの入力デバイスを探そう!

そんなわたしたちの思いに共感し一緒にやってみようと言ってくださったのが、横浜市立上菅田特別支援学校です。

上菅田特別支援学校は、全生徒に1人1台のタブレット機器が導入されており、市内でもICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)を積極的に活用している学校です。

2月の初めに、小学部5-6年生のお子さんの授業にテクノツール株式会社とともにお邪魔し、「eスポーツ体験会~いろんな入力デバイスを使ってゲームを楽しもう!~」を開催しました!テクノツール株式会社は、あらゆる人がゲームを楽しむためのコントローラー「Flex Controller(フレックス・コントローラー)」の開発監修・販売を行っている会社です。

eスポーツ体験会

お子さんたちは、いつもとは違う授業にドキドキしたような楽しそうなはにかんだ笑顔を見せてくれました。

この日は株式会社セガの「ぷよぷよeスポーツ」にチャレンジ!
初めてぷよぷよeスポーツで遊ぶお子さんも多かったので、設定画面でぷよぷよが落ちてくるスピードや、消えるぷよぷよの個数を調整しました。

ポイントになるのが、お子さんに合う入力デバイスのフィッティングです。
テクノツール株式会社 新規事業開発/理学療法士 中塚智恵氏より、『入力デバイスの種類』や『自分に合う入力デバイスの選び方のコツ』について学びながら、いろんな入力デバイスを実際に試していきました。

先生たちからも「こんなに種類あるんだね。こちらのほうが押しやすそう!」など声があがります。

入力デバイス1
手のひらやひじ、足の裏など、お子さんが動かせる体の部位を使って押せるようにするスイッチ。大人の手のひらほどの大きさから、指先で押せるサイズまで大きさも様々な種類があります。
入力デバイス2
指先を少し動かすだけで反応するスイッチ。強く押すものから軽く押せば反応するものまで幅広い種類があります。
入力デバイス3
握ったほうが使いやすいお子さんにはこのように指先用のスイッチをくっつけて使うことも可能です。
入力デバイス4
レバーの種類も複数あり、特性に合わせて選びやすいようになっています。

では、いよいよフィッティングタイムスタート!

先生と一緒にそれぞれそのお子さんが使いやすそうな入力デバイスを実際に手にとってみながらフィッティングしていきます。

入力デバイスのフィッティング1

例えばこちらの緑色のレバーは左右の動きのみに限定されたデバイスのため、手が意図しない方向にぶれやすい方にとっても上下にブレることがなく、コントロールしやすいものになっています。

入力デバイスのフィッティング2
入力デバイスのフィッティング3

こちらのスイッチはわずかな動きに反応します。

腕全体よりも指先を動かすのが得意なこちらのお子さんは、手を置きやすそうな位置にスイッチを固定。スイッチの置き場所を先生と探していきます。

視線入力装置

こちらは視線をマウスのように動かして操作する視線入力装置です。
お子さんは視線入力にトライしてみたのですが、周りの人が気になってしまったようなので、途中から手で押すスイッチも組み合わせて使いました。

このお子さんには「これが合いそう!」と思っていても、試してみて初めて何が合うか分かってきます。

お待ちかねのeスポーツ体験タイム!

さぁいよいよ、それぞれの入力デバイスを持ってゲームスタートです!

eスポーツ体験1

さぁやってみよう!

eスポーツ体験2

こちらのお子さんはお気に入りのレバーを見つけて、ずっと同じものを使って各ブースを回っていました。

eスポーツ体験3

実は、ぷよぷよを横にスライドする操作と回転させる操作を分けることもできます。
こちらのお子さんたちは、操作を先生と分担して二人で一人のプレイヤーとなり、ゲームにチャレンジしました。

それぞれの特性に合わせた入力デバイスを選んで楽しみ、あっという間の1時間。

体験の時間が終わり、「楽しかった人、またやりたい人~?」と声をかけると、皆さん手をあげたり、声をだしたり、それぞれの方法で体験会に対して前向きな気持ちを伝えてくれました!

eスポーツ体験4

体験会だけでなく、日々繰り返しながら親しむことが大切

上菅田特別支援学校のICTコーディネーターの奥出先生によると、体験会を始める前は「eスポーツは難しいかもしれない」と不安に思う先生もいたとのこと。でも、「やってみると思ったより簡単な操作で、こどもたちが想像以上に楽しんでいました!」と話してくれました。

楽しみ方はお子さんによって様々です。
例えばこちらのお子さんは、写真にある緑色のスイッチをとても気に入った様子で、ずっと手に持って各ブースを回っていました。

eスポーツ体験会の様子

一緒に入力デバイスを選んだ担当の先生は、

「意思表示がはっきりしているお子さんで、いらない時は物を置いて教えてくれるのですが、今日は一緒にフィッティングした入力デバイスをずっと持って触っていました。興味があるということだと思います。ゲームの画面の中で何が起こっているかを今日だけでは理解は難しいと思うのですが、まずは『何かいつもと違うぞ』『入力デバイスを触るとカチカチと音がするな』『テレビから音が聞こえる』『お友達も楽しそうにしている』と楽しんでいると思います」とお子さんの様子を話し、今後について、
「時間はかかるかもしれませんが、お子さんたちはこういった経験を重ねる中で、自分で入力したものと結果の因果関係を結びつけていきます。毎日10分でも良いので続けていくと、新しい可能性が開いていくのではないかと感じました」と振り返ってくださいました。

上菅田特別支援学校では、例えば入力デバイスを押すことで本人の代わりにタブレットから朝の挨拶の声を出すなど、普段の授業でもICT機器を積極的に活用して様々なことに取り組んでいますが、「eスポーツにはまた異なる魅力を感じた」とICTコーディネーターの奥出先生が話してくれました。

何よりもこどもたちが楽しそうでした。学ぶためにではなく、楽しく自然に入力デバイスに親しめます。しかもeスポーツは普段の授業でICT機器を使用する以上の操作が求められるのですが、新しい操作や新しいスイッチにも嫌がることなく自然と触れていました」と奥出先生。

「これからはゲームに親しんだ世代が親になってきます。ゲームが新しいコミュニケーションツールの一つになるのではないかと思います。ICT機器に自然と親しみ、お子さんとのコミュニケーションにもつながるものとして、eスポーツという選択肢の可能性を感じました」。

実際に上菅田特別支援学校では効果を感じた先生たちから、学級活動の時間で「eスポーツをやってみたい」という声が上がり、今後企画していくそうです!

わたしたちとしても体験会で終わりではなく、これを機に日々楽しみながら繰り返しチャレンジしてもらうことでインクルーシブ・テックに親しみを持ってもらい、eスポーツ以外にも応用してもらうことで、お子さんたちの新しい可能性につながっていくのではないかと考えています。

オラクルが体験会の取り組みをサポート

今回のフローレンスの取り組みに対し、日本オラクル株式会社がサポートしてくださっています。

日本オラクル株式会社ロゴ

今後、フローレンスでは、上菅田特別支援学校で行ったような体験会に加えて、子どもたち同士の交流や新しいインクルーシブ・テックとの出会いの場を作ることを目指しています。障害のあるお子さんが小さい頃からゲームなどの楽しい体験という形でテクノロジーと接する機会を積み重ねることで、周囲の人とコミュニケーションを豊かにとっていくきっかけづくりがしたいと考えています。


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