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HPVワクチンを医師が解説!都民の命を守る政策 東京都「HPVワクチン男性接種補助事業」勉強会を開催しました

HPVワクチンを医師が解説!都民の命を守る政策 東京都「HPVワクチン男性接種補助事業」勉強会を開催しました

#こどもと女性のためのクリニック #政策立案・政策提言

HPVワクチンは「子宮頸がんワクチン」と呼ばれることもあり、一般的には女性のためのワクチンという認識の方がまだまだ多いのではないでしょうか。

ヒトパピローマウイルス(HPV)は女性の子宮頸がんのみならず、男女ともにかかる尖圭コンジローマや肛門がん、男性に多い中咽頭癌や陰茎がんの原因となることがわかってきています。海外では男性への定期接種を行う国もあります。日本国内でも少しずつその有効性が知られるようになりましたが、自費の接種となり価格が1回あたり2万円弱(全3回で計約5~6万円)と高額であることと、またその必要性が十分に認識されていないこともあり、男性への接種は進んでいません。

そのような中で、東京都の令和6年度(2024年度)予算案に「HPVワクチン男性接種補助事業」が入りました!

これは、東京都内に住む小学6年生から高校1年生相当までの男性向けに、任意接種費用の1/2を区市町村を通じて都が補助する事業です。

新  HPVワクチン男性接種補助事業【保医】 ⑥4億円(新規)
HPV (ヒトパピローマウイルス)ワクチンの任意予防接種に係る費用を区市町村を通じて補助することで、個人負担を軽減
・定期接種対象者が男性に拡大されるまでの措置として、予防接種の自己負担を補助する区市町村を支援
[接種対象]小学6年生から高校1年生相当までの男子
[補助率] 1/2 [接種規模] 約14,000人
HPVワクチンの定期接種化に向けた流れを牽引
※「令和6年度(2024年度)東京都予算案の概要」東京都(令和6年1月)
https://www.zaimu.metro.tokyo.lg.jp/syukei1/zaisei/20240126_reiwa6nendo_tokyotoyosanangaiyou/6yosanangaiyou.pdf
事業の詳細は東京都保健医療局より、後日各区市町村担当者へ説明予定。

しかし、公費(自己負担なし)で接種を受けるには「各区市町村での導入」というラストワンマイルが必要になります。

この事業が1つでも多くの区市町村で導入されるよう、フローレンスグループは区市町村議会議員・区市町村担当課を対象とした勉強会を開催しました。

勉強会では、HPVワクチンや子宮頸がん予防の啓発を先駆的に進められてきた、一般社団法人HPVについての情報を広く発信する会(みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト)代表理事の稲葉可奈子医師から「HPVワクチン接種の意義」を解説いただきました。

また、フローレンスグループのフローレンスこどもと心クリニック田中院長から「HPVワクチンを接種された男性当事者・保護者の声」を紹介しました。

「医師が解説!命を守る政策をあなたの街で」をテーマに開催した、東京都「HPVワクチン男性接種補助事業」勉強会の内容をご紹介します!


サマリー

・令和6年度から、東京都にて補助事業開始。各自治体での導入が必要です

・HPVワクチンによって男性もがんを予防できる。安全性は多くの研究で確かめられています

・一番の課題は「費用が高い」。接種した本人は「不安はない」

講演①:HPVワクチン接種の意義(有効性と安全性)

稲葉 可奈子医師(みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト 代表理事)

感染が原因のがん
「HPVワクチン」によって予防できるがん

「がん」は歳を重ねるといずれは関わるかもしれないもの、といったイメージがありますが、実はその中で「予防できるがん」があります。

それは、喫煙・飲酒などの生活習慣が原因のがんと、感染症が原因のがんです。

感染症が原因のがんの中の一つが、HPVによるものです。HPVが原因となるのは、女性の子宮頸がんが多く知られていますが、他にも陰茎がん、肛門がん、中咽頭がんなども引き起こします。

男女ともに、「HPVワクチン」によってウイルス感染を防ぐことが、がん予防に直結するのです。

ワクチンの安全性

多くの方が、ワクチンの安全性について気になってるのではないでしょうか。その前に、「有害事象」と「副反応」の違いを整理することが大切です。

ワクチンを含む何らかの医薬品を接種・服用した後に起こるあらゆる好ましくないことが「有害事象」です。例えば、接種後の帰り道に石に転んでケガをしました。これも有害事象にあたります。

こうした有害事象の中で、その医薬品との因果関係があるものが「副反応」になります。世界中で様々な研究が行われていますが、HPVワクチンを接種した人と接種していない人での症状の発生頻度に差は認められておらず、有害事象とHPVワクチンとの因果関係は証明されていません。日本でも名古屋市で大規模な調査が行われた結果、「接種後の症状には関連がない」ことが確かめられました

※Papillomavirus Research「名古屋スタディ」(2018年)

接種後の症状とは因果関係はなし
男性自身の病気の予防につながる「HPVワクチン」

では、なぜ女性だけでなく、男性にもHPVワクチンが必要なのでしょうか。

やはり男性にとって一番のメリットは、男性自身の病気の予防につながることです。中咽頭がんや肛門がんの7~9割が、HPVの感染が原因です。これらのがんや、尖圭コンジローマといった性感染症も予防することができます。

また、HPVは主に性交渉で感染し、約8割の人が一生に一度は感染すると言われています。パートナー同士がお互いにうつしあうこともある、ごくありふれたウイルスなのです。だからこそ、HPVワクチンを接種する人が男女ともに増えていくと、その感染率自体が下がっていく集団免疫効果があります。

HPVワクチンにより男性自身が感染しなければその後のパートナーにうつすこともなくなるため、将来のパートナーを守るという側面もありますが、まずは、男性が自分自身の病気から守るために接種すると思っていただければと思います。

子宮頸がんは撲滅できるがん

子宮頸がんは、撲滅できるがんです。男女ともに高い接種率を達成しているオーストラリアでは「2028年には子宮頸がんが撲滅するだろう」と言われています。

日本でも、女性を対象にした定期接種・キャッチアップ接種が行われていますが、まだまだ接種率が低いというのが現状です。女性の接種率がまだまだ低いからこそ、接種したい男性が接種できるようにサポートすることが大切なのです。

講演②:HPVワクチンを接種された男性当事者・保護者の声

田中 純子医師(医療法人社団マーガレット フローレンスこどもと心クリニック 院長)

初回無料キャンペーンのイメージ
HPVワクチン接種初回無料キャンペーンを実施しました

2023年1月から3月、男性へのHPVワクチン接種初回無料キャンペーン『男の子にもHPVワクチンを!』を、みんパピ!・フローレンス・フローレンスこどもと心クリニックと3団体で実施しました。9~18歳の男性に初回のHPVワクチンを無料接種する取り組みです。

(詳しくは記事後方にて説明)

キャンペーンを企画した背景には、2020年に男性への4価ワクチンが承認されましたが、接種者がほとんど増えていないという状況の中、「この現状を解決したい」という想いがありました。男性への接種が増えない理由は、男性にも有効なワクチンであることがほとんど知られていないことや、ワクチンの安全性への心配があると考えられます。

また、接種したいと思っている方がいても、自費で合計5~6万円の負担となります。こどもの学費など、これから多くの教育費がかかってくる時期に接種できる余裕のある家庭というのはごく少ないため、男性への接種がほとんど進んでいませんでした。

2022年は一部自治体では助成が開始されるなど、わずかな希望が見えていましたが、まだまだ普及までは遠い時期でした。そこで、わたしたちのクリニックにて費用面で接種が困難な男性に接種機会を提供し、男性のHPVワクチン接種について広く知ってもらうためにキャンペーンを実施しました。

募集枠に対して2倍以上の応募

最初は「もしかしたら誰も希望しないかもしれない」とこわごわとした気持ちで告知を行ったところ、予想に反して、非常に多くの反響をいただきました。申込募集の開始からわずか1日で枠が埋まり、最終的には募集枠に対して2倍以上となる140名の方からの応募がありました。

わたしたちが恐れていたような批判的な声は、応募したご家庭やSNS上で聞こえるということもありませんでした。

今回、実施したのはごく限られた人数ではありますが、接種時~接種後に体調不良を訴えられた方はいらっしゃいませんでした。複数人の方が、2回目・3回目の接種にクリニック来院し、接種を完了されています。

接種に来られた方のコメント

実際に接種に来られた保護者のコメントと、接種された当事者のコメントの一部を紹介します。

保護者のコメント
接種児のコメント
医療格差の是正にむけて

ワクチンは非常に高額なため、これを公費化することによって医療格差が是正されます。お金の格差が健康の格差につながる、ということを防ぐことができます。

また、女性の子宮頸がんは毎年1万人が罹患し、約3,000人の方が亡くなっています※。それだけでなく、出産を諦めるなど、長年苦しむという方もいらっしゃいます。子育て世代の方の苦しみはこどもたちや家族に広がるため、HPVワクチンを通じて感染を予防することは、家族の健康につながるのです。

※国立研究開発法人国立がん研究センター「がん情報サービス」より、子宮頸部のがんによる死亡数:2,887人(2020年)


フローレンスのこれまでの取り組み

フローレンスは、グループ法人であるフローレンスこどもと心クリニック(旧名称:マーガレットこどもクリニック)、および、みんパピ!とともに、男女問わずHPVワクチンを接種することの必要性を訴えるためのアクション『男の子にもHPVワクチンを!』として、2023年1月から3月にかけて、9~18歳の男性にHPVワクチンの無料接種を提供しました。

わたしたちは、クリニックでの接種を通して無料接種を申し込まれた方や、その保護者の方の声に耳を傾けてきました。

また、フローレンスが実施したアンケート調査(集計期間:2023年2月17日~24日)では、男性へのHPVワクチン接種が「必要」と答えた方は8割以上にのぼります。また、男性への接種で感じる主なハードルは、「費用(5~6万)が自己負担である」と自費接種であることがボトルネックになっています。

以上のアンケートの結果から、HPVワクチンの効果や男性への必要性を理解しているものの、「費用が負担に感じている」層が多く見られました。

HPVワクチンへのアンケート

社会全体でHPVによって引き起こされるがんを予防し、接種を希望する家庭の経済的負担を軽減するために、男性のHPVワクチン「公費接種化」に向けて政策提言活動を行ってきました。

2023年9月には「都議会HPVワクチン勉強会」が開かれ、フローレンスの他、みんパピ!などHPVワクチンの啓発活動に取り組む各団体とともに出席し、公費接種化の必要性を訴えました。

勉強会の様子

フローレンスは事業を通じて一般の声を拾いながら社会課題解決に取り組んでいますが、わたしたち民間の立場だけでは、社会を変えることができません。

今回の勉強会に参加してくださった議員の方など、市民のために政策を検討する皆さんが手を取り合うことで「新しいあたりまえ」をつくることができます。

今後、東京都内で一つでも多くの区市町村にて男性の公費接種化が実現すれば、他の地方自治体、そして全国に広がります。

全国に男性向けHPVワクチンの公費接種化の波を、広げていきましょう!

【議員の皆さん・自治体担当者の皆さんへ】各自治体での導入にご協力をお願いします!

勉強会を開催する中で、いくつかの自治体で「来年度の予算案に入ったよ」という声もいただきました。

その他の自治体で検討いただくにあたって、まずは、各区市町議員の皆さんから各議会で「導入しようよ」と質問していただくことが、第一歩になります。

男性のHPVワクチンの接種は男性自身の様々ながんの予防効果に加え、大切なパートナーへのHPV感染を防ぎます。子宮頸がんや中咽頭がんなど、HPVが原因となるのは「防げるがん」です。

ともに「みんなの命を守る政策」である男性のHPVワクチン接種公費化を実現し、命を落とす人を一人でも減らすために、区市町村の議員の皆さん、担当課の皆さんの力で、東京都「HPVワクチン男性接種補助事業」の各自治体での導入をお願いします!


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