共働きの夫婦にとって、養子を迎えるのに大きなハードルがあったことをご存知でしょうか?
特別養子縁組制度では、法律上の親子関係が認められるまでに、最低でも6ヶ月間の試験養育期間があります。これは子どもの委託を受けたあと最低でも6ヶ月間、子どもを育てることです。法律上の親子関係となるには試験養育期間を経てさらに家庭裁判所の判断が必要になります。
多くの養子縁組団体がこの試験養育期間は「育児に専念すること」としています。フローレンスの赤ちゃん縁組でも、育ての親へ求める条件の一つに「子どもを迎えた後一定期間育児に専念できること」を掲げています。
育休が取れなかった試験養育期間
なぜこの条件を設けているかというと、通常の出産・子育てと同じく乳児のお世話が必要なことがありますが、養子縁組では妊娠期間がない状態でいわば急に赤ちゃんを迎え、慣れない赤ちゃんのお世話をしながら、さらに家庭裁判所の審判の手続きを進める必要があります。
この審判は、生みの親の最終的な意思確認や母子の状況、また、育ての親の側も養育能力があるかどうか家庭調査や聞き取りなどが行われ、特別養子縁組が適切か法的な判断される非常に重要な期間です。
あらゆる意味でめまぐるしい、赤ちゃんを迎えた直後からしばらくは、家族一丸となって赤ちゃんと「家族になっていく」時間をしっかりと確保してほしいと考えています。
問題なのはその最低6ヶ月程度の試験養育期間のあいだは、まだ法律上の親子関係ではないので、育児・介護休業法での「育児休業」が取れなかったことです。そのため共働き夫婦は、赤ちゃんを迎えるときにどちらかが一度仕事を辞めて専業主婦(夫)となるか、特別養子縁組自体を諦めざるを得ないことが多くありました。
これまでは共働き夫婦が育ての親になることがあまり想定されていなかったと言えます。
しかし共働きがあたりまえの時代となり、特別養子縁組で子どもを迎えて、子育てと仕事も両立したいと考える夫婦も多くなってきました。
2017年1月から試験養育期間も育児休業の対象に
平成29年1月1日からの「改正育児・介護休業法」施行により特別養子縁組が成立するまでの試験養育期間も育児休業の対象となり、共働き夫婦でも養子を迎えやすくなりました。
実はフローレンスでもこの改正に先駆けて、平成27年5月に就業規則の改正を行い、
里親や特別養子縁組の試験養育期間でも育休取得が可能にしています。
https://florence.or.jp/news/2015/08/blog1379/
仕事を諦めずに特別養子縁組で子どもを迎える大事なポイント
委託になったら夫婦のどちらが主たる育児者となるのか決めておくことはもちろん、一定の段階になったら、
職場など周囲へ養子縁組を考えていることを伝え、協力・理解を得ておくことです。
育ての親登録者として待機に入ったあと、赤ちゃんの誕生があった場合には、出産後に生みの親に意思を最終確認してから、
もっとも適切な育ての親とマッチングし、育ての親候補の方に連絡を入れます。
連絡から、赤ちゃんのお迎えまでわずか2,3日ということも少なくありません。
当然、その後は子育てが続いていきますので、育ての夫婦が共働きの場合、夫婦どちらかが「急に長期の休みに入る(=育休)」ことが必須になります。
しかし実際問題、仕事をしていると、急に抜けられるというのは、職場に負担がかかってしまうことです。
そのため、審査の後半の段階になったら、あらかじめ、職場の上司や同僚など周囲の人に相談して理解を得ておくことが望ましいです。
特別養子縁組を考えていることを伝え、待機期間に入ったら、赤ちゃんの委託の連絡があれば2,3日で長期の休みに入ってしまうことを想定し、業務の後任や、引き継ぎはどうするかなども相談・調整しておく必要があります。
落ち着いたあとに職場復帰を希望するならなおのこと、自分が突然抜けることで周囲が極力困らないよう、
周りも準備ができるよう、前もってコミュニケーションを取っておくことが大切です。
赤ちゃんとの生活が落ち着いた後、保育園などに入園し、子育てと仕事を両立していくことは不可能なことではありません。
実子であっても養子であっても、子育てには職場の理解と協力が不可欠
いまはまだまだ一般的に知られているとは言えない特別養子縁組ですが、新たに子どもを迎えるときは、実子であっても養子であっても、職場の理解と協力が不可欠です。
この法改正が後押しとなり、特別養子縁組で子どもを迎え、育休を取得し、復帰して働き続ける人があたりまえにいる、そんな社会になっていくことを願います。
そういった意味でも、特別養子縁組で子どもを迎えた人が子育てと仕事を両立していくことは、社会の変化の芽になりうるのではないかと感じています。
多様な家族のありかたが包含された今回の改正。
私たちフローレンスも、特別養子縁組がひとつの幸せな家族の形として、社会に拡がっていけるよう、
引き続き取り組んで行きます。応援よろしくお願いいたします!
【関連リンク】
**改正育児・介護休業法のポイント 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/32_03.pdf
*育ての親になりたい方へ
・子どもを迎えたいと希望するご夫婦は、まずは知ることから、進めてみてください。
先日発売された、「産まなくても、育てられます」(後藤絵里さん・著)を読んでみるのもお勧めです。
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http://engumi.florence.or.jp/requirement