投資資金を得ていく
前回、損益分岐後は、事業を成長させるために投資をしていこうと述べた。
しかし投資をするには元手がいる。とはいえ、損益分岐し、目標の利益率を達成したとはいえ、突如として手元資金が増えるわけではない。なかなか投資するまでに至らない場合もあるだろう。けれど、ある程度手元資金が貯まるまでに時間をかけすぎてしまうと、適切な投資機会を逸してしまい(例えば情報システムを入れないまま業務が拡大し、担当者がパンクする等)、それはそれで組織にダメージを与えてしまう。
そのため、手元資金を利益で積み上げながら、投資するためのお金を別につくる必要がある。そのための手段として、まず手軽に考えられるのが、最初の資金集めの際に活用した「助成金」や「クラウドファンディング」である。
数字とエピソードでこれまでの実績をアピールする
こうした手法でお金を集めるコツは、以前紹介した方法と基本的には変わらない
助成金であれば、お金を提供してくれる財団や企業のニーズにきちんと応えるかたちで申請書を書くこと。クラウドファンディングであれば、見る人に共感してもらえるように、こちらの「思い」をしっかりと伝えること。
さらに、今回のアピールポイントとして忘れてはいけないのが、これまでの「実績」。初期とは異なり、既に現場を持ち、様々な社会的成果を出している。それを伝えない手はない。たとえば、このビジネスモデルでどれくらいの人たちを手助けしてきたのか。利用者や受益者の方々からどのように喜ばれているのか――。
そうしたことを、数字や具体的なエピソードを交えて紹介していく。
そのうえで、「いまの事業をさらに広げていければ、もっとたくさんの人のお手伝いができる」と訴えていく。
日本の助成財団は「かわいそうなNPO」が好き
とはいえ、日本の助成金の多くに、「モデルが機能したから、それを大きく広げて、より多くの人を助けたい」というロジックが通じないことがある。彼らは、自分たちの仕事を「お金がなくて困っているNPOを助けること」と定義している節がある。
だから、「こんなに我々は困っている」とアピールすることで助成金が取れてしまう。こうした財団は、自分たちは良いことをしているつもりだが、NPOを助成金依存にさせるという意味で、むしろ社会問題を増やしている。
一方で、「本当に社会問題を解決するモデルにお金を出したい」と思っている財団も一定数ある。そうしたところに応募していくことをお勧めしたい。その区別はどうやってするのか。
それは過去、その財団がどんな団体、企画に助成したのか、実績を見ることだ。成果を出しているNPOや企画が並んでいたら、応募する価値がある。ほとんど聞いたことがない団体が並び、内容も地域のイベントやちょっとした講演会等に助成しまくっていたら、助成基準はスケールアップには合わないだろう。
銀行からの融資という選択肢
とはいえ、助成金は応募から申請、結果が出るまで半年近くかかる。クラウドファンディングも100万~300万くらいの小規模な資金を調達するには良いが、それ以上となると集めづらい。
よって、銀行からの融資を仰ぐ、と言う選択肢がでてくる。NPOに銀行が金を貸してくれる? そんな馬鹿な、と思うかもしれない。確かに、僕が社会事業を立ち上げた2003年辺りだと、当時の国民金融公庫の担当者の人に「NPOってなんですか?」と言われ、一から説明しなくてはならなかったくらいだった。
しかし、今や状況は変わっている。西武信用金庫などの信用金庫ではNPO/ソーシャルビジネス向け低利子融資を行っているし、日本政策金融公庫などの政策系金融でも普通に借りられるようになっている。また、事業として回っていれば、メガバンクの営業の人も来てくれるようになる。「NPOだから銀行からは借りられない」は、黒字経営をしているならば、もはや神話なのである。
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