組織が成長すれば、おのずと人材の顔ぶれも代わる
ソーシャルビジネスやNPOにおいて、立ち上げ当初というのは、「個人to個人」で動いていく傾向が強い。
言ってみれば多くの場合、「友人感覚」のやりとりで物事が進んでいくものである。
ところが、徐々に組織が大きくなっていくと、そうもいかなくなる。どんなに小さいことでも、組織として手順を踏むことが求められるようになる。
そのとき、初期メンバーのなかには、窮屈さを感じて、「めざしている方向と違う……」と組織を去る人も出てくるだろう。こうしたことは、組織が成長していけば当然、起こりうることだと僕は考えている。シビアではあるが、経営者目線で考えると、組織というものは、成長ステージごとに必要とされる人材が代わっていくと言わざるをえない。
だから僕は、組織の規模が変われば、それにともなってメンバーの顔ぶれも少しずつ代わっていくのは、ある程度やむを得ないことだと、それを受け入れるようにしている。悲しく、寂しいことなのだけれど。
組織を去ったら「関係は終わり」ではない
ただし、僕が大切にしているのが、去っていくメンバーをなるべく温かく送り出してあげ、人としてつながり続けること。
仕事における方向性が違ってきたからといって、友人としての関係まで壊す必要はない。それはそれ、これはこれ。ケンカ別れする必要なんてないし、「辞めたヤツは裏切り者」なんていうのもおかしな話だ。
それに、去っていったメンバーたちが、その後、また違うかたちでかかわってくることもよくある。
たとえば、フローレンスでいえば、かつて副代表だったメンバーが現在は理事という社外取締役的な存在になり、外部の立場からさまざまにサポートしてくれている。また、辞めていったスタッフのなかには、フリーの立場で調査の委託を引き受けてくれたり、なかには、「フローレンスのよさに気づいた……」と出戻ってくれたりする人もいる。
人生なんてものは、じつのところボクシングみたいなもので、何ラウンドもあって、いまのラウンドではいっしょに行動していなくても、どこかのラウンドでまた一緒になることはけっこうある。
そんなつながりを大切にするためにも、メンバーの新しい門出に際しては、温かく送り出す。友人としては「これからもずっと仲良くしていこう」という方が人間的だし、しかも事業的にも合理的だったりもするのだ。
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