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明日から使える!今年の夏は絶対もらわない・広げない!感染症対策のプロになろう~実践編~【6月保育塾】

明日から使える!今年の夏は絶対もらわない・広げない!感染症対策のプロになろう~実践編~【6月保育塾】

 


いよいよ暑さ本番となってきました。暑さで免疫力が下がるこの時期は、夏に流行する感染症が心配になりますね。

夏に流行する感染症として代表的なのは、手足口病やヘルパンギーナ、プール熱などが挙げられます。
名前は知っていても、詳しい症状や対処まではちゃんと知らないという方が多いのではないでしょうか?

そこで、6月の保育塾は「明日から使える!今年の夏は絶対もらわない・広げない!感染症対策のプロになろう~実践編~」をテーマに開催しました。

※保育塾とは、フローレンスの全ての現場スタッフに向けた自主参加型の研修のこと。
現場スタッフの「知りたい!」「学びたい!」に応えられるように、毎月違うテーマで研修を行っています。

講師は、 一般社団法人日本病児保育協会(JaSCA)で認定病児保育スペシャリストの資格を取得するための支援を担当している、田中あけ美さん。

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日頃から病児保育に携わる田中さんだからこその感染症対策を、今年の傾向や最新情報を踏まえながら学ぶことができました。

 


 
感染症対策について、「保育者として学ぶ」必要性は?

なぜ感染症について学ぶ必要があると思いますか?
という田中さんの質問に、参加者は考えます。

保育者が行う感染症対策の目的は、自分自身が感染症に罹らないことや、自分の菌が感染源となって周りの人へ移さないことだけではありません

集団保育の現場では、免疫力の低い子ども同士の感染を防がなければなりません
また、一対一保育の場合でも、兄弟への感染を防ぐ ことは重要です。


感染症対策の知識がない子どもたちに対し、正しい手洗いうがいについて伝える、保護者へ予防接種の確認や、園での流行・お家での感染予防について伝えるなど、保健教育を行う役割もあります。


保育者は、自分自身が罹らないようにするだけでなく、子どもたち同士の「うつる」「広がる」を防ぎ、子どもたちや保護者へ、感染症対策について伝えていく立場なのです。
だからこそ知識として覚えるだけではなく、感染予防がどのような根拠に基づいているか理解し、適切な対応をとる必要があります。

 


夏かぜトリオ「手足口病」「ヘルパンギーナ」「咽頭結膜熱(プール熱)」
理解するには「なぜ?」を追求すること

当日は、まだ入社したてのスタッフも多かったため、夏の感染症として有名な「手足口病」「ヘルパンギーナ」「咽頭結膜熱(プール熱)」の特徴、感染経路、予防法が紹介されました。

田中さんは「理解することが大事」と伝え、講義では「~は~なんです」とただ知識を伝えるのではなく、「なぜそうなのか?」まで、参加者と一緒に考えます。

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例えば、「手足口病は2年に一度大流行する」。
毎年、夏になると流行る手足口病ですが、グラフをみても分かるように、近年、2年に一度、大流行していることが読み取れます。

なぜ、2年に一度なのか?
これは、大流行の年に流行る病原体となるウイルスが、通常のウイルスと違っているためです。大流行の年とそうでない年を比べると、症状が異なっています。

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コクサッキーウイルスA6原因の手足口病では、大きめな発疹がでたり、爪がはがれたりすることもあります。発疹の様子から水痘(水疱瘡)と見分けが難しいケースもあるので注意が必要です。

手足口病は子どもの病気と認識されがちですが、新たな原因ウイルスが出現し、大人でも重症化する事例がでてきているため、保育の時に感染対策が必要です。

「なぜそうなるのか」を考えることで、流行のメカニズムを知り、ある程度事前に準備することができます。

今年4月に厚生労働省が『保育所における感染症対策ガイドライン』を6年ぶりに改定しました。

ネットで検索する情報の中には古い情報も多くあり、検索で上位にあるといっても必ずしも正しいとは限りません。病気に関わる情報は日々アップデートされています。何が正しい情報かを自分で取捨選択し、信頼のできる情報源から情報収集することが大切であると感じました。

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子どもの安全 VS 完璧な感染対策 忙しい保育中のベストな感染症対策とは?


一般的に、感染する条件として、「病原体」「感染経路」「個体の条件」の3つが揃った時に起こると言われています。

病原体をもらわないことは難しいですが、消毒や隔離、洗浄によって、病原体を死滅させ、感染を防ぐことは可能です。

感染経路は、飛沫感染、接触感染、空気感染、血液感染(※マラリアへの対処のため、改定された『保育所におおける感染症対策ガイドライン』に血液感染も追記されました)といったようにいくつかありますが、いずれも手洗い・うがい、マスクやビニール手袋の着用など、感染経路を断つためにできることはたくさんあります。

とくに、手指は、接触感染、飛沫感染のもとになり、人に病気を引き起こす頻度がもっとも高いため、手洗いは感染症予防の基本です。こまめに手指消毒をすることは、感染症にかからないためにとても大切な行為です。


しかし、そうはいっても、日々の保育中だと、どうしてもお子さんから目を離せない瞬間がありますよね。

目の前のお子さんの安全と、2次感染を防ぐためにすぐに消毒をすることは、どちらも重要なため、自分以外の保育者を頼りながら、その都度判断しなければなりません。

嘔吐物が付着したなど、汚染が明らかで、保育環境を他の保育者に任せられる場合は、手洗いで除菌することが必要です。しかし、どうしても目が話せず、菌が付着したのか明らかでない場合に、より手軽にできる対策として、「アルコール消毒」があります。


アルコール消毒の注意点は以下の通りです。

・手洗いができない、手荒れがひどいとき(今は保湿成分配合されて改善されている)に使用
・濡れた手にアルコールを付けると、濃度が薄まるため、乾燥した手で使用
・指先からよく擦り込むように揉み込む


アルコール消毒剤には洗浄効果はないため、菌の付着が明らかな場合は、きちんと手洗いで洗浄することが必要です。
しかし、石けん手洗いと、アルコール手指消毒剤との30秒間の手指消毒効果を比較したところ、石けん手洗いでは、手に付着している菌が1/63~1/630まで減少しているのに対し、アルコール手指消毒剤では1/3000にまで減少したという報告があります。

病院でポンプの付いた速乾式消毒剤を見かけると思いますが、これがアルコール手指消毒剤です。
医療従事者にとって、忙しい中、わざわざ流し場へ行って手洗いをするより、アルコール手指消毒剤を使用する方が簡便で、確実で、実行性が高いと言われています。

また、自分自身が感染症にかからないためには、「個体の条件」、つまり、自身の免疫を上げることも大切です。
同じ環境にいたのに、感染症にかかる人とかからない人がいるのは「個体の条件」が影響しているためです。

もともと免疫力が低い人がかかりやすいのはもちろんですが、健康的な生活ができていないと免疫力が落ち、病気に感染するリスクが高くなります。

充分な睡眠や旬の野菜を使ったバランスのよい食事、土日にリフレッシュしたり、お笑いを観たりなど、自分のリラックス環境をみつけ、ストレスを貯めず、免疫力を上げる工夫が大切です。

 
習うより慣れろ!知識を学んだら、まずは実践!

新しい知識を学んでも、それを実際に使う機会がなければ、自分のものにはなりません。
実際やってみると上手くいかなかったり、お手本と現場の状況が違うことも多いので、自分で改良してみたり、他の人の経験を参考にすることで、スキルを上げていくことができます。

当日は、「下痢のお子さんのオムツ替え」を想定して、どうしたら感染を防ぐオムツ替えができるか、参加者同士で実践しながら、意見交換をしました。

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実際にやってみると、

・すぐ使えるように、使うものは近くに用意しておいたり、菌のついた手でなるべく触らないようにするために事前にウエットティッシュを取り出しておくなど、始める前の環境づくりが大切

・とくにノロウイルスやロタウイルスはすぐに封をしないと蒸発し、空気感染するため、ビニール袋の封はすぐに結ぶことが大切
など、気をつけるべきことが分かりました。

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また、

・事前に二重手袋をしておくことで、菌に触れたビニール手袋を捨てた後、新しい手袋に付け替える手間を省く

・手袋は手首の上の方まで引き上げないと間に汚物が入ってしまうこともある


など、これまで経験してきたオムツ替えのコツを、参加者同士で交換することもできました。

 
最後に

オムツ替えの実践では、知識では分かっていても、実践するとなると難しい、ということを身をもって痛感しました。

参加者のなかには「汚物を入れた袋を一回一回締めてると、その間に子どもが動いてしまうんじゃない?」という実践したからこそ気づけた疑問がうまれます。
「袋の口をくしゃくしゃと閉じるだけでも、一次的に封ができるよ」、「一次的なら輪ゴムで止めるやり方もいいよ」と、周囲の人からのアドバイスもあり、みんなでどういう感染症対策が必要なのか考えることができました。


感染症について知識を学ぶことで、何に気をつければいいのか、どう対策を取ればいいのか、考えることができます。
そして実際に、感染症対策の実践をした際にうまくいかなかったとしても、振り返って工夫したり、他の人の工夫を聞くことで感染症に罹ることを防げるようになります。
今回の講義では、実践を重視したことで、より参加者の学びが深まったように思いました。
学び、考え、行動し、改良する、を日頃の保育でも意識していけると良いですね。

7月の保育塾は、オープン保育塾と称し、一般の方へ公開しました!

テーマは「プロフェッショナル 保育の流儀 第1回:少人数保育のパイオニアが語る保育指針改定で大切だと思うこと!」。開催報告の記事は後日公開いたします。どうぞお楽しみに!


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