フローレンスの赤ちゃん縁組事業部に所属する市倉加寿代が始めた、多胎児家庭の育児に必要なサポートを調査・政策提言するというソーシャルアクション。
9月より多胎育児家庭を対象にしたアンケートを取り始め、これまでに数々のアクションを起こし、フローレンスも多胎育児家庭が孤立し、子育てに困難を抱える状況を変えるため、団体として市倉と共に社会に発信してきました。
そしてその声が国まで届き、
『一定条件のもとなら、双子ベビーカーを折りたたまないでバス乗車OKとする』
という正式な見解を出しました!!
その様子を市倉加寿代のnoteより転載の形でお伝えいたします。
こんにちは、多胎育児のサポートを考える会の市倉です。
コロナの件で気分も暗くなりがちな中、昨日飛び込んで来た、ビッグニュース!!
乗合バス車内では二人乗りベビーカーを折りたたまずに使用できるよう取り扱うことを基本とします! ~乗合バスにおける二人乗りベビーカーの利用についてとりまとめ~
なんと、国土交通省が
『一定条件のもとなら、双子ベビーカーを折りたたまないでバス乗車OKとする』
という正式な見解を出しました!!
以下、HPからの引用です。
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国土交通省では、すべての子ども連れの方々にとって移動しやすい環境を実現するため、「子育てにやさしい移動に関する協議会」を、書面開催し、乗合バスにおける二人乗りベビーカーの利用についてのとりまとめを決定しました。
(中略)
二人乗りベビーカー使用者からは複数の乳幼児を抱えてベビーカーを折りたたむのは困難との声も上がっており、利便性の向上の観点から、今般、標準的な構造の二人乗りベビーカーについて、乗合バス車内におけるベビーカーの安全性を検証したうえで、学識経験者、子育て等関連団体、交通事業者等で構成する「子育てにやさしい移動に関する協議会」(座長:秋山中央大学研究開発機構教授)において、一定条件のもとで折りたたまずに使用できるよう取り扱うことを基本とすることをとりまとめました。
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この一報に私達は歓喜し、Twitterで報告したところ、大変たくさんの反響を頂きました。
キ、キ、キ、キター!!
— 市倉加寿代@多胎育児のサポートを考える会 (@KazuyoIchikura) March 31, 2020
『二人乗りベビーカーを折りたたまずに使用できるよう取り扱うことを基本とします』
国交省が今日発表した【乗合バスにおける二人乗りベビーカーの利用についてのとりまとめ】より。
やっと、やっとここまで来たよ!!あとは各社の対応を待つばかり涙https://t.co/s4vDaB7ytq pic.twitter.com/z94YIDSPsQ
双子ベビーカーユーザーの悲願だった「バスに乗る」ということ
昨年の秋に実施した「多胎児家庭の育児の困りごとに関するアンケート調査」に寄せられた回答でも、双子ベビーカーを折りたたまないと乗れない現状に、悲痛な声が多く寄せられてきました。
・乗車拒否されたことがある。畳むことを条件にされると、荷物と子供2人とベビーカー全部を抱えることができず、諦めてしまう。
・ベビーカーをたたむ間のこどもたちが心配でそもそもバスに乗る気になれない。
(※そもそもバスに乗ろうと思わない/思えない、という意見多数
「公共交通機関に乗車を断られる」。それにより、外出・移動が辛くなり、引きこもりがちになる家庭も、少なくありません。
私達はその声を受け、昨年秋より都に本件を訴えてきました
(東京都交通局への陳情の様子)
その後、東京のバス事業者を取りまとめている東京バス協会へ申し入れ。
一方、都議会では「双子ベビーカーをバスに載せてほしい」という質疑が繰り返されていました。
(12月10日(月)の都議会「代表質問」にて、公明党の高倉議員の質問の様子。詳しくはこちらの投稿をどうぞ)
そしてついに年末、小池知事への面会が叶い、当事者と一緒に直接「都バスに双子ベビーカーを載せて欲しい」というお願いをしたのでした。
この時小池知事は、
「折り畳まなくても都バスに乗れるよう、各所と調整して進めていく」
と明言。
その後、知事の言葉とおり、国交省の実証実験に敷地を提供するなど、東京都交通局はこの件を牽引し、リードしてきました。
【双子ベビーカーでバス乗れない問題】国土交通省と東京都交通局が実証実験&ルール整備に着手しています!
その結果が、昨日公表された国交省の発表だったのです。
当事者たちの声
この一報を聞いた当事者からは、
『本当に大きな一歩。涙が出た』(1歳双子の母)
『私も0才児双子を抱えていた当時、遠い保育園に送迎せねばならず、バス会社に「双子ベビーカー?無理ですね」と冷たくあしらわれた経験があります。本当に嬉しいです』(5歳双子の母)
『二人乗りベビーカーでバスに乗れるようになったら、世界が広がるだろうなぁ』(2歳双子の母)
という声が寄せられています。
一方で残る課題も・・・・
大変喜ばしいニュースではあるものの、手放しでは喜べません。
『いつ乗れるようになるのか』『快く乗れるのか』という問題が残っているからです。
課題①いつ乗れるようになるのか
いまは国交省が『標準的な構造の2人乗りベビーカーについて乗合バス車内で一定条件のもとで折りたたまずに使用できるよう取り扱うことを基本とする』という声明を出したに過ぎず、各社の運用になっていくのは次の段階。
国交省の今回の取りまとめでも、このような提言が記載されています。
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(1)当面の対応
①二人乗りベビーカー(横型)をバス車内で固定するために座席を跳ね上げる場合、現在設置されている固定ベルトでは短いため、固定ベルトを連接して1箇所を固定し、さらに車いすスペースに設置されている車いす用の補助ベルトなどを使用して、もう1箇所を固定する
(中略)
④二人乗りベビーカーを含むベビーカー使用者への対応について、バス事業
者の社内教育等を通じて運転者に周知する
⑤ベビーカーメーカーは、取扱説明書の内容の見直しを検討する
(2)今後検討すべき課題
・バス事業者及びバスメーカーは、座席を跳ね上げてもベビーカーを固定できる長さのベルトの仕様・導入を検討する。また、「フリースペース」の設置など車内レイアウトも検討する
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(国交省HP https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001337950.pdf より転載)
各社がこの条件をいかに早く整備できるかが課題。スピーディに取り組んでほしいと思います。
課題②快く乗れるのか
当事者たちが思っている不安。
それは、『いざ乗った時に白い目で見られるのでないか』ということだと思います。
今まで、多胎児家庭の親たちはあらゆる場面で『マイノリティ』てあることを痛感させられてきました。
通路が狭くてスーパーに入れない時。
あきらかに空車のタクシーに、乗車拒否をされた時。
行きたかったイベントの会場がエレベーターのないビルの3階だった時。
そんなことを繰り返していく中で萎縮し、やりたいことにチャレンジできない気持ちになっている家庭も、少なくありません。
今回の取りまとめによってバス業者が乗車ルールを改定しルール的に乗れるようになっても、乗ったバスの車内で、怪訝な顔をされたら、今度こそ気持ちがポキっと折れてしまいます。
誰もが気持ちよく乗れるはずの公共交通機関。みんなが少しずつ、お互いの事を思いやればいいはずです。
そのためには、何の制約もなく乗車できている私達の意識こそが変わらないといけないのではないでしょうか。
全国のバス事業者に伝えたいこと
”バスに乗ってどこかに出かけること”
そんな当たり前で普通の事を、今まで出来なかった親子が、日本中にいます。
全国のバス事業者のみなさん、お願いです。
一刻も早く、国交省の取りまとめを乗車ルールに取り入れて、多胎児家庭の苦しみをひとつ、取り除いて下さい。
各社の素早い対応を、願っています。
※本投稿は『バスでの外出』をお勧めしているものではありません。新型肺炎の感染拡大などの社会情勢が落ち着いたのちに、多胎児家庭の親子が気兼ねなくバスに乗って外出が出来、少しでも負担を軽減しながら楽しく育児できることを願っています。
※本件についての取材依頼は、お気軽にこちらよりお問い合わせください。