

ノーセーフティネットひとり親家庭とは
別居中・離婚前で、子どもと同居していながら児童手当をはじめとしたセーフティネットを剥奪され、精神的、経済的、社会的に追い詰められた状況にいるひとり親家庭です。 今回私たちは、様々な理由で別居中で離婚できず、かつ子どもと同居しているにも関わらず、子どもと同居している方の親に支払われるはずの児童手当を受け取ることができていない実質ひとり親家庭の課題を取り上げていきます。アンケートの概要
新型コロナウイルスの影響により、ひとり親家庭は引き続き苦しい状況におかれています。 別居中・離婚前のひとり親家庭の生活実態・公的な手当・制度等の利用状況を明らかにし、必要な支援策を明らかにするため、フローレンスや認定NPO法人しんぐるまざぁず・ふぉーらむ等によるプロジェクトチームは、フローレンスがプロジェクト事務局を務めるプロサッカー選手・長友佑都さんとのひとり親支援プロジェクト「ひとり親をみんなで支えよう」で緊急支援を行った対象者のうち、パートナーと別居中・離婚前でご自身が子どもと同居しており、実質的にひとり親状態にある家庭の全国実態調査を実施しました。【別居中・離婚前のひとり親家庭アンケート調査 概要】
・実施期間:2020年9月10日(木)~9月23日(金) ・実施方法:Questant(マクロミル)を利用したWebアンケート ・対象世帯:別居中・離婚前のひとり親 ・有効回答数:262 ・実施者:別居中・離婚前のひとり親家庭」実態調査プロジェクトチーム(事務局:認定NPO法人フローレンス) 認定NPO法人しんぐるまざぁず・ふぉーらむ 理事長 赤石千衣子 シングルペアレント101 代表 田中志保 認定NPO法人フローレンス 代表理事 駒崎弘樹 福井県立大学 名誉教授 北明美 ※端数処理の影響で、紙面上の数字の合計が100%にならない場合もありますアンケート結果サマリ
● 厚労省調査の「母子世帯」の就労年収200万円未満の割合58.1%に対し、本調査対象者は71.8%と経済的により困窮している層である(N=262) 別居中・離婚前のひとり親家庭では年収200万円未満と回答した方が7割超。厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査」における「母子世帯」の就労年収200万円未満の割合58.1%を大きく上回る数値となりました。「収入がゼロになってしまった」「子どもの体重が大幅に減少してしまっていて不安である」との声が寄せられました。


アンケート結果から見えてきた「別居中・離婚前のひとり親家庭」の課題
【利用できるはずの公的な手当・制度を利用できていない】 ・中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の児童を養育している方に支払われる「児童手当」は、父母が離婚協議中などにより別居している場合は、児童と同居している方に優先的に支給されることになっているが、別居中・離婚前のひとり親家庭の18.1%では「子どもと別居中の相手が児童手当を受け取っている」



別居中・離婚前のひとり親が「子と同居していながら児童手当を受け取れない状況」が生まれる理由
現在の児童手当制度では、離婚を前提として別居している場合には、住民票を別世帯にすることを条件に、児童手当の受給者変更ができるようになっています。
例)江戸川区のホームページより



私たちの提言
DVで避難中等の「ノーセーフティネットひとり親家庭」が児童手当を受け取れるようにしてください
2020年9月に「別居中・離婚前のひとり親家庭」実態調査プロジェクトチームが実施した別居中・離婚前のひとり親家庭262世帯への調査にて、18.1%が児童と同居しているにも関わらず、児童手当を受け取れていないことがわかりました。
本来受け取れるはずの手当を受け取れていない「ノーセーフティネットひとり親家庭」への支援を強く求めます。
①「DV事務通知」の改正を要望します
児童手当を必要としている多くの別居中家庭の実態に合わせて自治体が判断できるよう、「DV事務通知」の改正を強く求めます。
例えば、「申請者と児童が母子生活支援施設に入所」以外のケースとして、「特別定額給付金事業におけるDV避難者や施設入所児童等への対応」(2020年4月 特別定額給付金室)にて採用された要件を参考に、「行政または行政から委託された弁護士・民間支援団体等がDVから避難しており児童と同居しているという生活実態を確認できた場合」等も例示に追加することをご検討ください。
②ノーセーフティネットひとり親家庭にならない・させないための周知徹底を要望します
別居中・離婚前のひとり親家庭への調査では、そもそも、児童手当の受給者を変更できるということすら、知らない・よくわからない世帯が約4割いました。
よって、前述の「DV事務通知」の改正を行うと同時に、「児童と同居している親が受給すること」があるべき姿であり、例えばDVからの避難などのノーセーフティネットひとり親も、新通知に基づいてしっかりと救済されるのだ、ということを自治体・民間支援団体・当事者へ積極的に周知していただきたいです。
当事者Aさんのコメント
「不安で弱っている、また生活を立て直さなければならない状況、子どもたちと生きていく決意の中、児童手当という制度は心強く、生活スタートには欠かせないはずです。ひとり親になり子どもを育てていくシングルマザーの支えになるはずです。住民票、世帯主の観点だけでなく、現場へ、駆け込んできたシングルマザーの状況、生の声を聞いて欲しいとお願いしたいです。」
当事者Bさんのコメント
「私たちは離婚はしていませんが、実質、ひとり親です。なかなか進まない相手との離婚手続きをなんとか解決したいと思いながら、必死で仕事をし、子どもたちを育てています。どうか、いまだに児童手当を受け取ることができない親子のために、皆さまのお力を貸してください。」
このような事例は、氷山の一角です。
「別居中・離婚前のひとり親家庭」実態調査プロジェクトチームでは、まずはノーセーフティネットひとり親家庭が児童手当を受け取ることができるよう、近日中に、お配りした提言書の内容の申し入れを政府の関係部局に行ってまいります。
また、児童手当はノーセーフティネットひとり親家庭の抱えている課題の1つに過ぎず、調査から明らかになった他の課題に対しても今後、アクションを検討していきたいと考えています。
このようなソーシャルアクションは皆さまの寄付によって支えらています。引き続き、ご支援、応援よろしくお願いいたします。