総務大臣・女性活躍担当大臣・内閣府特命担当大臣として注目される野田聖子さんに、フローレンス代表駒崎弘樹と日経DUAL編集長の羽生祥子さんがインタビューをおこないました。
「医療的ケア児」である野田大臣の6歳の息子、真輝(まさき)君は、フローレンスが日本で初めて開設した障害児専門の長時間保育所「障害児保育園ヘレン荻窪」の利用者でした。
私たちフローレンスにとっては「まーくん」と「まーくんママ」としてのおつきあいが長いのですが、今回は、野田大臣の壮絶な出産体験にはじまり、どのように重い障害のある息子さんを育てながら議員の仕事を続けたのか、また都内の特別支援学校についてや医療的ケア児を取り巻く社会の問題などについて詳しく対談で語られていますのでぜひご覧ください。
野田聖子 「医療的ケア児」受け入れ体制にハードル | 野田聖子大臣インタビュー | 日経DUAL
医療的ケア児って、どんな子ども?
医療的ケア児とはその通り、医療的ケアを必要とする子どものこと。ではその医療的ケアとはなんでしょうか。
具体的な医療的ケアの例としては、以下のようなものが挙げられます。
(1)経管栄養:食事のためのチューブを胃に通す
嚥下(飲み込む)機能の障害などにより、口から食べ物を食べられない場合に、お腹に穴を開けたり、鼻からチューブを通すなどして、胃に直接食事(栄養剤等)を入れる処置です。
(2)気管切開:呼吸のための器具を喉に取り付ける
疾患などが原因で口や鼻がふさがってしまう症状がある場合、喉に穴を開け、カニューレ(通気の管)を通して空気の通り道を確保する処置です。
この他にも、様々なケアの種類がありますが、共通しているのは、何らかの医療デバイスによって身体の機能を補っている状態であるということです。
医療的ケア児が生まれる割合は高まっている。なぜ?
こういった医療的ケアを必要とする子どもは、全国で約1万7千人。この数は増加傾向にあり、10年前と比べると約2倍になっています。
日本の高度医療は世界最高水準と言われています。新生児医療技術も年々向上し、これまでであれば命を落としてきた赤ちゃんを救うことができるようになりました。その医療処置の結果として、生きるために医療的デバイスを必要とする子ども、すなわち医療的ケア児が増えてきているのです。
「新しい障害児」だからこそ、制度が追いついていない
本対談でも「まーくんが立った瞬間に赤字になった!」というエピソードが紹介されていますが、もともと日本における障害児の分類は「大島分類」というものが使われており、身体をコントロールする力(座位がとれる、立てる等)と、知的能力(IQ)がどの程度あるかという2つの軸によって、障害レベルが判定されていました。
この分類により、子どもの障害の程度が決められ、それに応じた行政の支援を受けられる、というのが現在の障害児者支援の制度です。
しかしこの大島分類は約45年前に作られたもので、新しい存在である医療的ケアは考慮されていません。
例えば、知的な遅れがなく、自分で歩くこともできるが、経管栄養のチューブがついている医療的ケア児は、この分類では障害がないということになってしまいます。このように医療的ケア児は、既存の障害児者支援の法制度の枠組みに入ることができず、国や自治体の支援を受けることができなかったのです。
医療的デバイスをつけたり医療的なケアを受けながら、生きていく障害児のための新しい制度設計が早急に必要です。
そして、保育や教育、就労といったあたりまえの機会があたりまえに選択できる「生きる場所」が必要です。
フローレンスは障害児保育をあたりまえにするため、障害児保育園ヘレン、障害児訪問保育アニーのサービスを早急に拡大していくとともに、多くの事業者が障害児の保育や教育に参入できるよう、現場を知るいち事業者として、課題を発信し、声をあげ続けていきます。
まずは、ぜひ野田大臣の記事を読んで、医療的ケア児の問題を知って下さい。
野田聖子 「医療的ケア児」受け入れ体制にハードル | 野田聖子大臣インタビュー | 日経DUAL