徹底したコストパフォーマンス追求で知られ、わたしたちの暮らしに根付くスーパー「西友」。
しかし、西友ファンが多いのは低価格だけが理由ではないようです。例えば、店頭のレジ募金などでさり気なく社会課題を発信する企業姿勢に、「どんな人も、あたりまえに幸せに暮らせる社会を実現したい」という実直な理念を感じ、信頼を深めるユーザーも多いでしょう。
フローレンスは、2011年から西友の「社会貢献活動助成プログラム」にてご支援をいただいています。
2017年10月にオープンした複合型保育施設「おやこ基地シブヤ」も、西友から大きな支援をいただき開設されました(※助成金の使途は障害児保育園ヘレン)。障害児保育園、認可保育園、病児保育室、小児科クリニックが一体となった、日本で初めての建物であり「すべての親子に保育の光を」をコンセプトとするフローレンスのフラッグシップ施設となりました。
西友をはじめ多くの寄付者の皆さんの支援で形になった「おやこ基地シブヤ」で、実際に多様な子どもたちがどんな風に過ごしているかをご覧いただくため、2018年1月某日、西友 企業コミュニケーション部の宇治田 彩さん、森松 絵美さんをご案内しました。今回は、その様子とお二人へのインタビューをご紹介します!
「企業の社会的責任」いわゆるCSRはどの企業でも聞かれる言葉である一方、その定義や捉え方は様々であるという印象を受けます。しかし「西友がなぜ社会貢献活動を続けるのか?」という問いへの答えは、企業活動の本質そのものであるというシンプルなものでした。
おやこ基地シブヤでの保育の様子
まずは、当日の見学の様子を写真でご紹介します。
子どもの個性にとことん向き合い、尊重しあう保育現場
フローレンス広報(以下「広報):ご見学いただきありがとうございました。実際ご覧になっていかがでしたか。
宇治田さん
……想像以上、期待以上という印象です。
「障害児保育園ヘレン」はもちろん、「みんなのみらいをつくる保育園」でもお子さん一人ひとりに向き合う保育がすごく実現されているなと思いました。施設全体を通して、その子の個性に大人も子どもも一対一で向き合っている現場だと感じます。
子どもの自主性を重んじる、と言うだけなら簡単ですが、実際にはその時その時で丁寧にお子さんを尊重する保育というのは難しいのではないかと思います。
例えば「みんなのみらいをつくる保育園」の手洗い場の前に、赤、青、黄色のテープで列を区切って、子どもたちがその色に沿って並んでいる場面がありました。
保育スタッフさんに伺うと、いろいろなきまりやルールを言葉で言うよりも視覚的に「色」で見せてあげたほうが分かりやすいタイプの子どもさんがいて、その子のためにお部屋の各所に色テープを貼る工夫をされているということでしたね。他のお子さんも、その子には「色」で教えてあげるのがいいんだ、と理解していたようでした。
こうやってお子さん同士も、お互いの個性を認めあっていくんだな、と。
森松さん
私は「障害児保育園ヘレン」1園目の荻窪園と昨年2月に世田谷で開園した経堂、そして今回初台の施設を見せていただきましたが、どんどん進化しているという印象をもちました。
利用する子どもたちや親御さんのニーズ、現場で保育にあたるスタッフの方々から挙がる意見やアイディアに応えるためにはどうしたらいいだろう?と試行錯誤をされて、情報も蓄積されてきた集大成だと感じ、感動しました。
それから、健常児の通う認可保育園(みんなのみらいをつくる保育園)と、障害児保育園の子どもたちが行き来し、交流するのは、この施設ならではですよね。子どもたちは障害の有無に、お互い最初からなんの先入観もありません。ここでは、それがあたりまえの光景として見ることができました。
子どもたちはとても楽しい時間を過ごしているんだな、親御さんも喜んでいらっしゃるだろうな、と思いました。
こうやって実際に施設が形になって、初めて分かることも多いです。森松さんがおっしゃったように、子どもはこんなにも自然に一緒に遊びだすんだ、とか、親御さんがこういうことに勇気づけられるんだ、とか。
西友さんはじめ、思いを共にする支援者の皆さんと、形にすることができて本当に良かったです。
西友が地域に対して貢献できることを考え続ける理由とは
広報:西友さんは、長くフローレンスを支援下さっていますが、改めてその理由をお伺いしてもよろしいですか?
宇治田さん
西友は、親会社であるウォルマートの方針に沿って、「機会創出(Opportunity)」「環境(Sustainability)」「地域社会(Community)」の三つの分野で、社会的な課題や環境問題の解決のために活動を行っている団体に対して支援をしています。
誰もがその人らしくいきいきと社会に参画できる社会をつくるために最前線で活動されているフローレンスさんを支援しているのは、「機会創出」分野においての支援活動の一環です。
宇治田さん
障害があっても、病気の時であっても、全てのお子さんが長時間保育を受けることができ、また、そうしたセーフティネットがあることで保護者の方々が自分らしく働ける社会づくりを、フローレンスさんと共に進めていきたいと考えています。
新たに「赤ちゃん縁組事業」への支援を決めたのも、いろんな家族の幸せがあたりまえになると良いなと共感したからです。
森松さん
ウォルマートには、「すべての人を尊重する」というカルチャーがあり、「ダイバーシティ&インクルージョン」を大切にしています。人種、性別、障害の有無や雇用形態などによる差別なく、お互いの個性を受け入れ、尊重しあえる環境作りをするといった考えのもと、どなたでも幸せな生活が送れるように、地域に貢献したいと考えています。
この「おやこ基地シブヤ」でフローレンスさんが体現されているように、どんな時も、どんな人も、笑顔でいられるように……という思いに、共通するものを感じて支援させていただいています。わたしたちだけではできないことを実際に形にして下さるフローレンスさんと、一緒に社会を変えていければ、これほど嬉しいことはありません。
広報:もったいないお言葉です……!ありがとうございます。
ビジネス上のビジョン、ミッションの延長線上にあるCSR
広報:西友さんといえばお客様には低価格で高品質な商品を提供することがビジネス上のミッションですよね。地域社会への貢献と、ビジネスの部分とはどのようにバランスを取っているのでしょうか。西友さんの、CSR(Corporate Social Responsibility :企業の社会的責任)に対する考え方を教えていただけますか。
宇治田さん
西友は、ウォルマートのミッション”Saving people money so they can live better”(お客さまに低価格で価値あるお買物の機会を提供し、より豊かな生活の実現に寄与することを目指す)の実現のため、事業を展開しています。
このミッションを将来にわたって継続的に追求していくためには、事業のサステナビリティ(持続可能性)に加え、地域社会やお客様ご自身のサステナビリティも必要不可欠だと考えているんです。企業として成長していくことと、社会課題や環境問題の解決に積極的に取り組むこととを別々に考えるのではなく、常に両輪で推進していくという考え方がウォルマートには根付いています。
広報:なるほど。お母さんに手をひかれてお買い物に来ていた子どもが、やがて近所のお友達と連れ立ってやってくる、そのうちひとり立ちをして、結婚して家族を持ってまた子どもを連れてお買い物に……そんな風にわたしたちの生活が未来へと続いてくことと、西友さんが地域で企業活動をすることとは、密接に結びついていますね。
お客様はこうした西友さんの姿勢を、提供される商品はもちろん、サービスや店舗のいたる所で感じ、ファンになっていくのでしょうね。
森松さん
そうですね。実際にお客様から「フローレンスや他団体を支援している西友を応援しています!」といったお声や、社会貢献活動に関するお問い合わせも寄せられています。
フローレンスさんへの支援のひとつに、ひとり親家庭をサポートするための「病児保育」のレジ募金があります。レジに募金カードを置き、お客様がお買い物のご精算時に募金にご参加いただけるものです。
日本のひとり親家庭の中には、不安定な雇用形態や低所得が原因で、子どもの看病のための休業が死活問題につながってしまうというケースもあるという現状を、お客様が必ず目にするレジで発信することで、多くの人に知ってもらうきっかけになっています。
広報:まさに私たち一団体だけではリーチできない皆さんに、情報を届けることができるのは全国338店舗で展開される西友さんによるお力添えも大きいです。
森松さん
全国に店舗をもつ西友は、そうした課題を伝える役割を担うことができると思っています。
宇治田さん
ヘレンのお子さん達が将来、1人で西友でお買い物できたり、自立した生活ができることがあたりまえになるには、まずは「困っている家族がいる」ということを1人でも多くの人が認知することからですよね。
広報:では最後に、西友さんが企業としてどのように地域社会に関わっていくのか、その展望と、今後フローレンスに期待する役割について教えていただけますか。
宇治田さん
西友はスーパーマーケットとして、今後も地域に根差した事業を展開し、「機会創出」の分野において、フローレンスさんの目指す“いろんな親子の笑顔があふれる社会”の実現に向け、支援を継続したいと考えています。
社会課題の解決に取り組む先駆者として大きな影響力を持つフローレンスさんには、今後も「病児保育」「障害児保育」「養子縁組」など、今まさに取り組む必要があるファミリーの問題に関して、アクションはもとより、社会全体の問題意識を高めるため、現場ならではの積極的な情報発信をしていただきたいと思っています。
広報:ありがとうございました。NPO、企業、それぞれ自分たちだけではできないことが、一緒なら可能になる。一団体で取り組むよりも、ずっと大きな社会的インパクトを出すことができます。
これからも、親子に関わる社会問題の解決を一緒に進めていけることを、大変うれしく思います。
西友の「社会貢献活動助成プログラム」においては、2011年からフローレンスの訪問型病児保育サービスを低価格でひとり親家庭に届ける「ひとり親家庭支援プラン」の支援にはじまり、日本初の「障害児保育園ヘレン」の立ち上げ、2015年にサービスを開始した「障害児訪問保育アニー」の立ち上げ、そして2017年度にはサービスインから間もない「赤ちゃん縁組事業」の運営サポートも加え、各事業を継続して支えていただいています。
私たち一団体ではできないことを、企業や寄付者の皆さんと実現していけることに心から感謝しています。これからも、たくさんの皆さんと繋がることで、社会変革のインパクトを大きくしていきたいと思います。