子どもの、とくに乳児期~幼児期は、身体・嗜好・食習慣の基礎をつくる時期と言われています。
子どもとのとても大切な食事の時間に、こんな経験はありませんか?
「好き嫌いが多く、食べたい物に偏りがある」
「食事に興味がないのか、全然食べてくれない」
「食べ物でついつい遊び出してしまう」
子どもの大切な成長の時期だからこそ、子どもたちにはきちんと食べてほしい。
でも、「食べたい気持ち」ができていない子どもに、無理強いはしたくない…
そんなモヤモヤに応えるべく、2月の保育塾は『「食事中の困った!」への工夫を栄養士に教えてもらおう!』をテーマに開催しました。
保育塾とは、フローレンスの全ての現場スタッフに向けた自主参加型の研修のこと。
現場スタッフの「知りたい!」「学びたい!」に応えられるように、毎月違うテーマで研修を行っています。
今回の講師は、みらいの保育園事業部で栄養士として働いている、田崎と櫻井。
保育中の食事介助の相談や、食育のための提案など、子どもたちが楽しく食事する環境づくりを支えています。
保育塾では、現場で実際に起きている、「食事中の困った!」事例をもとに、どんな工夫ができるのか、専門家の立場から分かりやすく解説してくれました。
よくある事例①:好き嫌い
「よく保育現場で相談があるのが、混ぜご飯を食べてくれない、牛乳が苦手で飲まない、などです。」
そんな事例に参加者もうなずきます。
好き嫌いができる要因には、2つの「できた」が関係しています。
・「嫌い」を主張できるようになり、自我が芽生えてきた
・1歳半から味覚の形成が始まるため、「味覚」をきちんと感じられるようになった
つまり、好き嫌いは、子どもたちが成長している証拠と言えます。
「食べられる食材の種類が極端に少ない」偏食と異なり、「好きなものは食べるけど、嫌い、もしくは苦手な食べ物がある」のが好き嫌いです。
大人の私達も好きや苦手なものってありますよね?それが食べ物になっただけです。
牛乳が嫌いな子には、ヨーグルトやひじきなど、他の食品で栄養を補うこともできます。
もちろん、食べれるものを増やす工夫はもちろん重要ですが、子どもに好き嫌いに対して、神経質に悩みすぎる必要はありません。大人が食べないと決めずに、少しずつ食べられる工夫を、ゆっくりでも、一緒に取り組んでいきましょう。
どうする?子どもが「食べない」の壁にぶつかったとき
しかし、とくに小さい子どもは、見た目や印象で、ただの「食わず嫌い」になっていることがあります。
「子どもが前に食べたほうれん草が苦手だったために、それからは全ての緑の食べ物を避けようとする」というような事例もありました。
味付けを変えたり、「ひとくち食べてみようか?」と声をかけることで、食べられるようになることもあるので、「嫌いだから」と諦めるのではなく、工夫をしたいですね。
田崎と櫻井がおすすめする「食べたい」工夫は3つです。
・クッキングや栽培、歌などの食育活動で食材を身近に感じる
・信頼している友達や大人がおいしそうに食べている/「おいしい」と伝える
・提供方法(好きなコップ、まぐまぐなど)や、食材の切り方・盛り付け方を変える
印象に残ったのは、信頼している相手から「おいしい」を伝えること。
私たちも友人から「おいしい」とおすすめされると、つい食べたくなりますよね。
子どもに食べてもらうことに一生懸命になりがちですが、まずは自分自身が食事を「おいしい」と感じ、伝えることが大切である、と同時に、楽しい雰囲気をつくったり、つい、一口食べてみたくなるような工夫をすると、それまで食べなかった子も食べるようになるかもしれません。
よくある事例②:好き嫌いではなく、そもそも食事に関心がない
好き嫌いというわけじゃないけど、とにかく食べることに興味がないみたいで……という場合もあります。
注意したいのは、少食≠食に関心がないということ。
成長のために食べることは重要ですが、少食の子に「たくさん食べないと大きくなれないよ」「早く食べようね」といった声掛けがプレッシャーになることがあります。
食に関心がない場合は、「周りが楽しく食べる」「提供の仕方を変える」以外にも、さまざまな工夫ができます。
・一口ずつ盛り付け、「完食」の体験をさせて、褒めてあげる
・好きな食べ物を食事に盛り込む
・食事作りのお手伝いや、絵本・おままごとの遊びと食事を結びつける
その子自身が楽しく食べるきっかけをつくるこ とが、「食べよう」という意欲につながります。
また、食事中に、食べ物を握りつぶしたり、投げたり、歩き始めたりしてしまう、なんてことはありませんか。
これは、好奇心や、試してみたい気持ちからくることがほとんど。
遊んでしまう場合は、「それはうどんだよ」「食べる物だよ」と具体的に教えます。
それでも聞かない時や、席を立ってしまう場合は、「片付けようね」と子どもたちに声かけをし、「席をたったら食事が終わりになる」ことを伝えます。
遊び食べや食事に集中出来ない時は、ただ単に「ダメ」と伝えるのではなく、手に持っているものが何なのか、食事の時間はどうするべきなのか、子どもが考えられる声掛けが大切なんですね。
よくある事例③:別の食べ物を混ぜ食べ
櫻井からの、「みかんとお汁を混ぜたり、出されたもの全部を混ぜて食べちゃう子には、なんて伝える?」という問いかけに、これまでそういった経験をしたことがある人が多いようで、会場がざわつきました。
「これは、どんな味かな?」「全部混ぜちゃうの~?」と、ひとつずつ食べる声掛けや、「一品ずつ出す」という意見がありました。みなさん、混ぜ食べには苦戦している様子です。
また、普段どんな子と接しているかによって意見はさまざまでした。
「病児保育で預かったお子さんだと、体調が戻るためにまずは食べてもらうことが優先」
「園だと他の子も真似しちゃうし、毎日の癖になってしまうと困る」
など、多様な保育現場をもつフローレンスならではの、いろいろな視点が飛び出しました。
乳幼児の間はとくに、楽しく食べることを知ることは大事なので、混ぜ食べ自体を怒ったり禁止しなくてもいいのですが、混ぜることに満足し食べないまま食事を終えるとなると、食事の意味がありませんよね。
また、混ぜることで食感がひとつになってしまうので、味覚や感触を感じる力が乏しくなってしまいます。
「こういう風に作ったんだよ」「ひとつひとつ味が違うから、一個ずつ味わって食べてほしいな」と作る側の気持ちを子どもたちに伝え、作った側の相手も積極的に関わることが重要とのこと。
保育塾では、「分かる!」と盛り上がる場面もあれば、「なるほど!」と、講師や他の参加者の意見や実践していることが参考になる場面もありました。
日頃から周りの保育士や調理師、栄養士と一緒に、子どもたちの食事について話す機会や、考える機会、協力する機会があるといいですね。
大切なのは、大人自身が食事を楽しむこと
食事は、バランス良く栄養をとったり、ルールやマナーを教えることももちろん大切です。
しかし、今回の保育塾を通して、まずは子どもたちと一緒に、自分自身が食事を楽しみ、「おいしい」「食べるって楽しい」を伝えていくことが大切だと感じました。
私自身、幼いころ少食で、みんなと同じ量を食べることが難しく、周りの大人からの「残さず食べよう!」という声かけに、食事の時間が嫌になったことがありました。
「食べる」ことは毎日の生活に欠かせない行為です。もし80歳まで毎日3食続けたとしたら、なんと8万7600回も食事の機会があるんです。「食べる」経験の最初の一歩である、乳幼児期に、「食べる」ことを楽しむ経験をさせてあげたいですね。
次回、3月の保育塾は、「伝えるスキルを伸ばそう!コミュニケーション講座」です!
お楽しみに!