子どもの貧困を解決する寄付プログラム、ひとり親支援で
2017年冬、とある企業から広報にお問い合わせをいただきました。
「通販事業を行っており、PCやスマホからの売上の1%を、子どもの貧困支援にカンパしたいと考えています」
お問い合わせを受け、私たちは「子どもの貧困」の主原因のひとつとなっている「ひとり親家庭の不安定な雇用」を解決するため、2008年より寄付を原資とした「病児保育サービスでのひとり親支援」を運営している実績をご紹介しました。
フローレンスは、2005年に日本で初めて共済型・訪問型病児保育事業をスタートし、子どもが急に熱を出しても、安心して働ける社会の実現を目指してきました。
フローレンスの病児保育は、月平均7000円程の会費に月1回目の病児保育料金が含まれており、当日予約で100%対応します。通常、月2回目からは1時間2000円の利用料金で病児保育を利用できます。
しかし、病児保育サービスを最も必要としている「ひとり親」家庭には月会費の負担が重いという問題がありました。そこで、2008年から始めたのが「ひとり親家庭支援プラン」です。
入会金30,000円は無料とし、月会費1,000円を払っていただければ、通常会員と同様初回は無料で病児保育を利用できます。この仕組みは多くの方々からの寄付により成り立っています。
2008年から10年で、寄付を原資にのべ約1000名のひとり親家庭に安心を届けてきた事業モデルに、お問い合わせをしてくださったご担当者である平野裕二さんは大変共感をしてくださいました。
平野さんはこのモデルについて理解を深める中で、おっしゃいました。
「ひとり親家庭の皆さんも、月2回目の利用から保育料がかかるんですよね?」
「はい、通常会員の方は月2回目の利用からは1時間2000円の保育料ですが、ひとり親支援プランの会員の方は1時間1000円でご利用いただいています」
「1日9時間として9000円ですね。これはけっこう負担が大きく、月2回目の利用をためらうひとり親支援プラン会員さんがいるのではないですか?」
平野さんのご意見を受けて調べてみたところ、一般会員の2回目利用頻度が30%前後であるのに対し、ひとり親支援プラン会員は20~50%と幅があり、ひとり親家庭のお子さんが病気になった時に実費と仕事調整との綱渡りでしのいでいる様子が伺えました。
「では、ひとり親支援プランの皆さんが安心して月2回目の利用ができる無料クーポンを作ったらどうでしょう?運用資金は、弊社のお客様がWEB通販で商品購入をされた売上から提供させていただきます。きっと私たちのお客様も喜んでくださると思います!」
と平野さん。
平野さんのアイディアで、病児保育事業部内で【ひとり親支援プランご入会の会員専用の月2回目利用無料クーポン】という新サービスが実現し、2018年度4月よりひとり親支援プラン会員さんへの配布が始まりました。
これまでに既に数十名の会員さんがこのクーポンを利用してくださっています。
「利用するお父さんお母さん、子どもたちが喜んでくれたら、十分です」
このクーポン制作について、ちょっとした秘話があります。
広報から「御社がご支援下さっていることをクーポンに大きく表示して、少しでも御社のすばらしいお取り組みが伝わるように制作しますね!」と平野さんにご相談した時のこと。返ってきたのは
「いえ、支援企業名なんて入れなくていいんです。利用者の方にできるだけ気持ちよくたくさん使ってもらうことが目的ですので」
そんな、企業名のPRを辞退されるお返事でした。
そこで、クーポンには【ある企業さまから、保育料金が無料となるクーポンをご支援いただきました】とだけ記載されているのです。
クーポンは病児保育利用の際に回収させてもらっており、裏面に設けられた利用者コメント欄には、感謝の言葉がたくさん綴られて返ってきます。
一部をご紹介いたします。
『ご支援いただき、心より感謝申し上げます。病気時も親子とも不安を感じることなく過ごすことができ、安定した生活をできています』
『このような支援をいただきありがとうございます。私もいつか誰かに支援の手を差しのべられるよう頑張りたいと思います』
『このようなクーポンをご支援いただきましてありがとうございました。連日のお願いになっていたので大変助かりました。私もいつか支援できる側になれるよう頑張ります。また、子どもが大きくなったら聞かせようと思います』
『今月は次女が体調を崩し、3回目の利用になってしまいまして、このクーポンを使わせていただけて本当にありがたいです。療育や調停、学校行事など、職場を休まざるをえない日が多く、看病をするための休暇を取りづらいのでフローレンスさんは命綱だと思ってます』
『利用無料券ありがとうございます。病児保育を利用できるだけでもありがたいですが、無料券をいただけて、本当に助かります。ありがとうございます!!』
『日々ひとりで子育てをしている中で病気で仕事に行くことができず、職場に迷惑をかけてしまう。子どもにも無理をさせている、という自己嫌悪に陥ることもありますが、このクーポンで経済的な心配をせずフローレンスのようなプロの方に見てもらえ本当 にありがたいです』
『今月2回目の利用になり負担額が大きくて大変だと考えていたところ、支援企業様からの無料券が送られてきたことに気づき、大変ありがたく使用させていただきます。ありがとうございました』
『今回フローレンス2回目利用をさせていただいております。利用無料券をいただけることはとてもありがたいです。ありがとうございます』
最後にご紹介させていただきますが、今回こうしたアイディアとまごころでご支援を届けて下さった支援企業はカタログ通販雑誌の『通販生活』でおなじみの『カタログハウス』さんです。
ひとり親支援プラン会員さんがおよそ333名、この2回目利用券を利用できるようご寄付を提供くださいました。
カタログハウスさんのサイトではフローレンスのご紹介もいただいていますのでご覧ください。
ひとり親家庭、特に母子家庭は今も当時も大変厳しい状況におかれています。
厚生労働省の「平成28年度国民生活基礎調査」および「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」によると、子どものいる世帯の平均世帯年収707万円に対して母子世帯は243万円と、実に3分の1です。
しかも母子世帯の81.8%は就業していますが、その43.8%が非正規雇用です。
いくつも仕事を掛け持ちしている母子家庭も多いと聞きます。
フローレンスは「安価な病児保育の提供」でひとり親家庭の子育てと仕事の両立を支援して、今年7月で10年を迎えました。
これからも、ひとり親が家事育児仕事を抱えて行き詰まることのないよう、たくさんの人の手を借りて社会で子どもを育てて行こう!というメッセージを、多くの寄付者の皆さん、支援企業の皆さんとともに伝えていきたいと思います。
みなさんからのご支援、心よりお待ちしています。
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(了)