先週末、千葉・銚子の県営住宅で強制退去の日に母親が中学生の娘を殺害した事件に関連して、ひとり親家庭が置かれている状況についての記事を掲載しました。(まだご覧になっていない方はこちら)
「ひとり親家庭」と言うと、「ほとんどが母子家庭」というのが社会の一般的なイメージとしてあるかもしれません。
今週末は「父の日」。この日に合わせ、普段注目されにくい「父子家庭」についても考えてみませんか。
●ひとり親=ほとんどシングルマザーは本当なのか?
厚生労働省の調査データ(平成25年)によると、全国の父子家庭数は9万世帯、母子家庭数が82万世帯と、ひとり親家庭の約10%は父子家庭であることが分かります。
●父子家庭が置かれる状況は年々悪化している
一般に”男性は女性よりも収入が多く、父子家庭も母子家庭より収入が多いであろうから、そこまで困窮していない”と思われる方も多いのではないでしょうか。
しかし、父子家庭も実は経済的に厳しい状況に置かれつつあります。
ここ数年の父子家庭の平均就労年収を推移を見ると、平成17年の398万円だったものの、平成22年には360万円となり、38万円も減少していることが分かります。
つまり、父子家庭の経済的状況は年々苦しくなっていることが分かります。
【シングルファーザーの子育ての壁】
母子家庭も厳しい状況がありますが、父子家庭にもまた、父子家庭特有の困難が立ちはだかります。
・長時間労働が当たり前という空気がある職場の中で、男性が毎日子どものお迎えや、頻繁に子どもの病気での仕事に穴をあけることは事実上とてもしづらい、できても職場にいづらくなってしまう現状
・突然の死別や離婚で、急に慣れない家事・育児と仕事の両立を1人でこなさねばならず、精神的に余裕のない状況に追い込まれる
・父子家庭そのものが周囲におらず、つらい気持ちを共有する場がないこと。介護でもよく悲しい事件が起こりますが、一般的に男性は女性よりも一人で抱え込みがちで、周囲に助けを求めることに障壁を感じてしまう傾向にあります
父子家庭が子育てしづらい現状は、日本社会の働き方の問題にも非常に密接にかかわっている社会課題です。
しかし、父子家庭になる可能性は、世の中のどの男性にもあり得ることなのです。
たとえひとり親家庭になってしまった時にも、女性でも男性でも、安心して子育てできる社会にすることがとても大切です。
ここで私たちフローレンスが病児保育を通じて支援してきたあるお父さんからもらったメッセージを紹介します。
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突然、父子家庭となり、0歳と4歳の二人の園児を抱え、 どう生活して行けばよいのか途方に暮れていた時、
たまたまネットでフローレンスのひとり親支援を見つけ、 子育てと仕事の両立に僅かながら希望を持てたことを覚えています。
それまでは毎日終電で帰宅し、土曜日出勤が当たり前だった職場において、 男性社員が残業もせず人より早く帰宅するというのはとても気まずいものです。 まして、平日に子どもの病気を理由に休ませてくださいとは、 とても言いづらい状況でした。
ふたりの子どもが交互に熱を出したりすることもあり、 フローレンスのひとり親支援プランに入っていなければ、 職場に居づらくなって、早いうちに退職していたことと思います。
それでもあれから、何とか頑張ってこれたおかげで、 少しずつ「休ませてください」ということが言えるように、 職場の雰囲気だけでなく、自分自身の気持ちも 変わってきたように思います。
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また、もう1名ご紹介します。
ご自身もシングルファーザーでありながら、寄付を通じて同じ境遇の方をサポートしている寄付会員の方のメッセージです。
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5年ほど前に離婚、子ども2人を引き取りました。
当時、幸い下の子も既に大きく、小さいお子さんをお持ちの方に比べれば恵まれた状況でしたが、ちょうど昇進と重なり業務も多忙、簡単に会社を休むことはできませんでした。
親族も近くにおりません。
家事は睡眠時間を削れば何とかなりましたが、具合の悪い子どもを残し出社しなければならないときは最悪のケースが頭をよぎり本当に不安でした。
フローレンスの取り組みにより、昔の私と同じ不安を抱える方をサポートすることができます。
(ひとり親支援寄付会員:シングルファーザー Nさん)
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前述の調査からは、
・父子家庭の非正規雇用(パートやアルバイト、派遣社員)率が10%に上昇している
・父子家庭の就労年収300万円未満の層が43%を占める
・生活保護を受給する父子家庭が8%に上昇
など父子家庭の置かれる状況が年々悪化していることが分かります。
フローレンスでは低所得のシングルファーザーの方を含め、、経済的に厳しい状況にあるひとり親家庭の親御さんが仕事を続けていけるよう、寄付をもとに、ひとり親家庭に病児保育を提供しています。
この機会にシングルファーザーの実状を知り、支援の第一歩として、フローレンスのひとり親支援活動にご協力いただけたら、これ以上に嬉しいことはありません。