「里親」という制度を知っていますか?耳にしたことはあるのではないかと思います。
10月(東京都は10月・11月)は「里親月間(厚生労働省)」。何らかの事情で子どもを育てられない家庭のお子さんのために、国は里親のなり手を増やそうとしています。
子どもが家庭で大きくなっていけるようにと日々こどもを支えている里親さんたちのために「私たちにも何かできないか…」と考え、「乳幼児の病気の対応とリスクマネジメント・コミュニケーション」をテーマに、研修を実施しました。
里親とは…特別養子縁組との違いは??
フローレンスでは、事情を抱え赤ちゃんを育てられない妊婦さんと子どもを支援するために特別養子縁組の支援(赤ちゃん縁組)に取り組んでおり、「里親」とも近しい領域です。
「特別養子縁組」は民法で定められた制度で、子どもは生みの親と法的にも親子関係を断ち、育ての親と実の親子同様の親子関係を結ぶことになります。フローレンスは予期しない妊娠をした女性のための妊娠相談、そして育ての親を希望する親御さんの募集や研修の支援をしています。
一方、「里親」の場合は、生みの親とは法律上の親子関係を保ったまま一時的に子どもを預かり、里親の家庭で育てます。
「里親」になるためには児童相談所が実施する研修を受け、面接や家庭訪問などの審査を受け都道府県から認定される必要があります。
子どもは児童相談所から委託され、預かり期間は数日間の場合もあれば10年以上に及ぶ場合もありさまざまです。里親さんの家庭で5~6人ほどのお子さんが生活する「ファミリーホーム」という形をとって運営を行っている方もいます。
里親は子どものみ支えるのではなく、状況に応じて実親子の関係を支える役割もあります。それが特別養子縁組との大きな違いといえるでしょう。
家庭環境で育つことは子どもの心理的発達により良い効果をもたらします。
昨年2017年8月厚生労働省が発表した「新しい社会的養育ビジョン」では、親と離れて子どもが暮らさざるを得ない場合は、施設ではなく里親や特別養子縁組を基本とし、里親への委託率について、愛着形成に最も重要な時期である3歳未満については概ね 5年以内に、それ以外の就学前の子どもについては概ね 7年以内に里親委託率 75%以上にする(現在は20%未満)と大きな目標を打ち出しました。
子どもの安全を守りたい 里親さんたちの情熱
そのような社会的な流れもあり、全国で里親を支援する活動が活発になっています。
今回の研修は、千葉県で里親支援機関の認定を受けている「NPO法人乳幼児家庭養育の会」が県の受託事業として、里親のテーマ別研修を行う一環で、同じ領域で支援活動をするフローレンスに講師依頼がありました。当日は千葉県内で里親として子どもを養育されている方など11名が参加くださいました。
講師を務めたのは、フローレンス病児保育事業部で、こどもレスキュー隊員の研修指導に携わっている萩原美貴。
「子どもの病気」「子ども目線に立ったリスクマネジメント」「子どもと心の距離を縮める工夫」という3つのカテゴリに分けて講義をしました。
「子どもの病気」では病児保育のプロとして子どもが小さいうちにかかる病気についてや、乳幼児が熱を出したときの具体的な対応をお伝えしました。
「子どもの目線に立ったリスクマネジメント」では、子どもと大人の視界や身体能力の違い、大人が見逃しがちなリスクや転落・誤飲や歯ブラシによる窒息などよく起こる事故例、家の中と外では具体的にどんなリスクがあるかなど。
途中、ワークを挟んだりしながら、参加者のみなさんの質問をまじえて具体的な事例についてより詳しくお伝えする時間も設けました。実際に預かっている子どもについて「こんなときどうしたらいい?」と活発に質問いただきました。
例えばSIDS(乳幼児突然死症候群)を防ぐためにうつぶせ寝をさせない、という話について、「うつぶせ寝が好きな子はどうしたらいいですか?」とう質問がありました。参加者の中には、安全を優先するべきと理解しながらも実際に毎日の乳幼児の子育ての中で理想通りにはいかない子どもの動きや特性にどうするべきかを悩まれている方も。
講師・萩原からは「どんなときでも子どもの命を第一に考える」ことを念頭にしつつ、それでもうつぶせ寝が好きな子への具体的な対応の工夫についてお伝えし、里親さんたちも真剣な眼差しで聞き入っていました。
里親さん同士で「うちはこうだった」と経験談をお話くださったり、とても良い雰囲気でした。「子どもと心の距離を縮める工夫」のパートでは泣き続けている子どもやイヤイヤ期、人見知りの子どもの対応などの工夫についてお伝えしました。
参加した里親さんからは、里親さん同士の集まりでもこのような講義をやってほしい!という声もあり、好評のうちに講義は終了しました。
里親と病児保育の 共通点「子どもの状態が悪いときに、初めて出会う」
最後に今回の研修を企画してくださった里親さんの言葉が印象的でした。
フローレンスさんは病児保育で日々たくさんの子どもを預かっている。里親と病児保育には、子どもが状態が悪いときに初めて出会うという共通点がある。
病児保育でいうと、体調が悪い子ども。里親は何らかの事情で実の親と離れて困っている状態の子ども、いわば病児並みに難しい状態にあるお子さんと突然会って生活をします。子どもが大変な状況のときに、初めましてと出会うところが一緒だと思う。
里親と病児保育では分野は違いますが、これまで病児保育を通じて培ってきた子どもについての専門性が、里親さんたちの日々の養育に少しでも役立つなら何より嬉しいことです。
フローレンスでは社会全体で子どもを支えて、ひとりでも多くの子どもがあたたかな家庭で育っていけるように、特別養子縁組や里親の支援に取り組んでいきます。
みなさんの応援よろしくお願いいたします。