障害児訪問保育アニーでは、障害や医療的ケアのあるお子さんをご自宅にてマンツーマンで保育しています。
先日、アニーの保育スタッフ・看護スタッフ・事務局スタッフが一堂に集まり、全社会議を行いました。全社会議は年に1度、私たちは何のために事業をやっているのかを全員で立ち返るために行っているものです。今回は「プレパレーションを学び、日々の保育に生かす」をテーマに行いました。
プレパレーションをアニーの保育に取り入れていくにあたり、どのようなことをしたかをお伝えします。
”子どもの「やりたい」気持ちを広げ 生きる力を育む”
アニーでは普段の保育の中でこの理念を大切にしています。
とは言っても、障害のある子どもたちの”生きる力を育む”とはどういうことでしょうか?
そしてどのような力が必要なのでしょうか?
改めて全スタッフに問いが投げかけられます。
考えるにあたり手がかりとなるのが今回のテーマである「プレパレーション」です。
プレパレーションとは
プレパレーションは、
医療を受ける子どもの様々な不安や恐怖を、子どもがわかる方法で説明し、子どもの心理的な混乱を予防したり緩和したりすること
と教科書や文献では定義されています。
定義を見るとなかなか実際にやることが難しそうに見えるかもしれません。しかし実際アニーのスタッフはプレパレーションを普段の保育や看護の中ですでに行っているんですよ、という話が実際の動画と共に紹介されました。
日々の保育の中にあるプレパレーション
例えば、訪問した看護師が子どもに聴診器を当てる際に
「もしもししてもいいですか~?」(聴診器を目の前に出して見せる)
という言葉をかけている様子。お子さん自身も「うん」と答え、上手に洋服をめくり上げて、聴診器を当てやすいようにおなかを出して待っていました。
また食事の前に、歌に合わせて一緒に手を拭いている様子。お子さんの年齢や発達に合わせて事前に説明して歌に合わせて行うことで楽しく手洗いができる工夫がされていました。
子どもなりの納得が生きる力を育む
このような事前の準備によって、治療や処置の必要性を子どもなりに理解し、納得することができます。そして納得して行ったことがうまくいったときに、自信が生まれ自己効力感が育つのです。このプロセスが子どもの生きる力を育むことにつながると私たちは考えています。
プレパレーションには様々な方法がありますが、お子さんの年齢や発達に合わせて、適切な方法を選択することも大切です。
そこで、実際にどのような場面でプレパレーションを取り入れることができるかを考えるワークショップを行いました。
子どもの年齢や発達・特性、そしてどんなことを伝えるかという設定は各グループで決めました。
会場にはプレパレーションに使えそうな様々なグッズが並びます。
あるグループでは現在担当しているお子さんとの間で実際にあった事例を話し、またあるグループではこれまでの経験から知っていることを共有しながら、どう説明しようかという話し合いが進みました。ここで、ひとつのグループの考えたプレパレーションをご紹介します。
テーマとしては、日常的には必要ないけれど、呼吸状態が悪くなったときに酸素の補助が必要なお子さんに対して、
・酸素が流れてくるチューブをつけることで、息が楽にできるようになること
・息が苦しいときにはヘルプのサインを出して、そのことを周囲に伝えてほしいこと
の説明をする場面です。
保育スタッフ「ねえねえ見てみて。苦しくて顔が真っ青になったサリーちゃんがいるよ。◯◯ちゃんは息が苦しいときっていつもどうしてる?」
◯◯ちゃん(チューブを指差す)
保育スタッフ「そうチューブつけるよね。じゃあサリーちゃんにもつけてあげようか」
(一緒にチューブをつける)
保育スタッフ「見てみて、さっきまで息が苦しそうだったけど、今は楽になったみたいだね。なんで楽になるんだろう。看護師さんから教えてもらおう。」
看護師「◯◯ちゃんの胸の中にもある肺は、こんな風船みたいな形をしているよ。空気を入れて膨らませてみようね。」
(風船に空気を入れ、サリーちゃんの反応を見る)
看護師「サリーちゃんはまだ苦しそうだね。もうちょっと空気入れてみようか。」
(さらに風船に空気を入れる)
看護師「大きく膨らんだ!苦しかったときに萎んでた肺は、空気を入れて膨らんだね。酸素は空気をたくさん入れる助けになるんだ。あとさ、見てみて。サリーちゃん、息が苦しそうなときに鈴を鳴らしてたね。鳴らしてたから先生たちも、早く酸素チューブをつけなくちゃって気づけたよ。◯◯ちゃんも、息が苦しいときは鈴を鳴らしてみよう!そうすると先生だけじゃなく、周りの人にも助けてって伝えることができるよ。」
このような声掛けは普段から保育スタッフや看護師がやっていることかもしれません。
それを プレパレーションという視点から捉え直すことで、さらに保育での関わり方に工夫が生まれていきそうだと感じました。
今後も子どもの納得感を大切にすることで生きる力を育んでいけるよう、保育と看護の両輪で進んでいきます。
障害児訪問保育アニーでは、新しい仲間を募集しています。
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