こんにちは!フリーライターの小晴です。
2019年2月17日(日)、第3回となる「プロフェッショナル 保育の流儀」が東京都港区のアララ株式会社ラウンジで開催されました。
「プロフェッショナル 保育の流儀」とは、小規模保育所、認可保育所、障害児保育園、病児保育など、多様な保育現場を運営する認定NPO法人フローレンスが運営するオウンドメディア「スゴいい保育」が主催するイベントです。
主に現場で働く保育士の方を対象に、保育に関する気づきを提供することを目的として開催しており、今回は第三回目を迎えました。
今回はなんと、「日本一有名な保育士」と呼ばれるてぃ先生をゲストスピーカーとしてお迎え!当日は70名以上の保育関係者の方にご参加いただきました。
てぃ先生
Twitterフォロワーが46万人を超えるカリスマ現役保育士。読み方はT先生。ブロガー、コラムニスト、保育園の監修・研修、アドバイザー、講演会、保育・育児事業企画など。著書はコミックも合わせて累計50万部を突破。保育園の口コミサイト「保育地図」を監修。
イベントのテーマは、「自分の保育の理想と現実。このギャップ、どうやって埋めればいいの!?」です。
てぃ先生による講演のほか、てぃ先生と現役保育士3名によるパネルディスカッション、参加者同士のグループディスカッションなど盛りだくさんの内容で行われました。こちらのレポートでは、その一部をお届けします!
その“常識”、本当に正しい?
拍手で迎えられたてぃ先生。壇上に上がるなり、参加者に向けてクイズを出題しました。
「ムダ毛は剃ると濃くなる。〇か×か」
……え?それって保育と関係あるんですか?
「ゴリラはグーで胸をたたく。〇か×か」
こんな質問に、会場からはどよめきが。てぃ先生は、気にせず「〇だと思う人は挙手してください」と呼びかけます。
全ての質問に対して◯に手を上げた人が多い中、てぃ先生が明かした答えはというと……なんと、「全部×」!これまで自分が“常識”だと信じていたことが間違っていたという事実に、会場からは驚きの声が上がっていました。
てぃ先生が伝えたのは、こういうこと。
「みんなが“常識”だと思っていることが、必ずしも正解だとは限りません」
「実はこれって、保育の世界でも同じなんです」―――。
自分の理想の保育を実現するには、まずは保育士自身が幸せになることから
全国での講演活動が年間50本にものぼり、柔軟な発想で人気を呼んでいるてぃ先生でも、保育の現場で働き始めてからは理想と現実のギャップに悩んだことが何度もあったそうです。
例えば、保育現場の事務作業の多さ。
当時所属する保育園では、てぃ先生だけではなく保育士はみんな、多すぎる事務作業に毎日追われて余裕をなくしていました。
そんな中でてぃ先生が考えついたのは、事務作業にかかった時間を記録し、可視化することでした。
実際に可視化してみると、季節を感じる飾りなどを手作りして保育室を飾る「壁面構成」に、膨大な時間を費やしていたことに気付いたそう。
ですが、「この作業は、本当に今まで通りのやり方でやらなきゃいけないことかな?」と改めて考えてみたところ、決してそうではなかったと語りました。
視点を変えることが大切だと気付いたてぃ先生は、「壁面構成は、保育士が一から手作りしなければいけない」という常識を捨て、過剰な手間暇をかけることをやめる決断をします。
以後は子どもの作った作品をうまく活かした飾りつけに路線変更し、作業時間を大幅に削減しました。
その結果、業務の効率が大きく改善され、時間にも気持ちにも余裕が生まれたそうです。
「自分の理想の保育を実現するには、まずは余裕をつくるところから」と語るてぃ先生。
「子どものためだからと考えすぎて、自分自身を犠牲にしすぎていないか見つめ直してほしいんです。
もはや“苦労が美徳”の時代ではない。
自分たちが幸せになることで、結果として子どもも幸せになれるのではないでしょうか。」
たとえ保育業界ではまだ“常識”と言えないやり方やツールであっても、活用することで余裕が生まれ、よりよい保育を提供できるようになるのなら、使わない手はありません。
これまでの常識に固執するのではなく、頭を柔らかくして視点を変えてみることの大切さ、理想の保育の実現には保育者の余裕が何より大切なのだということを、改めて気付かせてくれる貴重なお話でした。
目からウロコ!保育現場の悩みを柔軟な視点で解決
続いて行われたのは、てぃ先生×現役保育士のパネルディスカッション。
フローレンスの保育現場で働くスタッフ3名(みか先生/ゆみこ先生/りな先生)が登壇、実際に働く中で感じている「保育の理想と現実のギャップ」について語り、てぃ先生や会場の参加者らと意見交換を行いました。
特に印象的だったのは、りな先生の「子どもを甘えさせる/甘やかすの線引きが難しい」というお悩みに対する、てぃ先生のコメント。
この線引きは保育現場でも難しく「これは甘やかしなのかな?」と悩む保育士も少なくないそうです。
てぃ先生が出した答えは、
「子どもが求めている、必要としていることにこたえて安心させることが“甘えさせる”」
「子どもが求めていないのに、大人が勝手に察して先回りするのが“甘やかす”」
わかりやすく的確な説明に、会場からも納得の声が上がっていました。「甘やかしでは?」と迷ってしまったときは、ぜひこの言葉を思い出してみてはいかがでしょうか。
野菜って、どうしても食べさせなきゃいけないもの?常識にとらわれない視点を磨く
後半は、会場の参加者だけでなく、オンライン中継の視聴者も参加して、てぃ先生に質問できる時間が設けられました。
今回は「sli.do(スライドゥ)」というツールを使い、参加者・視聴者はスマホからメッセージを送るというかたちでてぃ先生に質問。匿名でメッセージを送ることができる気軽さゆえか、会場内外からたくさんの質問が寄せられていました。
壇上のスライドに表示される質問に対し、てぃ先生は笑いを交えつつ和やかに、かつビシバシと率直に回答してくれました。
実際に寄せられた質問の一部と、てぃ先生の回答はこちら
Q.「怒る」と「叱る」はどう違う?
A.「怒る」は、子どもが大人の都合通りに動いてくれないときに一方的に注意すること。「叱る」は、子どものことを考えて「悪いことは悪い」ときちんと教えること。似ているようで全然違います!
Q.保育園で子どもが軽いケガをするのは当たり前で、子どもの学びにも必要なことですが、わかってくれない保護者も。どうすれば納得してもらえる?
A.僕の園では、入園説明会のときに「うちでは必ずケガをします」と伝えています。ケガをしてから説明しても理解してもらいにくいので、発達段階でケガが起こり得る“前”に先回りして説明し、あらかじめ納得してもらうのがポイントです。
中でも参加者をあっと驚かせたのが、「子どもに野菜を食べさせるにはどうしたらいいか」という質問への、てぃ先生の「野菜ってどうしても食べなきゃいけないんでしょうか?」という回答です。
てぃ先生は「『伝説のニンジンだ!』といって子どもに観察などをさせたら、苦手なニンジンも食べてくれました」と語りつつも、
「子どもの舌は敏感で苦みを感じやすく、野菜が苦手な子が多いけれど、歳をとると舌が鈍感になるので自然と食べられるようになるんです。
だから今、絶対に食べさせなきゃいけないわけではないのでは?」
ときっぱり。
てぃ先生の視野の広さと、常識にとらわれない発想の柔軟さを強く感じさせられた一幕でした。
悩みを共有し、明日できる「理想と現実のギャップの埋め方」を探る
さらに、当日は参加者同士のグループディスカッションも実施。
5~6人でグループをつくり、講演やパネルディスカッション、質疑応答の内容を踏まえて、「明日から、理想と現実のギャップを埋めるために“具体的に”何ができるか」を話し合いました。
ディスカッションの内容もグループによってさまざまで、「業務を可視化するにはどんな方法が最善か」を議論したところもあれば、お互いの園の話を共有することで理想の実現のためのヒントを出しあったところ、職場の人間関係の悩みを相談しあったところも。
みなさん、各自が自由に考えを述べ、他の園の取り組みからヒントを得たり、共感しあったりアドバイスしあったりと、有意義な時間を過ごすことができたようです。
固定観念にとらわれない、柔軟な発想の大切さを再認識
てぃ先生の明るいキャラクターとユニークな語り口、目からウロコの自由な発想のおかげで、最後まで和気あいあいとした雰囲気で進んだ今回のイベント。
参加者の方々はてぃ先生の自由な発想に驚いたり、感心したり、共感の声を上げたりと大変盛り上がっていました。
イベント終了後のアンケートでは
●保育の現場で働く先生方がみんなこんな風に考えられたら、もっと仕事が楽しく、やりやすくなると思った。
●てぃ先生のハキハキした言葉に元気をもらった。前向きな気持ちで頑張っていきたい。
●フローレンスの多様な保育現場に興味を持った。転職も考えてみたい。
など、たくさんの声が寄せられました。
てぃ先生は最後に、保育現場で働く人たちにこんなメッセージを残してくれました。
「保育士全員が足並みをそろえる必要なんてないんです。
全員がオールラウンダーになる必要もなくて、性格や得手不得手はバラバラでいい。
得意な人が得意なことをやって助け合れえばいいんだと思います。
子どもたちがいずれ社会に出たら、いろんな人がいるのだから」。
てぃ先生が講演で話していたいた通り、保育士は「子どものために」と自分を犠牲にしてしまいがちです。ですが、保育士も一人の人間。
まずは保育士自身が幸せになってこそ、理想の保育を実現できるようになり、子どもを幸せにできるのではないでしょうか。
そのためには、やはり保育士が余裕を持ち、笑顔で働けるような環境の実現が不可欠です。
固定観念や常識にとらわれず、てぃ先生のように柔軟な発想で業務を効率化することの必要性、保育士が笑顔になれる環境づくりの大切さについて、今一度考えさせられるイベントでした。
今回レポートをお届けした「プロフェッショナル 保育の流儀」は、認定NPO法人フローレンスが運営するオウンドメディア「スゴいい保育」が、保育現場をよりよくするアクションとして定期的に開催しているイベントのひとつです。
フローレンスは「親子の笑顔をさまたげる社会問題を解決する」ことをミッションとして掲げ、小規模認可保育所、障害児保育園、病児保育などの運営を通していろんなかたちの保育をおこなっています。
スタッフ一人ひとりが保育に対する熱い想いをもち、「子どもたちが自ら成長する力」を信じ、そして育むことができる保育を実現するべく奮闘中とのこと。
そして同時に、こうしたイベントを通して、みなさんへ保育に関する有益な情報を日々提供しています。
今回開催の第3回を含め、「プロフェッショナル 保育の流儀」で伝えられている内容は、保育業界に携わる方にはぜひ聞いてほしいものばかり!レポートだけではとても伝えきれません。
今回のイベントに興味を持った方、フローレンスの発信する保育情報や活動が気になる方は、ぜひ「プロフェッショナル 保育の流儀」のFacebookグループにご登録をお願いします。
グループ内では、当日の講演・パネルディスカッションの模様の紹介や、イベントによってはLive中継の視聴もできます。
次回のイベントについても決まり次第告知するので、次は参加したい!と考えている方もこの機会にご登録ください♪
「プロフェッショナル 保育の流儀」Facebookグループへのご登録はこちら
※こちらのFacebookグループは参加者のみなさまに「こんな保育もあるのか」という気付きを得ていただくこと、そのために参加者同士の繋がりを確保することを目的として運営しております。その他の目的でのご利用は一切禁止となっておりますので、ルールの厳守をお願いいたします。
また、イベント情報に関してはLINE@でも発信を行っています。まだ登録されていない方は、こちらもぜひ登録をお願いします!
小晴
平成元年、福井県生まれ。早稲田大学法学部卒。出版社での雑誌編集、web制作会社でのライター業を経て、フリーライターとして活動中。「文章を通してひとの暮らしをよりよくする」をモットーに、美容からライフスタイルまで、女性向けを中心に幅広い分野の記事執筆を手がける。大学のゼミで「子どもの貧困」について研究した経験から、フローレンスの活動・信条に強い共感を抱き、コンテンツ制作に参画。