日本初の訪問型病児保育を始めて15年。日本初の障害児保育園を開園して5年。フローレンスではのべ65,000回以上病気の子どものシッターを行い、100人以上の障害児に保育を届けてきました。
そんな私たちが新しく立ち上げる「医療的ケアシッター ナンシー」が取り組むのは「医療的ケア児専門のシッター事業」。
立ち上げの背景には、いくつもの社会課題がありました。
「子どもが生まれてから、一度も熟睡したことがない」――医療的ケア児の過酷な子育て
「医療的ケア児」とは、気管切開や経管栄養(胃につないだチューブで栄養を取る)など、何らかの医療的ケアを必要とする子どものこと。医療の発達により助かる小さな命が増え、医療的ケア児の数は全国で約18,000人いるといわれています。
医療的ケアには様々な種類がありますが、なかには気管切開や人工呼吸器、たんの吸引など、適切な処置がなされないとすぐに命の危険に直結するものもあります。
また、ひとくちに「医療的ケア児」といってもさまざまで、医療器具をつけている以外は普通の子どもと変わらないように、元気に動き回る子どももたくさんいます。何かの拍子に医療器具が外れてしまうケースも珍しくありません。
想像してみてください。
電車やスーパーマーケットでよく見かける、にぎやかに動き回る子どもから、少しも目を離すなと言われたら?
そして、こんなにも元気なのに、目を離したその数分が生死を左右するかもしれないとしたら?
しかも、そんな緊張状態が24時間続くとしたら?
あまりに過酷な生活ではないでしょうか。
夜、人工呼吸器を使用する医療的ケア児の親御さんの多くは、異変があったらすぐ気づけるように、人工呼吸器のアラームを最大音量にして眠ります。
「子どもが生まれてから、一度も熟睡したことがない」という声も少なくありません。
サポートの不足
このような過酷な子育てにおいて、「休息する」ということが、その言葉からイメージされる以上の緊急性を持っていることは、言うまでもありません。
福祉では、この休息はレスパイト(respite=「休息」「息抜き」「小休止」)と呼ばれています。
しかし、医療的ケア児の子育てに対するレスパイト支援は圧倒的に不足しています。
・ヘルパーさんを利用しても、医療的ケアはできません。常に保護者の同伴が必要です。
・訪問看護が来てくれても、1回あたり最大90分。親が離れられる時間はわずかです。
東京大学家族看護学分野 上別府研究室の調査によると、現状では、9割以上の家庭で医療的ケア児の母親が介護を主に担当しています。
また、母親の約7割は就業しておらず、医療的ケアを独りで担っているケースも10.9%存在。
暮らし向きが「大変・やや苦しい」と回答した人は42.0%にのぼります。
子どもは社会で育てるもの、そして、つらい時こそ支える手がたくさん必要なのに、制度のはざまで過酷な生活をしている親子がたくさんいるという現実があります。
「医療的ケアシッター ナンシー」が支えます
訪問型病児保育と障害児保育のパイオニアであるフローレンスは、「医療的ケア児の子育てでも、シッターのように使える仕組みがあればいいのでは?」と考えました。そして生まれたのが、「医療的ケアシッター ナンシー」です。
一般のシッターでは、医療的ケアができません。
だから、ナンシーで働くスタッフは、みんな小児看護経験のある看護師です。
看護師が、毎週決まった曜日・時間にご家庭を訪問し、親の付添いなしでお子さんのケアをすることで、親が休息できるようになります。
ナンシーの画期的なところは、1回あたりの訪問時間が長く、利用者負担が少ないこと。いくつもの制度を組み合わせることで、この事業モデルを可能にしました。
現在行っているテストサービスでは、1回あたり3時間のお預かり例もあります。
「休みたい」、「買い物に行きたい」、「髪を切りに行きたい」……誰もがあたりまえにできることを、障害児の親御さんも叶えられる社会を目指して、ナンシーは走り出そうとしています。
「医療的ケアシッター ナンシー」では、現在看護スタッフを募集しています。
日本初の試みに挑んでみたい方、小児看護の経験を活かしたい方、一人でも多くの親子の「やってみたい」を一緒にかなえませんか?
8/30(金)には医療的ケアシッターナンシーの看護師と話せる採用説明会も開催予定です。まずはお気軽にご参加ください!
フローレンスはこれからも、親子の笑顔のために、社会課題に取り組み続けます。