「小1の壁」は特別支援学校にも
共働きの家庭を悩ませる「小1の壁」。
小学校に入学すると、保育園時代よりも仕事と子育ての両立がしづらくなることを指す言葉ですが、実は、「医療的ケア児」とその家族の前にも、高い「小1の壁」が立ちはだかっていることをご存知でしょうか。
保育の先にあった、大きな課題
気管切開や経管栄養(胃に繋いだチューブから栄養をとる)といった医療行為で命をつなぐ医療的ケア児。生きるのに必要な医療的ケアは、親と医療資格を持つ専門スタッフにしかできません。そのため、通常の保育園への入園が難しいという問題があります。
フローレンスでは、2014年に日本で初めて障害児専門の長時間保育を可能にした「障害児保育園ヘレン」を開園、翌年には「障害児訪問保育アニー」をサービスインし、今年で5年。
それまで極端に不足していた医療的ケア児の保育に取り組み、いまでは卒園する子どもも出始めています。
障害児の母親の常勤雇用率は5%にとどまっています(※)が、ヘレン・アニーを利用する親御さんは、希望する全員が働けるようになるなど、就労の面でもご家庭をサポートしてきました。
※出典:厚生労働省「全国家庭児童調査」(平成21年度)障害(児)者の家族の健康 生活調査大阪実行委員会「障害(児)者・家庭のくらしと介護者の健康調査」(平成8年)
しかし、ヘレンやアニーを卒園し就学していくお子さんたちを見送る中で、私たちは保育の先にあった「医療的ケア児小1の壁」とよばれる問題を知ることになりました。
放課後、行き先のない医療的ケア児たち
「医療的ケア児小1の壁」を作っているものには、たとえばこんな問題があります。
●「放課後、預け先がない」問題
●「勉強したいのにできない」問題
今回は、「放課後、預け先がない」問題についてご紹介します。
障害児の学童保育と呼ばれることもある、放課後等デイサービス。
実は、放課後等デイサービスで医療的ケア児を預かることのできる施設はほとんどありません。
特別支援学校の授業の終了時間は、14時~16時頃です。
その時間から親御さんが帰宅する夜まで、医療的ケア児を見てくれる人は誰もいないのです。
せっかく子どもが特別支援学校に通うことができても、親はフルタイムで働くことができません。
「働きたい」を一緒に叶える
9月から正式サービスインする「医療的ケアシッター ナンシー」は、看護師による医療的ケア児のためのシッターサービス。
「働きたい」を叶えるために、ナンシーを使っていただくこともできます。
ナンシーの特長は、複数の制度を組み合わせていること。
移動支援制度(※)が利用できるご家庭の場合は、特別支援学校への送り迎えにナンシーを活用していただくことも可能です。
※障害者総合支援法にもとづく生活支援事業サービスの一つ。移動が困難な障害者などに対してヘルパーによって行われる地域生活支援事業。
テストサービスでは、放課後にナンシーのスタッフが特別支援学校までお迎えに伺い、ご自宅で親御さんのご帰宅までお預かりする、という利用例もありました。
「働きたい」。
そんな願いが、医療的ケア児を子育てしながらでもあたりまえに叶えられる日を目指して、ナンシーは第1歩を踏み出そうとしています。
「医療的ケアシッター ナンシー」では、現在看護スタッフを募集しています。
日本初の試みに挑んでみたい方、小児看護の経験を活かしたい方、一人でも多くの親子の「やってみたい」を一緒にかなえませんか?
フローレンスはこれからも、親子の笑顔のために、社会課題に取り組み続けます。