フローレンスには病気のお子さんをご自宅でお預かりする病児保育、子どもとしっかり向き合うことを大切にしている少人数での保育、障害のあるお子さんをお預かりしている障害児保育と様々な保育の形があります。
近年、すべての子どもが個々に必要な支援を受けながら同じ場で保育を受けることを実現していきたい想いから、健常児と障害児の交流が盛んになってきています。
そこで6月の保育塾では、そのようなインクルーシブ保育を実現するために何をしていくか、その前提となる姿勢について学ぶ「明日からの交流保育が変わる!~交流保育をより良くするために~」を開催いたしました。
保育塾とは、フローレンスの全ての保育現場スタッフに向けた自主参加型の研修です。現場スタッフの「知りたい!」や「学びたい!」に応えられるように、毎月違うテーマで研修を行っています。
今回は、障害児保育園ヘレン 保育スーパーバイザーの中村ときわ先生にお話をしてただきました。
「すべての子どもが共に成長できる」とはどういうことなのか?
インクルーシブ保育とは「子どもの年齢や国籍、障害の有無に関わらず、すべて子どもが個々に必要な支援を受けながら同じ場で保育を受けられる」ものと定義されています。
つまり、本来のインクルーシブ保育の考え方からすると、障害のある子どもだけに特化したものではなく、いろいろな面から子どもの特性を見ていく必要があります。そしてそれぞれの子どもたちにどのような違いがあり、何が必要なのかを発達に合わせて考えていくことが大切です。
インクルーシブ保育の良い面は、
・多様な人との関わり方を学べる
・「違い」から様々な刺激を受け、子どもの成長に繋げられる
といった点があります。
一方で難しい点としては以下のようなものが挙げられます。
・保育者がより多くの支援が必要な子どもにつきっきりになりかねない
・活動内容によっては物足りなさを感じる子も出てくる
(引用元:https://hoiku-shigoto.com/report/archives/16843/)
普段の保育の中でインクルーシブ保育が実現できる場面があるとよいのですが、実際はどのような観点を大切にして計画を立て、その場ではどのような動きをすればよいのでしょうか。
そこでまず考えたいのが、“みんなといっしょ”という言葉です。
“みんなといっしょ”とはどういうことか?
例えば『母の日にみんなと一緒にカーネーションを作る』という活動について考えてみます。
障害のある子は作っているその場にいるだけで、先生が子どもに代わって、作品を作ってしまい、その作品を子ども自身がよく分からないまま渡されたとしたら、それはどのような意味があったことになるでしょうか?
みんなで同じように活動することは一見良さそうなことに見えます。しかし必要なことは子どもによって様々。その子の発達に応じて、どんな機会を作ってあげられるのかが問われるのです。
『他の子と一緒のことをしなければならない』から『その子の”楽しい”は何か?』へ
定型発達の視点から、「同じことををしないと障害のある子も参加したとは言えないんじゃないか」という固定観念にとらわれてしまい、「どうやって参加させよう?」と考えてしまうことがあるのではないでしょうか。
しかし、大勢の子どもの発達に合わせると、障害のある子はその子がその時の自分の力で何か成し遂げることをなかなか経験することができません。
インクルーシブ保育とは、定型発達の子・障害のある子どちらかのレベルに合わせることではなく、個々の参加のあり方を考えることなのです。この子はどの辺りまで参加できたら、いいものを引き上げられるだろうかと考えることなのです。
そして施設などのハード面からだけではなく、保育士がどれだけその子の発達を理解し、必要な経験をどう捉えるかが最も重要であり、専門性が必要になってきます。
集団の中で障害のある子どもの支援をどのように行っていくか
さて、集団の中で保育を行うにあたり、実際行えることは何か、考えてみましょう。
まずは障害名にとらわれず、一人ひとりの特性を知ることが重要です。勝手な想像で子どもの特性を決めつけるのではなく、時間をかけて子どもの反応を観察し、その子の「楽しい」を見つめていくことで、参加のあり方を明確にしていくことができます。
保育塾後半のワークショップでは、子どもの特徴を例示し「このようなお子さんに対してどのような関わりをするか?」というテーマでグループディスカッションを行いました。
グループディスカッションの中では、
「今やっていることを絵カードで提示する」
「過敏のあるお子さんにはやわらかい布を用意する」
といったように、異なる事業部同士で普段行っていることの情報交換をすることもできました。
参加者の感想の中には
「普段見ることのできない園の関わりや取り組みを聞くことができた」
「”参加する”だけがインクルーシブと思っていたのですが、本当の意味で、参加してよかったと本人が思うためには、保育者や支援者が、その子の表出や視線などを常に気を付けなければいけないのだと感じました。」
といったものがありました。
今回の保育塾を通して、インクルーシブ保育、とりわけ健常児と障害児の交流保育に おいては、目に見える「一緒の活動」だけでなく、子ども自身の内側で何が起きているかを見抜けているかが重要な鍵であることが分かりました。
その結果、どのような支援をしたのか、どのような経験をさせられたのかがインクルーシブ保育で問われる点なのです。
今後も引き続き、様々な保育現場のスタッフが交流できる場をつくっていきます。
次回の保育塾の報告もお楽しみに!