毎年、およそ100人に1人の妊婦さんが、双子や三つ子などの多胎児ママになっています。
新生児期の授乳回数は1日8回~12回といわれており、単純計算で双子の場合は16回、三つ子では24回。
もちろん、毎日の送り迎え、お風呂、おむつ替え、寝かしつけ…も人数分です。
これを、もし母親が日中独りでこなすとしたら・・・?
そんな悲鳴が現実となった悲しい事件の実刑判決が報道されました。
フローレンスは、母親の孤育て問題、赤ちゃんやこどもの虐待死問題解決に取り組む認定NPO法人です。
わたしたちフローレンスの赤ちゃん縁組事業部に所属する市倉加寿代が始めた、ソーシャルアクションをご紹介させてください。
市倉は、双子の育児に奮闘している友人を手伝ったことがきっかけで、多胎育児の壮絶さを目の当たりにし、「問題に気づいたなら声をあげないと、いつまでも繰り返される」と考え、個人で「多胎育児のサポートを考える会」を立ち上げ、多胎家庭の声を国や自治体に届けるためのアンケートを9月に開始しました。
アンケートは、開始1日で200件を突破!現在600件を超える保護者から生の声が届いています。市倉の想像以上に、「多胎児育児の大変さ」「多胎育児へのサポートの少なさ」について多くの声や関心が寄せられたことを受け、フローレンスと市倉は、全国的な多胎家庭の実態調査を10月20日(日)まで行うことにしました!
このアンケート調査結果は、11月初旬に厚生労働省にての記者会見で発表し、多胎育児のリアルな現状とどのようなサポートが必要かを明らかにし、広く国や自治体に訴えていきます。
双子・三つ子のママ・パパはもちろん、知り合いに双子・三つ子のママ・パパがいるよ!という方は、ぜひアンケートのシェアにご協力ください!ハッシュタグは#助けて多胎育児
▼フローレンス赤ちゃん縁組事業部の市倉が「多胎育児のサポートを考える会」を始めたきっかけと、熱い想いはぜひ、以下をご覧ください。(市倉加寿代のnoteより転載)
はじめまして、市倉です。
フローレンスという、子育てに関わる社会問題を解決するNPOに勤める傍ら、【多胎育児のサポートを考える会】なるものをやっております。
【双子三つ子ママパパに届け】
多胎育児の壮絶さ・リアルな声をを区議や都議に届けるため、アンケートにご協力ください。数が多いほどパワーがあります!
きっかけは、双子を持つ友人の育児を手伝ったこと
わたしには、双子を授かって2年前に出産した友人がいます。
彼女は小さい頃からの友人。(そう考えると20年以上のお付き合い・・)
自分の第2子と、彼女の第1子が同じ学年に生まれて同じタイミングで育休をとったことで、よく時間を合わせては会っていました。
それから数年、彼女は双子を妊娠し、出産します。
妊娠期からハードな生活(当たり前ですがお腹は二人分大きくなるし、いつ医者から【今から管理入院ね】と言われるかわからない状況が続きます)でしたが、出産後にそれは加速。
「余裕、ないんだろうな・・・」と感じるようになりました。でもまだ他人事。というか、想像が出来ていなかったのです。双子育児がどんなものなのか。
あるとき、自分の予定と予定の間がぽっかり空いたため、保育園の降園を手伝う機会がありました。
彼女の子供はこの時、3歳と1歳・・・だったかな。上の子供はまだまだ交通ルールをきちんと守れる年齢ではないし、下の子はベビーカーにおとなしく乗ってくれません。
この日も、ベビーカーには断固のらないと主張する上の子と双子。それを(大変そうですね・・)という目で見る保育士。3人分の荷物とベビーカー、そして10段ほどの園の階段を前に、困り果てる彼女。
わたしは「え・・・これを毎日ひとりでやってるの・・・?」と驚き、彼女に聞きました。
緊張がはりつめる毎日
彼女は、「そう。お迎えが終了すると、『今日も無事に家に帰れた』って思う」と。
その日は結局、上の子も下の双子もベビーカーには乗ってくれず、下の双子とわたしが手をつなぎ、上の子を自由に歩かせ(とはいえ常に気を張っている)、彼女は3人分の保育園バッグが乗った荷台となったベビーカーを押して帰りました。
そんなに車通りの多くない道ですが、それゆえ車道と歩道がきちんと分かれていない道もあり、危険だらけ。大人2人でも大変な帰り道。
彼女は、はりつめた緊張の中で、大人なら5分の距離を、30分かけて毎日降園していたのです。
ずっと続く、一息もつけない育児
エレベーターでは他の階のボタンをおしてしまう、扉の近くに手をおいてしまう、部屋の直前でころんで響き渡る叫び声、玄関では靴が脱げないから泣く子、手洗いに素直にいってくれない子をなだめすかして連れて行く傍らで、つたない言葉で必死に何かを伝えようとする子・・・
その中で、なんとかご飯を用意して、食べさせ(ここも大変だったけど割愛)、お風呂にいれ(これが本当に一番大変だったけど割愛)、歯磨き、子どものスキンケア、寝かしつけ・・・
21時に寝かせるまでは彼女は1秒も椅子に座ってませんし、トイレも行けてないし、お茶も飲めてません。誇張なしで。
双子の寝かしつけが終わったら、上の子のケアと、ご飯の片付け、保育園の準備、洗濯・・・
これが毎日毎日繰り返されるわけです。
それを目の当たりにしたわたしは、いてもたってもいられなくなり、彼女の保育園お迎え~双子の就寝までを、時々手伝うようになりました。
段々と見えてくる、多胎育児のリアル
そんな中で、彼女が置かれている状況が少しずつ、リアルに分かるようになっていきました。
例えば。
彼女には時々、区の支援センターから電話がかかります。そのときによく言われるのが、『大変ならファミサポ登録してくださいね』という言葉。
でも、ファミサポの登録会は月に一度、決まった時間に決まった場所に出向かなければなりません。駅から離れているので、バスかタクシーでないと行けない場所。
以前都バスに乗車を拒否されたり、子ども3人をきちんと支えられず運転手に怒られた経験がある彼女は、バスに乗るという行為にすごくハードルを感じています。
タクシーも同様で、双子用ベビーカーがタクシーの後ろに載らない、ベビーカーを畳んでいる間に子どもがどこかに飛び出さないか危険で困る。
本当に、外出と移動が困難なのです。
なのに、外出を前提とする公的なサービス。無理解な職員の応対。
そういった一つ一つが、彼女の心を疲れさせているのが、よくわかりました。
声をあげないと、いつまでも繰り返される
そんな彼女をそばで見ていて、ボランティア的な関わり(自分の余裕のある時にしか手伝えない)しか出来ないことが悔しい。
そして、そういう友人や親がいない人は、もっともっと追い詰められているんだな・・と思うようになりました。
わたしは普段、フローレンスという、子育てにまつわる社会課題を解決するNPOで、赤ちゃんの虐待死問題を解決するために活動をしている「赤ちゃん縁組事業部」で働いています。
フローレンスでは、病児保育や、小規模認可保育、障害児保育など様々な分野で、子育て領域のあらゆる社会課題を解決する道を先輩が切り開いてきました。
なので、どうすればこういう問題が解決するのか、なんとなく、本当になんとなく知っている。だから、やるしかない。
何より、問題に気づいたなら声をあげないと、いつまでも繰り返される。そう思うようになりました。
自分にできることって、なんだろう
とはいえ、個人でできることなんてたかが知れています。
わたしに出来ることは、声を上げる時間も気力もない双子親の問題を伝えること。
だから、同じ立場の人の声を集めて、国や自治体に届けたいと思い、9月末からアンケートを開始しました。
アンケートで浮き彫りになった、多胎家庭の叫び
9月に開始したアンケートは、開始1日でなんと200件を突破(!)。
驚いたのと同時に、『それほどまでに、今まで悩みを言う場がなかったんだろうな・・』『きっと1人で抱えてきたんだろうな・・』と想像し、涙が出てきました。
内容も、想像よりずっと、ずっと壮絶。『双子の泣きにそれぞれ対応していたら、15時間たっていました』『乳児期の一日の睡眠時間、16分』『気が狂うかと思った』『目の前のことをこなすのに精一杯で、一分先のことを考えられない。余裕がない。』・・・・これは、本当にほんの一部です。
みんな、限界ギリギリの、いやもしかしたら限界を超えたところで、孤独に、だけど強い責任感のなかで子供の命を守っている。
その現状が、よくわかりました。
今後やっていくこと
アンケートは、10月20日まで絶賛募集中です。
私の所属するフローレンスもバックアップしてくれ、この動きをより大きく、広く世の中に提起してしていくつもりです。(具体的には、11月に厚生労働省での記者会見を予定しています。)
三つ子家庭の、悲しい事件。私の活動は、意図せずこの事件の判決と時期が重なりました。アンケートでは、この三つ子事件へのコメントも複数頂いています。こんな悲しい事件が、多胎育児のサポートを世の中が考えるきっかけになるのは、もう最後にしたい。
当事者の代わりにはどうしてもなれないけど、少しでも彼女・彼たちの育児が楽になればいい。『子供ってかわいい。育児って楽しい』を感じられる生活になればいい。
それを目指して、微力ですが、頑張りたいと思います。
読んでくれた方へ
お願いがあります。
このアンケートを、知り合いの双子・三つ子のママ・パパへシェアしてもらえませんか?
たくさんの声を集めて、国へ持っていきたい。数が多いほど、議員さんや自治体に、インパクトを残せます。
そのために、力を貸して下さい。よろしくお願いします。