個人でフローレンスを応援してくださっている寄付者の方を対象にした事業報告会が、10月20日、都内某所にて開催されました。そこでフリーランスのライターであり、子どもが障害児保育園ヘレンに通う母親でもある筆者が、現場に潜入! その気になる内容をたっぷりレポートします。
この日は休日の昼間ということもあり、参加人数はなんと114名! 中には東北や四国など遠方から駆けつけてくださった方や、小さなお子さん連れの方も。
フローレンスユーザーでもある筆者としては、支えてくださっている方の、しかもこれだけ多くの方の姿を目の当たりにし、すでに胸がいっぱいです。
15年前 今あたりまえにあるものがなかった時代
冒頭、フローレンスの15年間を振り返る映像が流れた後、まず登壇したのは代表の駒崎弘樹さんです。
「僕がフローレンスを立ち上げた15年前は、今あたりまえにあるものがなかった時代でした」と切り出し、これまでフローレンスが取り組んできた事業について語られます。
フローレンス設立のきっかけとなった病児保育事業に始まり、そこから派生した貧困に悩むひとり親家庭の親子支援について。定員19人以下の“おうち保育園”は、小規模認可保育所が誕生するきっかけになり、“障害児保育園ヘレン”と“障害児訪問保育アニー”では、異なる2つの制度を組み合わせることによって医療的ケア児の保育を可能にしました。さらに近年は子どもの虐待死問題のための「赤ちゃん縁組事業」、子どもの貧困解決のための「こども宅食事業」など、よりディープな社会問題にも切り込んでいます。
寄付者の皆さんの存在が原動力になった
では駒崎さんの言う「親子の笑顔を妨げる社会問題」に対し、フローレンスは具体的にどう立ち向かっているのでしょうか。「こうしたら解決出来るかもしれないという小さな“解”を見出し、政治や行政と共に政策にし、制度化していく。そのように点としての“解”を面へと広げていくことが、我々の社会課題との戦い方なのです」
その上で原動力になってきたのが、この場にいらした寄付者の皆さんの存在。「これまで何度も心が折れそうになりました。本当に辛いことばかりです。でもこれまで走り続けられたのはなぜか。それは大切なお金を、寄付というかたちで我々を信じて託してくださる、皆さんのような寄付者、支援者の方々のおかげです。これからも我々は、日本で最も子育て領域の国内課題を解決出来る団体として走っていきたいと思っています。ぜひ皆さんも共に走っていただけたらと思います」
そして質疑応答の時間へ。「これまでの失敗談は?」、「ボランティアとして参加するには?」、「企業にどんな働き方を望む?」など、興味深い質問が投げかけられました。
病児保育の現場で聞いた ひとり親家庭の親御さんの不安
休憩をはさんで登壇したのは、フローレンスの現場を知るスタッフです。まずは病児保育事業部でこどもレスキュー隊員として働く小林敦子さん。
2013年から病気に苦しむお子さんだけでなく、ひとり親家庭の悩みにも寄り添ってこられました。
「病児保育のご依頼でご家庭にお伺いしておりますと、ひとり親さんが本当にたくさんの不安を抱えてお子さんを育てていらっしゃる現実を目の当たりにします。『今日はどうしても行かなければならないんです。来てもらえてよかった』といった親御さんの声を聞くと、私も役に立てているんだなということを実感します。これからも皆さま方のお力を有効に使わせていただき、ひとりでも多くの親子の笑顔のため、病児保育を提供していけたらと思っております」
フローレンスに届いた医療的ケア児親子のSOSから始まった新規事業
次は今年新規事業として立ち上がった、“医療的ケアシッター ナンシー”の看護師である小田結紀さん。
今年スタートした事業立ち上げの中心メンバーであり、現在は各家庭を訪問し、医療的ケア児と親御さんのための支援を届けています。
「ナンシーはフローレンスに届いた医療的ケア児親子のSOSから始まりました。お子さんのケアのため、親御さんの休息が足りていない状況があったのです。他にも訪問学級のために勉強の時間が足りていないお子さんや、普段寂しい思いをしているきょうだい児たち。これらの問題をまるっと引き受けることが出来るのが、小児経験のある看護師が週に2回、2、3時間定期的に訪問する、“医療的ケアシッター ナンシー”です。利用者さんからは、『先日久しぶりに外出してコーヒーを飲んできました。ナンシーが訪問してくれる時間は、自分にとってご褒美の時間です』といった声も聞かれました。ナンシーを待っている親子はまだまだいます。今後とも温かく見守っていただけますと幸いです」
以前の自分へのメッセージ『大丈夫、私の子はたくさんの味方に愛されてる』~アニー利用者の声~
続いては昨年から障害児訪問保育アニーをご利用中のご家族。
お子さんには痰の吸引や睡眠時の人工呼吸器などの医療的ケアがあり、親御さんの仕事復帰がなかなか叶わない現実があったそうです。
「アニーに入るまでは、これからこの子を受け入れてくれるところはあるのだろうか。仕事が出来ないのは当然だと思わなくてはいけないのだろうか。そんな不安を常に感じる日々でした。でも今はこの子はこの子の時間を、私は私の時間を過ごせ、だからこそお迎えした時に、『今日はどんな一日だった?』と聞けることがとても嬉しく、尊いものだと感じています。また私自身、社会と繋がりを持てることで前向きな気持ちになれました。『この子は生まれてくるべきだったのかな?』と考えてしまうこともあった以前の私に、『大丈夫だよ、私たちの子はたくさんの味方に愛されて、受け入れられるんだよ』と教えてあげたいです」
養親になりもらった幸せで将来が楽しみに~赤ちゃん縁組利用者の声~
最後にお話をしてくださったのは赤ちゃん縁組事業で、特別養子縁組を結ばれたご家族です。
初めて赤ちゃんを迎えられた時の映像が流れた後、お子さんと共に登壇されました。
「まず寄付者の皆さんにお伝えしたいのは、フローレンスの赤ちゃん縁組事業が、何より子どもと実母さんの幸せを念頭に置いた、素晴らしい事業だということです。私たち養親というのはあくまで超スーパーサブ。幸せのお裾分けをいただいている存在です。その幸せは、私たちに大きな変化をもたらしました。まず子どもの成長が楽しみになったこと。と同時に自分たちが歳を重ねることも楽しみになったこと。ただ彼にはこれから、たくさんの超えていかなければいけないものがあると思います。そんな時、これだけの大人が支援してくださったということが、彼が生きていく上での活力になると信じています」
その後は寄付者の皆さんによる交流の時間が持たれました。5、6人がグループとなってそれぞれ感想を述べ合います。フローレンスからは、「今日の話を聞いて自分の心がどんな“色”になったか」というお題も用意されました。
「赤」と答えた男性はこんな話をしていました。
・駒崎代表の思いを直接聞いたり、利用者さんの生の声を聞いたりしたことでぐっと迫るものがあった。
・(寄付という形で)社会を変えることに参加できていることを嬉しく思い、もっと何かできるのではないかと熱い思いを抱いた。
こちらは、「ピンク」と答えた男性の話。
・娘と二人で来ました。子どものこれからについていろんなことを考えて、愛情がより深くまりました。
「オレンジ」を選んだ20代の男性はこう話していました。
・自分自身も駒さんのような社会起業家にあこがれていて、今日の講演を楽しみにしていました。利用者の人の話を聞いて心が熱くなったし、未来を明るいものにしていくぞ、という明るいエネルギーが湧いてきたので、オレンジを選びました。
このお題をきっかけに、ほぼ初対面同士の皆さんであるにも関わらず、活発なやり取りがなされました。「応援したいって思いが強くなった」という方や、「実際に利用して他の事業にも興味が沸いた」という方。中には涙ぐんでいる方の姿も見られ、皆さんが一寄付者という立場を超えた、フローレンスの一員なのだということを感じました。
2時間を超える事業報告会は、駒崎さんのこんな言葉で締めくくられました。「今日は僕が皆さんに感謝の気持ちをお渡ししたいと思っていましたが、むしろ皆さんからいただいたものの方が多かったような気がします。だからこそ我々は、そんな皆さんの期待に沿えるようなフローレンスであり続けなければいけない。そう改めて感じました。皆さんが寄付をしてくださり、僕らの人生と繋がってくださり、心から嬉しく思います。本日は誠にありがとうございました!」
最後は「チーム・フローレンス!」のかけ声と共に、寄付者の皆さん、フローレンスのスタッフ全員で記念撮影。この笑顔の輪が、さらに多くの家族の笑顔へと繋がっていくはずです。
これからも皆さんとともに、「みんなで子どもたちを抱きしめ、子育てとともに何でも挑戦でき、いろんな家族の笑顔があふれる社会」の実現を目指し、よりディープな社会課題の解決に挑んでいきたいと考えております。
フローレンスでは引き続き活動を応援してくださる方を募集しております。