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参加者みんなで一緒に考えよう!~「子どもの権利」と「保育者の心のケア」の大切さについて~【3月保育塾】

参加者みんなで一緒に考えよう!~「子どもの権利」と「保育者の心のケア」の大切さについて~【3月保育塾】

#研修

「子どもの権利」とは一人ひとりの子どもたちが主体的に自分らしく生きていくために定められている権利です。

目の前の子どもの権利がおかされていないか、辛い思いを抱えていないかをしっかり把握するためにも保育現場など、子どもとかかわるスタッフは、「子どもの権利」について、しっかり理解をしておく必要があります。

そして、子どもたちと日々笑顔で、前向きに向き合うために、自分自身を大切にケアしていくこと、職場でお互いを支え合うことは大切です

3月保育塾では、障害児保育事業部 医療的ケアシッターナンシー増子邦行さん(以下まっしーさん)を講師に招いて、参加者みんなで子どもの権利と保育者の心のケアについて考えていきました。

保育塾とは、フローレンスの全ての現場スタッフに向けた自主参加型の研修です。現場スタッフの「知りたい!」「学びたい!」に応えられるように、毎月違うテーマで研修を行っています。

改めて振り返る「子どもの権利」

まずは、「子どもの権利条約」について、改めて振り返りました。

「子どもの権利条約」とは、子どもの基本的人権を国際的に保障するために定められた条約です。その中で示されている子どもの権利は大きく4つあります。

生きる権利・・・すべての子どもの命が守られること
育つ権利・・・もって生まれた能力を十分に伸ばして成長できるよう、医療や教育、生活への支援などを受け、友達と遊んだりすること
守られる権利・・・暴力や搾取、有害な労働などから守られること
参加する権利・・・自由に意見を表したり、団体を作ったりできること

参考:日本ユニセフ協会

unnamed (1)子どもとかかわる上で、この4つの権利を理解することは必要不可欠です。改めてフローレンススタッフみんなで立ち返ることができ、子ども一人ひとりの権利を大切にする、当たり前だけど、とても重要なことを考えることができました。

バウンダリー(境界線)をつくってもいんだよ

続いて、今回の講義の題材となった書籍、“子どもを守る言葉「同意」について“の紹介がありました。

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子ども自身が「YESやNOは自分で決めていいということ」「相手に自分の気持ちを伝えること」など、子どもの権利について小さいお子さんが読んでも理解できる内容で書かれています。

この中で、「バウンダリー」について、まっしーさんから詳しくお話いただきました。

バウンダリーとは、「境界線」という意味です。相手と自分の間にある見えない心の線引きのこと。

例えば、本来はあなたの仕事ではないのに、後輩や同僚の仕事をついやってしまったり、やりたくないことを押し付けられても断れないことは、バウンダリーが引けないことによって起こる問題です。

あなたの「これは大丈夫!」と思う事とあなたの「これはイヤだ…。」と思う事を分ける事がバウンダリーです。自分の心の許容範囲を知り、バウンダリーを張ることができたなら、人と適度な距離感(ディタッチメント)を保つことができます

しかし、たまに自分の境界線を土足で入っていたり、踏みにじる人が出てきてしまうときがあります。そんなときは、「逃げてもいいんだよ」「助けてと言ってもいいんだよ」と、この本では、はっきりと伝えてくれています。

まっしーさんは、『子どもだけではなくて、わたしたち大人にとっても大事な視点であり、意識したいですね』と、メッセージを強く伝えてくれました。

そして、保育現場でお子さんや保護者さんと接する時に、良かれと思ってしたことがネガティブに捉えられてしまったり、嫌だと感じられてしまったことなど、経験したことのある方も少なくないのではないでしょうか。

それは、お子さんや保護者さんとの境界線がぼやけてしまったり、分からなくなってしまっています。そんな時に意識したら良いポイントをお話いただきました。

まず1つ目は、一度立ち止まって、自分を客観視すること。そうすることで、境界線を再度意識することができるそうです。

2つ目は、自分の役割や立ち位置を明確にして、できる範囲でお手伝いをすること。お子さんやご家庭と長く関わっていくと、ついつい言われていないことまでお節介でやってしまったり、介入しすぎてしまうことがあります。そんなときは、「自分の役割はなんだろう?」と立ち返ることが大切だそうです。 

『直接自分が手伝うのではなく、サポートシステム(事務局など)につなぐ事も大事ですよ』とまっしーさんは、優しく言ってくれました。

ストレスフルな世の中で大切にしたい心のケア

保育士や看護師などの対人援助職は、人の感情に触れるお仕事です。お子さんや保護者さんとかかわる中で、自分の感情が揺さぶられてしまう場面は少なくはないと思います。

そんな自分のお仕事の特性を認識して、ネガティブな感情が出てきたときやストレスを抱えていると感じる時、誰かに相談する、気分を変えるなど、注意をして対処することが大事です。

コロナ渦で、なかなか外でストレスを発散する手段が少なくなってきていますが、そんな中でもできる心のケアをまっしーさんにご紹介いただきました。

まっしーさんは、前職では、介護現場でお仕事をされており、夜勤勤務や体力仕事を続けていた中で、仕事の合間の時間にストレッチや体操などをよくやっていたそうです。また、水分補給や飴を舐めることで気分転換になったり、散歩をすることも身体にも心にもよいと紹介してくれました。

そして、「人の声を聞くこと」も大事だと言います。

フローレンスの事務局スタッフもリモートワークがメインになり、中々社内のスタッフと直接話す機会は少なくなってきています。また、訪問型の病児保育や障害児保育では、日々 保育スタッフは1人でご家庭に訪問します。

中々人と会えなかったり、チャットなどでのコミュニケーションが多かったりする中で、やはり、人の声を聞くことはほっとしますよね。人と話す機会を意識的につくっていくことはこれからの時代、大切なのだと改めて考えることができました。

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それぞれの職種の立場や思いを理解して協働するために

保育や医療の現場では、多くの専門職が、子ども達と関わっています。
それぞれ自分の専門性を活かして親子に対して様々なアプローチを行いますが、それぞれの役割や立場の違いで、時には衝突(コンフリクト)が起きてしまいます。

そんな時、ICFのマッピングを用いて、それぞれの立場や役割を客観的に考えてみることで、お互いを理解し合うことができるのだと言います。

ICFとは、「International Classification of Functioning, Disability and Health」の略で、日本語では「国際生活機能分類」と呼ばれます。人間の生活機能と障害についての分類法で、「健康状態」、3つの「生活機能(参加・活動・心身機能や身体構造)」、2つの「背景因子(環境因子・個人因子)」の各要素がそれぞれ影響し合って成り立ちます。

下の図のように、心身機能や身体構造の部分は看護師、参加の部分は保育者、環境因子の部分は事務局など、それぞれの役割を置いてみると、相互に影響し合って、連携し合っていることを見える化することができます。

まっしーさんからは、『それぞれの専門職は全員、子どもたちやご家族の幸せを願っています。そのことを忘れず、時に衝突した際にはこの絵を思い出して欲しいです。』と、メッセージを投げかけてくれました。

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そして、日頃まっしーさんが人と関わる時や衝突してしまった時に意識している言葉があるそうです。それは、「ホ・オポノポノ」。

これは以前まっしーさんが参加した講演会の「修復的アプローチ」という講義の中で紹介されたそうです。

ハワイの告白による和解と許しの習慣で、揉め事があると集会を実施し、住民同士で対話をするそうです。非審判的態度と傾聴を意識しており、大事にしている4つの言葉があります。

①ごめんなさい
②許してください
③ありがとう  
④愛しています

この「ホ・オポノポノ」をまっしーさんがお子さんや保護者さんとのかかわりの中で実践したエピソードをお話いただきました。

『ある日、ADHDを持つお子さんとお母さんが親子喧嘩をしてしまい、お子さんが児童相談所に保護されてしまいました。
退所の日にお母さんは泣いていて、息子さんに謝罪をされましたが、息子さんは中々お母さんとお話をすることができずにいました。
お母さんと息子さんに、僕が月に1回訪問する際に、家族会議をしませんか?と提案をしました。
最初は、お母さんの話や息子さんの話を傾聴して、そこから「一緒にお片付けしよう」などと息子さんと一緒に活動をしたり、徐々に介入をしていきました。
すると、息子さんは自分の言葉でお母さんに気持ちを伝えることができるようになり、お母さんも気持ちが溜まって爆発する前に自分の気持ちに気づいて、支援機関に相談するようになりました。』

『このご家庭はなかなかできていなかっただけでで、家族で対話をする機会を持つことはとても大事なんだということ、そして、非審判的態度でかかわることや傾聴をすることというのが関係性の修復につながるのだと実感しました。』とまっしーさんは言っていました。

このように、ご家族の修復にも役立てれますし、専門職同士で衝突した際もこの言葉を思い出して、お互い傾聴や対話ができるといいですね。

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みんなで語り合う時間がやっぱりいちばん

グループワークの時間では、「わたしの充電方法」「職場の人間関係で工夫していること」「最近、楽しかったこと 笑ったこと」など、それぞれの心のケア方法を参加者同士でシェアしました。

どのグループもオンライン上でありながらも笑顔が溢れており、盛り上がってお話していました。

『みんなでざっくばらんに語り合う時間が大事、時間が足りなかった。』

『些細なことでもチーム内に共有することが自分のストレス削減になる。対面で会えなくてもチャットで話して、正直に打ち明けることが大事。』

『自分のやっていることに共感してもらったり、お子さんと工夫して遊んでいる姿に「いいね」と言われるとやっぱり嬉しい。モチベーションが高まる。共感は大事。』

など、全体共有の場で発表してくれたスタッフに対して、他のスタッフからは大きな頷きが見られ、みんなで共感し合っている姿が印象的でした。

やはり、スタッフ同士でコミュニケーションを取り、仕事の悩み相談をはじめ、何気ない会話をすることが心のケアにつながるのだと実感しました。

ストレスと友だちに

最後にまっしーさんから「ストレスと友だちになってほしい」というメッセージがありました。

ストレス研究には諸説ありますが、最近の研究では、ストレスそのものは、からだには悪くなく「ストレスはからだに悪いという思い込み」が、病気のリスクを高めていることがわかったそうです。

『何かネガティブなことが起こったとしても少しポジティブに物事を受け止めて、明るく日々の保育に向き合ってほしいと思います。』とまっしーさんから参加したスタッフに向けて、温かなお言葉をかけてくださりました。

子どもの権利を守ること、そして、保育者自身の心も守ること、改めて、保育現場で大切にしたい2つの視点について、参加者みんなで考えることができました。
自分の心にゆとりを持って、日々、前向きに子どもたちと向き合えると子どもも保育者も更に素敵な笑顔で過ごせるのではないかと思います。

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