生活する上で、たんの吸引や経管栄養など医療的なケアを必要とする「医療的ケア児」は増加傾向にあり、全国に約2万人いるとされています。
2021年6月11日には、参議院本会議で「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」が可決され、こうした親子への支援が国や自治体の責務と定められるなど、医療的ケア児とその家族が安心して暮らせるように社会全体で取り組んでいこうとする機運がますます高まっています。
フローレンスは、2021年4月より品川区から委託を受け、障害や医療的ケアの有無に関わらず地域の親子が利用・交流できる「インクルーシブひろば ベル」をオープンしています。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、これまでオンライン相談「しゃベルの部屋」のみを運営していましたが、2021年7月1日(木)からは交流スペースを一般開放し、さらなる交流・相談の活性化をはかります。
障害児家庭の孤立問題に取り組む
フローレンスでは、2014年から障害児保育事業を立ち上げ、日本で初めて、障害児の長時間保育を実現する「障害児保育園ヘレン」を開園しました。
2015年には障害児家庭のご自宅に訪問してマンツーマンの保育を行う「障害児訪問保育アニー」、2019年からは看護師による医療的ケアに対応したお預かりサービス「医療的ケアシッター ナンシー」をスタート。
障害児保育・支援領域のパイオニアとしてさまざまな形で障害児家庭に伴走してきました。
長年の事業運営の中で、私たちが直面してきたのは「障害児・医療的ケア児家庭の孤立」の課題です。医療的ケアには24時間終わりがなく、地域でお子さんを預けたり遊んだりできる場所やサービスが極端に不足しているため、親御さんは常時お子さんにつきっきりになり、親子は家の中で孤立を深めています。
「インクルーシブひろば ベル」は、親御さんの孤立感や負担感を軽減させ、社会とのつながりを実感する機会を創出するために開設しました。障害児やその家族・きょうだい・友人が遊びを楽しみながら多様な人と関わることができ、保護者が育児等の困りごとを相談できる、「インクルーシブな遊びの場」を目指します。
インクルーシブひろば ベル 事業内容
1.安心して遊べる環境の提供
障害の有無や年齢を問わず楽しめる遊びを企画。看護師、保育士、児童指導員などの資格を持つ専門スタッフによる見守りのもと、医療的ケア児の親子が安心安全に一緒に過ごせる場を提供します。
2.医療的ケア児親子の仲間づくりの促進
医療的ケア児の親同士が交流できる広場を設け、仲間づくりや子育てに関する情報の交換を促進します。
3.インクルーシブな地域交流の推進
交流を医療的ケア児の親子に限定せず、地域の健常児とその親子にも広げるため「インクルーシブひろば」を創設します。出会いやつながりを生み、また、医療的ケア児への理解を深めることで、地域全体で支え合う社会を育みます。
4.施設スタッフによる子育て相談の実施
医療的ケア児コーディネーター資格を持つスタッフが子育て相談を行い、育児不安の解消を図ります。また、新型コロナウイルス感染症対策のため、オンライン相談「しゃベルの部屋」を実施します。
7月1日より交流スペース一般開放 「スヌーズレン」を体験できるルームも
新型コロナウイルス感染拡大の影響に伴いオープン待ちとなっていた交流スペースが、7月1日(木)より開放となります。
ゆったりとした交流スペース「にじ」、スヌーズレンを体験できるルーム「そら」、座位保持椅子や電子レンジ、冷蔵庫を完備した食事・休憩スペース「フィーカ」、スタッフに育児相談ができる相談ルームを備えています。
※スヌーズレンとは
心身ともにリラックスできる環境に身を置くことで、障害の有無にかかわらずお子さんと親御さんの最も自然で本能的な感覚を呼び起こす活動を指します。「インクルーシブひろば ベル」では、障害のあるお子さんがリラックスして周囲の音や光などの刺激に気づいたり、受け入れたり、探索したりしやすいように環境を整備しています。
交流スペース「にじ」
絵本や感覚を刺激するおもちゃ、電子オルガンなどを常設しています。座位保持椅子や足こぎ車椅子「COGY(コギー)」、お子さんが寝転ぶためのエアレックスマットも貸し出しており、お子さんの発達の状況にあわせて自分らしく過ごしていただけます。
スヌーズレンルーム「そら」
「にじ」の部屋の奥には、スヌーズレンが体験できるルーム「そら」があり、視覚、聴覚、触覚などを心地よく刺激する設備を備えています。ゆったりとした音楽や自然音に包まれながら、マットやクッションに身をゆだね、お子さんも親御さんも自分らしい時間を過ごしていただけます。
食事・休憩スペース「フィーカ」
座位保持椅子や冷蔵庫、電子レンジ、シンクが完備されており、きょうだいやご友人と食事を楽しんでいただけます。
相談ルーム
医療的ケア児コーディネーター、看護師、保育士、児童指導員などの資格を持つスタッフに育児や福祉制度について気軽に話せる相談ルームを併設しています。もちろん、雑談だけでも大歓迎です。
※ホームページから事前予約が必要です。
インクルーシブひろば ベルについて
営業時間 | 10:00 – 17:00 |
休館日 | 土曜日、日曜日、祝日、年末年始 |
利用料 | 無料 |
対象年齢 | 0歳から |
場所 | 〒142-0041 東京都品川区戸越6-16-14 インクルーシブひろば ベル ・東急大井町線・都営浅草線 「中延」駅より 徒歩4分 ・東急大井町線 「戸越公園」駅より徒歩5分 ※ 当施設には駐車場のご用意がございません。お車でお越しの場合は近隣のコインパーキング等をご利用ください。 |
利用登録の案内
ご利用にあたっては事前登録が必要です。こちらから利用登録をお願いします。
「インクルーシブひろば ベル」に込めた思い
施設名は、発明家のグラハム・ベルより名付けました。
グラハム・ベルは、重度障害を抱えるヘレン・ケラーと、家庭教師アン・サリバンを結びつけました。ヘレン・ケラーが障害にも関わらず、後に世界中を講演して回る社会活動家になったのも、サリバン先生との出会いがあったからです。こうした可能性に満ちた出会いをつくり、人々を結びつける場所に「インクルーシブひろば」はなっていきたいと考えています。また、ベルは電話の発明者であり、イノベーターです。「インクルーシブひろば」は、日本にはまだ存在しないイノベーションです。しかし、電話が現在あたりまえのものになったように、将来はこうしたひろばの形が当たり前のものになることを願っています。