2021年9月18日(土)より、日本の歴史上初めて、国や地方自治体が医療的ケア児とその家族への支援に「責務」を負うことを明文化した「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」が施行され、医療的ケア児家庭を取り巻く環境を改善する機運はますます高まっています。
フローレンスは、本日2021年9月17日より、障害のあるお子さんを親御さんに代わってお預かりしながら、再就職を希望する親御さんに向けたサポートプログラムを提供する『障害児かぞく「はたらく」プロジェクト』をサービスインします。
【障害児かぞく「はたらく」プロジェクト概要】
※詳細は記事後半をご覧ください1.再就職支援「ワークアゲイン・プログラム」
対象:重度医療的ケア児・重症心身障害児を子育て中で、一度離職し、現在、就職していない保護者
内容:1年間フローレンス社内で実務を経験しながら、PCスキルや事務スキル、ライティングスキルなどを身につけられるようにサポートする。
フローレンススタッフとチームを組んで業務に取り組み、適宜キャリア相談を実施。
2.看護師による保育の実施「重度医ケア児訪問保育エレノア」
対象:「ワークアゲイン・プログラム」に参加する保護者のお子さん(重度医療的ケア児・重症心身障害児)
内容:保護者が「ワークアゲイン・プログラム」に参加している間、小児看護の経験を積んだ看護師が自宅に訪問し、保育を実施。
保育士が巡回を行い、一人ひとりのお子さんにあわせた保育を行う。
医療的ケア児とその家族を取り巻く環境
たんの吸引や経管栄養などの医療的なケアを日常的に必要とする「医療的ケア児」は、新生児医療の発達に伴って増加傾向にあり、現在、全国に約2万人※1いると言われていますが、そうしたお子さんやご家族へのサポートはまだまだ不足しています。
例えば、共働きである両親が共に就労を継続したいと望んだ場合、医療的ケアのある障害児を預かる保育園が国内では極度に不足しています。この問題に取り組むため、フローレンスは2014年に日本で初めて障害児・医療的ケア児を専門的にお預かりする「障害児保育園ヘレン」を開園し、2015年にはご自宅でマンツーマンの保育を実施する「障害児訪問保育アニー」をサービスインしました。2019年からは看護師が訪問支援を行う「医療的ケアシッター ナンシー」をスタートし、障害児・医療的ケア児の保育・支援領域のパイオニアとして事業を展開しています。
同時に、医療的ケア児とその家族を取り巻く環境が全国的に改善することを目指し、フローレンスが事務局を務める「全国医療的ケア児者支援協議会」を中心に政策提言活動にも積極的に取り組んできました。2021年6月11日に可決となった「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」に明文化された内容は、関係各所とともに、6年に渡り訴えてきたものでした。
※1<厚生労働省HP 医療的ケア児等とその家族に対する支援施策 医療的ケア児について>より引用
障害児保護者の再就職への高いハードル
フローレンスが障害児保育事業を通じて保護者の就労継続をサポートする中で、新たな課題も見えてきました。それは、障害児・医療的ケア児の保護者においては、お子さんの誕生を機に心理的・物理的負担感から離職するケースも多く、その後、再就職を希望しても、様々なハードルが要因で、復帰に大きな困難を抱えるケースが多く存在するということでした。
離職中の医療的ケア児の親御さんへ行ったヒアリングでは、以下のような声が上がりました。
【社会的な価値観のハードル】
●職場、家族、友人から「子どもに障害があるのに、働きたいの?」と言われた
●自宅での子どものケアに対するサポートが受けられるように、役所に居宅介護の申請に行ったが、「母親が介護すべき」という理由で断られた【身体的・心理的なハードル】
●昼夜問わず続くケアの中で、仕事や自身のスキルアップのためのまとまった時間を作れない
●子どもの体調が安定せず、仕事に穴を開けてしまうことに不安を感じる
●ブランクが長く、前職に戻ることが難しい。キャリアチェンジを余儀なくされる
●ケアを行いながら、離職後のブランクを乗り越えて働くことに、体力的にも精神的にも不安を感じ、一歩を踏み出せない【子どもを預けることへのハードル】
●医療的ケアが必要な子どもを預けられる場所が少ない
●離職しているため、働いていることを前提にした保育サービスを受けることが難しい
医療的ケア児の子育てでは、継続的な通院・入院に伴う交通費を負担したり、毎日のケアに必要な物品を自費で購入するケースも多くあり、金銭的にも非常に厳しい状況に置かれる場合もあります。
そこでフローレンスは、再就職を希望する障害児保護者が安心して再就職までの助走期間を過ごせるような体制のもと、キャリア相談やスキルアップのプログラムと、お子さんを安心して預けることができる環境を整えることで、「はたらく」ことへの一歩を踏み出すサポートができるのではないかと考えました。
2020年9月よりテストユーザーとともにパイロット事業として取り組んできましたが、このたび2021年9月17日より事業化し、まずは再就職に最も困難を抱えていると考えられる重度医療的ケア児家庭を対象に、『障害児かぞく「はたらく」プロジェクト』を正式にサービスインします。
今後、トレーニングプログラムの提供・就職先として、医療的ケア児の親御さんが働くことを応援してくださる連携企業を増やし、より多くの医療的ケア児の親御さんのニーズに応えていきたいと考えています。
『障害児かぞく「はたらく」プロジェクト 』概要
『障害児かぞく「はたらく」プロジェクト』では、再就職をサポートする「ワークアゲイン・プログラム」の提供と、プログラム参加中にお子さんへ看護師による保育を行う「重度医ケア児訪問保育エレノア」の両輪で、障害児保護者の再就職への第一歩をサポートします。
ビジョン:障害児の親が「はたらく」に一歩踏み出し、家族みんなが自分らしく人生を歩める、しなやかで躍動的な社会
ミッション:障害児の親にキラキラする「はたらく」機会を。子どもたちにワクワクする経験を。
ロゴに込めた想い:
一緒なら、どこへでも行ける。
決められた道ではなく、自分らしく、進みたい方へ。
そんな想いを込めて、海を旅する船をモチーフにしました。
船の前を行くのは、勇気を持って社会を変えていくファースト・ペンギンです。
誰しもが自分らしくいきられる社会を、医療的ケア児の保護者みずからが創っていくのだ、という気持ちを表しています。
ー「ワークアゲイン・プログラム」 概要
「ワークアゲイン・プログラム」は、一度離職した障害児保護者の方に、フローレンススタッフのサポートのもと、1年間フローレンスにて実務を経験していただくことで、PCスキルやライティングスキルなど、これからのキャリアに役立つスキルを身につけていただく再就職に向けたサポートプログラムです。
【特徴】
●サポートスタッフとチームを組んで仕事に取り組むため、お子さんやご自身の体調不良があっても柔軟に勤務を調整できる体制を整えています。
●スタッフによる将来を見据えたキャリア相談や心理面をサポートするメンタリングの機会を設けています。
●障害児の保護者が当たり前に働ける社会を実現する「社会を変える活動」に参画することで、課題発見力・企画・実行力などを磨いていきます。
【活動時間・形態】
●1日あたり3-4時間、週4日間のプログラム参加
※新型コロナウイルス感染拡大の状況を受け、現在は在宅勤務が中心となっています
【業務内容】
●フローレンス社内での事務作業やWEBライティング業務
【サポート体制】
●PCスキル研修の実施
●トレーナーによる実務トレーニング伴走(事務業務、記事作成など)
●トレーナーキャリアカウンセラーによる定期的な面談
【プログラム期間】
●1年間
ー「重度医ケア児訪問保育エレノア」 概要
「重度医ケア児訪問保育エレノア」は、保護者が「ワークアゲイン・プログラム」に参加している間、看護師がご自宅に訪問し、保育を実施します。小児看護の経験を積んだ看護師が保育にあたるため、人工呼吸器や気管切開を含めた重度の医療的ケアにも対応することができます。また、保育のプロである保育士も巡回を行い、一人ひとりのお子さんの状況にあわせた保育を立案・実施します。
※現在、「重度医ケア児訪問保育エレノア」は、「ワークアゲイン・プログラム」参加者を対象としています。「重度医ケア児訪問保育エレノア」のみの利用はできません。
『障害児かぞく「はたらく」プロジェクト 』利用条件の詳細
【利用対象】
お子さんについての年齢:就学前の重度医療的ケア児、重度心身障害児
※重度医ケア児訪問保育エレノアを利用いただけるお子さん
(「重度」の判断については直接フローレンスまでお問い合わせください)
※お住まいの自治体保育課により居宅保育の必要性が認められるお子さん
※スタッフにより安全なお預かりが可能と判断されたお子さん
【利用制度】
居宅訪問型保育(必須)/居宅訪問型児童発達支援(推奨)/居宅介護or訪問看護
【対象地域】
東京都内の以下の区
千代田区、港区、新宿区、台東区、品川区、渋谷区、杉並区、豊島区、北区、板橋区、練馬 区、文京区、中野区、目黒区、中央区、江東区、荒川区
『障害児かぞく「はたらく」プロジェクト 』利用ご希望の方は、こちらから詳細をご確認ください!
合同会社 西友がプロジェクトの立ち上げをサポート
本事業のサービステスト(パイロット事業)の実施に際し、合同会社 西友よりご支援を頂きました。
合同会社西友 ご担当者様 コメント:
西友は社会課題や環境問題の解決に向けて、「機会創出」「環境・サステナビリティ」「地域社会」の3つを注力分野と定め、お客様やお取引先様、NGOや自治体の皆様と協力して、多面的にサステナビリティ・社会貢献活動を推進しています。
本プロジェクトへの支援を通じて、ひとりでも多くの女性が経済的に自立し、社会で活躍できる環境を整えることの一助となれますと幸いです。
行政制度や民間サービスがケアしきれていない社会課題を可視化し、あたらしい事業展開を行うには、多くの初期投資が必要となります。こうしたフローレンスのチャレンジを共に牽引しているのが、支援企業、財団、多くの個人寄付者の方々です。
フローレンスは、これからも親子の「あたらしいあたりまえ」をつくるために、新規事業への挑戦や政策提言活動に注力してまいります。
ぜひ、引き続きご支援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。