2022年3月、フローレンスは長期化するコロナ禍での緊急支援第二弾として「新型コロナこども緊急支援プロジェクト2022」を始動しました。
その一つとして、DV等の理由により、別居中で法的な離婚が成立していない実質的なひとり親家庭にお米を配送し、必要な支援情報を提供する活動を行いました。
実質的なひとり親家庭の厳しい状況を広く知っていただくために、フローレンスの支援を利用したお二人がインタビューに応じてくださいました。
お二人の生の声をぜひお聞きください。
現代の貧困は「インビジブル」
ここ数年でよく使われる言葉に、「インビジブル」があります。実際には存在しているのに見えにくいもの、あるいは見たくなくて意図して見ようとしないもののことです。
今の日本は、貧困が「インビジブル」になっているといわれます。
背景には、核家族化が進み、親戚づきあいや人間関係が希薄となったことでの孤立、自分から支援を求めにくい公的制度などが筆頭に挙げられますが、かつて1億総中流社会と言われた時代の国民意識だけが継承され、バブル崩壊やリーマンショックを経てできあがった現代の格差社会になっても、相対的貧困に気づかない、あるいは当事者が声をあげにくい雰囲気がまん延していることが大きいと考えられます。
格差に拍車をかける、「自己責任論」
貧困に陥る環境や過程はさまざまです。
不景気による突然の解雇、病気、事故、配偶者のDVや死別など、不運が重なって転がるように貧困状態に陥ってしまう人は少なくありません。ましてや環境を自分で選べない子どもたちは、当然非常に大きな影響を受けます。そもそも頼れる家族や親戚がいない子どもたちもいます。
しかし、貧困が「インビジブル」である人の目には、そのような背景は映らないため、結果として、「貧困」を個人の怠惰や努力不足、人生の選択ミスなどに理由を置く「自己責任論」が広まってしまうのではないでしょうか。
「自己責任論」によって、貧困の当事者がさらに声を上げづらくなり、必要な支援を受けなくなることで支援制度が充実せず、いっそう困窮するという悪循環も生み出しています。
新型コロナウイルス感染症拡大を受けて緊急事態宣言が出されたとき、在宅勤務の可能な正社員は「新しい働き方」にシフトして自粛生活を送り、メディアでも連日「おうち時間を楽しむ」方法が紹介されていました。
一方で、サービス業に従事することの多い非正規雇用者は、感染に怯えながら有給や傷病手当などの保証のないなかで仕事を続けるか、あるいは仕事がなくなり、明日の食べ物にも困る状況にまで追いつめられました。
この時も、残念ながら自己責任論が叫ばれ、困窮しているにもかかわらず助けを求められず、生活保護の申請をためらう人が多いことが話題になりました。
「インビジブル」を「ビジブル」にするために
フローレンスでは、2020年3月、子育て家庭のニーズを明らかにするために「一斉休校に関する緊急全国アンケート」を実施、全国約10,000人から回答を得ました。その結果、世帯年収によるニーズの違いが顕著となり、低所得世帯からは「給食がない事で、食費が普段の倍ほどに… ひとり親家庭の我が家ではかなり困っています。お米の減りが早すぎる。 助けて」といった声も寄せられました。
そこで、2020年4月より、#すべての親子を置き去りにしない を合言葉に、日本国内の親子を支援する「新型コロナこども緊急支援プロジェクト」を始動。特に孤立するリスクの高い「医療的ケア児家庭(障害児家庭)」「経済困窮家庭」「ひとり親家庭」に特化して、のべ60,000世帯以上の親子に支援を届けてきました。
特に、ひとり親家庭や生活困窮家庭には、必要な支援を届けたり、食品や日用品を届けることで、家庭とつながりを持ち、家庭の抱える困りごとを可視化(ビジブル)し、必要な支援につなげる活動も行ってきました。
すべての人に、サポートが必要なときがある
今回、インタビューに応じてくださったお二人の境遇は、特別なものではありません。今の日本では、いくつかの要因が重なり、あっという間に家計が苦しくなってしまうことは珍しくないのです。
「困ったときはお互いさま」そんな温かいメッセージとともに寄付してくださる方もいます。困ったときに「助けて」と声をあげられる社会、みんなで支え合える社会を目指して、フローレンスはこれからも活動を続けていきます。
フローレンスは食品や日用品などの物資を届けて必要な支援につなげるだけでなく、「インビジブル」にされてしまう親子や子どもの抱える課題を社会に可視化するための記者会見や政策提言などの活動も行なっています。
こうした取り組みは、皆さんからご支援いただく寄付を原資に実施しています。
すべての親子を置き去りにしない社会を実現するために、フローレンスの応援をよろしくお願いします。