「マーガレットこどもクリニック」は、渋谷区でフローレンスが運営する「おやこ基地シブヤ」内にある小児科で、フローレンスグループの医療法人ペルルが運営しています。
施設内にはフローレンスが運営する認可保育園「みんなのみらいをつくる保育園初台」、渋谷区初の「障害児保育園ヘレン」と「病児保育室フローレンス初台」が併設されており、フローレンスの理念を体現する場所となっています。
身体のつらさだけではなく、発達の悩みや家庭環境の相談など、”親子のつらい”に伴走する子育て支援の現場「マーガレットこどもクリニック」の画期的な挑戦をご紹介します。
ひとり親は、ワクチンが打てなくても自己責任なのだろうか
それは、マーガレットこどもクリニック(以下、マーガレット)で院長を務める小児科医・田中純子の心の叫びでした。
インフルエンザは、幼児・児童がひとたび罹患すると、重い場合は1週間ちかく登園登校ができず、働きながら子育てをする親は、仕事を長期間休むなどの対応に迫られます。兄弟や親自身を含む家族への感染力も高く、皆さんご存知のようにインフルエンザは子育て世帯にとって脅威です。
特に、今年はインフルエンザとコロナの感染流行状況が読めず、どちらにも警戒が必要です。
そのような中でインフルエンザワクチンを最も必要としているのはひとり親家庭です。子どもが罹患した場合、親はひとりで看病をしなければなりません。ご自身が罹患した場合も含め、長期休業が直接経済的なダメージとなります。
インフルエンザワクチンの接種は平均約3,600円/本*。
*2019-2020年シーズンの全国平均。3Hクリニカルトライアル株式会社「生活向上WEB」調べ
ワクチンの補助がない自治体も多く、インフルエンザワクチンの費用負担は大きいものになります。
母子家庭の親御さんの半数以上は非正規雇用であり、2018年の厚生労働省「国民生活基礎調査」ではひとり親世帯の相対的貧困率は48.1%とおよそ半分を占めています。さらに長引くコロナ禍で、困窮が極まったひとり親家庭は少なくありません。
全日本民医連の調査によれば、インフルエンザのワクチン接種を見合わせている貧困家庭は、非貧困家庭の3.4倍、具合が悪いときの受診控えは4.3倍にもなり、貧困が「健康格差」を生み出していることが明らかになっています。
参照元:全日本民主医療機関連合会調査「生まれ育つ家庭で健康格差抱える “貧困と子どもの健康”小児科医たちが調査」
この問題を、ひとり親家庭の自己責任としていいのだろうかと、マーガレット院長の田中は問いかけています
養育費を強制的に徴収する仕組みが不足しているのも
女性の正規雇用がそもそも男性より低く
女性の収入がそもそも男性より低く
結婚・出産の負担が女性にまだまだ多く
男女格差が大きいのは、個人のせいでは決してないはずです。
社会のひずみだと思うのです。
ひとり親が貧困となってしまうのは社会の問題です。
そのしわ寄せが一番行くのが、ひとり親のこども達だなんておかしくないでしょうか?
マーガレットこどもクリニック公式noteより抜粋
2018年から続くマーガレットこどもクリニックのひとり親支援
マーガレットでは2018年冬からひとり親の親子の方に無料もしくは安価でインフルエンザワクチンを接種してきました。しかし、コロナ禍でマーガレット自体の収入も激減し、持ち出しでの接種が厳しくなりました。そのため、2020年より、寄付を原資として、インフルエンザワクチンをひとり親家庭に“プレゼント”する企画を実施しています。
この寄付によるワクチン接種の取り組みは多くのメディアに取り上げられ、昨年は205名から171,500円をご寄付いただき、51名のひとり親家庭の親子に接種(不足分はクリニックより補填)することができました。今年も20家庭41名の親子にインフルエンザワクチンのプレゼントを行うことが決まっています。
子供が3人おり、高額になるので諦めていましたが、今回の企画を知り、すぐに受けに行きました。去年は私を含めて全員でインフルエンザにかかり、大変だったので、とても助かります。ありがとうございました。
インフルエンザワクチンを接種をされたひとり親の方の声
善意の連鎖は渋谷を超えて藤沢に
昨年はこの取り組みが、クリニックの枠を超えた広がりをみせました。神奈川県藤沢市にある「かるがも藤沢クリニック」さんが、この取り組みに賛同してくださって同様に寄付を集め、昨年は28人の方の支援につながったのです。今年、来年とさらに多くのクリニックに広まり、ひとり親家庭を地域社会で支える機運となることを願っています。
フローレンス社員も賛同しています
実は、この取り組みには多くのフローレンス社員も賛同し、社員も寄付をしています。毎年マーガレットでは、フローレンス社員のインフルエンザワクチン集団接種を行っているのですが、この会場で、本来の接種費用に上乗せしてワクチン代の寄付をする社員が多くいます。ワクチンの接種をしない社員が立ち寄って寄付だけすることもあります。
「目の前に困っている人がいたら、どうにかして助けたい」それは、フローレンスの活動の基本であるだけでなく、それを支える社員ひとり1人の心に根付いている指針なのかもしれません。
14年にわたるフローレンスのひとり親支援の取り組み
フローレンスは2008年から、ご寄付を原資にひとり親家庭の支援に取り組んでいます。
1.ひとり親家庭に低価格で病児保育を提供
フローレンスは、2008年に提供を開始した訪問型病児保育の「寄付によるひとり親支援プラン」を始めとして、様々な形で経済的に困窮するひとり親家庭に寄り添ってきました。
非正規雇用の多いひとり親家庭では、仕事を休むとその分の収入が無くなってしまうため、不安を抱えながら生活している方が多くいます。フローレンスは、ひとり親家庭に病児保育を低価格で提供し、保育と安心を届けています。
子どもの具合が悪くなると、申し訳ないと思いつつも苛々してしまいます…。体調を崩されるのが嫌で、休みの日も外出を控えて家にいます。本当は週末こそしっかり遊んであげたいのに。病児保育を利用させていただき、上手く子育てしていきたいです。
「寄付によるひとり親支援プラン」利用者の声
2.コロナ禍の緊急支援
コロナ禍においては、休業や解雇などで、ひとり親家庭の生活は一層厳しいものになりました。フローレンスでは、2020年に開始した「新型コロナこども緊急支援プロジェクト」の一環として、フローレンスの病児保育を利用するひとり親家庭に向け、定期的に食料品・日用品をお届けする「こども宅食ひだまり便」の取り組みを実施しました。
今年もクリスマスプレゼントいただきました。到着するのを2歳の息子と楽しみにしていました。届いて箱を開けながら、大興奮で 「なにこれ!」「こんないっぱい!」と喜んでいました。喜んでいる息子を見て、私も嬉しく胸がいっぱいになりました。たくさんの食べ物、日用品そして手書きのお手紙があり、たくさんの人の温かい気持ちに感動しました。ありがとうございました!!
2021年「こども宅食ひだまり便」クリスマス配送利用者の声
3.孤立しがちな実質ひとり親家庭への支援
さらに、経済的困窮に陥りやすいと言われるひとり親家庭の中でも、特にDV等の理由により別居中で法的な離婚が成立していない「実質的なひとり親家庭(ノーセーフティネットひとり親家庭)」は、ひとり親家庭が受けられるはずの公的な支援が届きにくく、政府が臨時給付を行った「子どもへの10万円相当の給付」も受け取れていない家庭が数多く存在したことに着目し、他団体と協働して記者会見や提言を行い、給付を実現しました。
また、2022年1月には、こうした別居中・離婚前の実質的なひとり親状態にあるご家庭への取り組みとして、10kgのお米の配送や、配送を通じてつながったご家庭にLINEなどのデジタルで相談支援や情報提供などを行いました。
今日、お米を受け取らせていただきました。
ネット経由で、こんな優しい支援を無条件にしてくださる方々がいらっしゃるのかしらと思う気持ちもあったので、お米が到着した時に、本当だったんだと感動し、目の前がパッと明るくなりました!
しかも無洗米な事をみて、涙が出て止まらなくなりました。
きっと、少しでも労力を減らして休めるように、お水代を使わなくてもいいように、苦しい立場にいる私共のような親子のために、愛情を持って色々考えながらお気遣いくださったのではないかなって思います。
フローレンスの皆様のその暖かいお心が、私達には何よりも嬉しかったです。
「新型コロナこども緊急支援プロジェクト2022」でお米を受け取ったご家庭からの声
このような活動ができるのは、寄付者の皆さんのあたたかいお気持ちと寄付によるご支援のおかげです。
経済的に困難な状況にあるひとり親家庭の子どもたちが、安心して生活できるように、フローレンスの応援をよろしくお願いします。