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約70人の保育士と考える「インクルーシブ保育」。医療的ケア児・障害児保育とは?【前編】

約70人の保育士と考える「インクルーシブ保育」。医療的ケア児・障害児保育とは?【前編】

#障害児・医療的ケア児家庭支援 #ソーシャルアクション

11月21日、東京都の杉並区社会福祉協議会保育部会が主催する、「インクルーシブ保育」をテーマにした講演会が開催されました。

参加者は杉並区内の公私立の認可保育園の施設長及び次期施設長、主任級保育士の約70名。

日本初の医療的ケアの必要な子や重症心身障害児の長時間保育など障害児保育事業を行なっているフローレンスにお声がけいただき、当日はフローレンス代表理事の赤坂と、障害児保育園ヘレン事業部の森下が講師として登壇しました。

講演のⅠ部では「障害児保育園ヘレン」(以下、ヘレン)の開園に至った社会的背景やヘレンならではの大切にしていることなどについて、Ⅱ部では保育の必要性認定がなくてもすべての親子が保育園に通うことができる「みんなの保育園」構想についてお話しました。

【前編】では、この講演のⅠ部でお話しした内容をご紹介します。


フローレンスが取り組む「障害児保育」とは

講演ではまず、日本の障害のある子どもたちの置かれている状況をお伝えしました。

近年、胃ろうやたんの吸引、人工呼吸器といった医療的ケアが必要な「医療的ケア児」が増えており、全国ではおよそ2万人いると言われています。一方で、医療的ケア児・障害児をお預かりする施設が極度に不足し、親御さんが就労を諦めなければならない現状があります。

ヘレン開設の背景

このような「障害児保育問題」に取り組むため、2014年9月に杉並区障害者施策課の協力を得て、日本で初めて障害のあるお子さんを専門に長時間お預かりできる「障害児保育園ヘレン荻窪」を立ち上げました。

しかし、たった一園つくっただけでは、全国の医療的ケア児はサポートできません。

そこで2015年にフローレンスが中心となり、医療的ケア児の預かりに課題があることの啓発活動を行う全国医療的ケア児者支援協議会を設立。その後、超党派の国会議員や官僚、医療関係者、福祉事業者、当事者団体が結集する「永田町子ども未来会議」にフローレンスはメンバーとして出席し議論を重ねました。

永田町子ども未来会の様子

2021年9月に「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(通称:医療的ケア児支援法)」が施行。「医療的ケア児」を法律上で明確に定義し、日本の歴史上、初めて国や地方自治体が医療的ケア児の支援を行う責務を負うことを明文化しました。

医療的ケア児支援法提言関係者

この法律の後押しもあり、認可保育園では医療的ケア児・障害児を含む子どもたちを同じ環境で保育する「インクルーシブ保育」が広まりつつあります。

フローレンスが行なった調査では2022年10月現在、23区で医療的ケア児・障害児保育の受け入れをしている、あるいは来年から検討している認可保育園は8割を超えることがわかっています。

「やってみたい」を引き出すヘレンの保育。大切にしていること

障害児の養育や教育では『ここまで、できるようになる』というような目標設定するものもありますが、フローレンスでは子どもの『やってみたいな』『遊びたいな』という好奇心を引っ張り出すことを心がけています。楽しく遊んでいるうちに成長発達にも影響しているような保育的アプローチを大切にしています

と森下は、「障害児保育園ヘレン」の保育で大切にしていることを伝えます。

家庭や病院など限られた環境にいることが多い医療的ケア児にとって、集団保育や周囲との関わりは大切な時間です。ボタンを押す・タッチ画面を操作するなど、それぞれに適したコミュニケーションが取れるよう環境を整えることで、「やってみよう」と自分で発信する力を身につけることができます。

ヘレン保育で大切にしていること3つ

『我が子の成長が見えない』、『子どもの反応をどう理解していいのかわからない』、『子どもにどういう未来があるのか』、などポジティブに受け止められない親御さんもいらっしゃいます。親御さんの不安や悩みに寄り添いサポートすることも大切にしています。

と森下は、続けます。

ヘレンでは、専門的な知識を持ったスタッフが個別の発達に応じた支援計画を作成。将来を想定したサポートとしては、特別支援学校の先生をヘレンに招き親御さんと話す機会を設けるなど、ヘレンがハブとなって地域と連携しています。

ヘレンは保育士・看護師・リハビリスタッフの三者が強みを活かしチームを組んで、医療的ケアに対応する施設です。それぞれ専門性や保育観・教育観のなかで、互いを尊重し、多職種連携をどのようにして調整するのかなどに日々努めています。

「インクルーシブ保育」。今までの保育との違いとは?

質疑応答では、

インクルーシブ保育を進めるにあたって大変なことや、今までの保育との違いとはなにか

という質問に赤坂と森下がお答えしました。

赤坂は障害や発達特性のあるお子さんにあった配慮は必要とした上で、

障害児の保育も健常児の保育も、基本的な考え方は同じ

と伝えました。

インクルーシブ保育とは、子どもの年齢や国籍、障害の有無に関わらず、すべてのお子さんへ、それぞれにあった保育を提供する保育方法です。

「違うこと」はその子一人ひとりの個性であり、個性に合った関わりをしていくのは保育指針と同じで、保育の原点です。個々の特性や性質を考えて保育を行うという意味では、健常児のみの集団でも同じことだと、私たちは考えています。

自治体×保育園×フローレンス。連携して支援の輪を広げる

ヘレンと杉並区の連携について講演

フローレンスの障害児保育・支援事業では、お子さんをお預かりして親御さんの就労支援や24時間休みのない育児をサポートすることはもちろん、自治体や認定保育園にフローレンスで培ってきたノウハウを共有し、医療的ケア児とそのご家族を取り巻く環境をより良くする取り組みも行なっています。

また今後も引き続き、杉並区のほか各自治体へ情報共有や、医療的ケア児・障害児の保育研修・看護師研修を行なうなど、自治体・認可保育園・フローレンスが連携をとりながら、支援の輪を広げていきたいと考えています。

すべての親子が社会から取り残されることなく、笑顔で可能性を叶える社会を目指して、フローレスでは新しい仲間をスタッフとして迎え「あたらしいあたりまえ」をつくる活動をしていきたいと考えています。

後編はこちら▼


フローレンスの障害児保育・支援事業にご興味のある方は、ぜひご応募ください。共に使命感をもって働いていただける方を心よりお待ちしています。


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