この10年で、就業している障害者は2倍以上になりました。
厚生労働省「令和4年 障害者雇用状況の集計結果」によると、10年前は身体障害者の割合が90%近くを占めていましたが、令和4年では精神及び知的障害者の割合が半数近くに増えており、多様な障害者が企業で働くようになったことが分かります。
障害者の法定雇用率も令和5年から令和8年の間に2.3%から2.7%に引き上げられるので、今後も多様な障害者が社会で働く未来が見えます。
そんな現代において、社会との接点を持てない生徒たちが存在するのです。
社会との接点を持てないまま卒業する生徒たち
こちらは特別支援学校を卒業する生徒の進路をまとめた表です。
一番卒業生が多い知的障害のある生徒のうち34%が就職をします。前述した障害者雇用者数の推移が続けば、今後も知的障害者の社会進出は増えていくと予想されます。
今回皆さんに知っていただきたいのは、卒業生のうち2番目に多い、肢体不自由がある生徒たちの進路です。
肢体不自由がある生徒の85%は卒業後に福祉施設等に入所または通所します。企業に就職する生徒はわずか6%です。
肢体不自由とは、身体の動きに関する器官が病気やけがで損なわれ、日常生活などの動作が困難な状態をいいますが、その程度は一人一人異なり就労への思いを持つ生徒も存在します。
通常、就労を希望する特別支援学校の生徒には企業実習の機会がありますが、肢体不自由のある生徒向けに実習の機会はほとんどありません。学校の先生が実習先を探しても、受け入れてくれる企業が非常に少ないのが現状です。
フローレンスで始めた職場体験実習
フローレンスの障害者雇用推進チームと特別支援学校の進路指導の先生たちで、相互見学や意見交換を行い、職場体験実習という形の機会を新しくつくりました。
そして、昨年の夏に肢体不自由のある生徒2名を実習生として受け入れることができました。
実習生も最初は緊張した様子でしたが、事務作業を丁寧に進めてくれたり、職場のスタッフにパラスポーツのボッチャを教えてくれたり。
障害がある当事者の視点で政策提言の検討会議に参加したり。
多くの仕事やスタッフに関わることができ、楽しかったと振り返ってくれました。
独りで電車に乗ったり、雨の日に駅で知らない人に雨合羽を着せてもらったりと、社会に出て初めて経験することも多かったそうです。
実習後は学校の課題や次の実習にも意欲的に取り組んでいると先生から聞き、嬉しく思いました。
東京都特別支援学校協議会での講演
都内の特別支援学校の進路指導の先生たちは定期的に協議会を開催し、勉強会や情報共有会を行っています。
私たちは昨年の秋、協議会に招待され職場体験実習について講演をさせていただきました。
講演後には『素晴らしい取り組みです』と感激されたり、『こういった生徒がいるので職場体験実習を計画したい』と早速ご相談くださったり、多くの先生たちから反響をいただいています。
この講演を通じて更に3校からご相談をいただき、職場体験実習の受け入れに繋がりました。
希望と手をつないで歩める社会を目指して
実習生の中には、自宅と学校を通学バスで往復する毎日を過ごす生徒も少なくありません。アルバイトもできません。卒業後、85%の生徒は福祉施設に行きます。
企業での実習受け入れが進めば、様々な経験をすることができ、就労を目指す生徒も増え、企業の受け入れ体制の整備も進み、6%の就職率は増加していくことと思います。
私たちが出会った実習生たちはみな熱心に仕事に取り組み、それぞれの夢を抱いていました。
実習の様子はフローレンスのバックオフィスチームで運営しているnoteにも投稿しています。今回の記事で興味を持っていただいた方は、是非こちらの記事もお読みください。
私たちフローレンスは来年度も職場体験実習の受け入れを進めていきます。
受け入れ実績を発信しながら、企業側の受け入れが進むような政策提言もしてまいります。
このようなフローレンスのソーシャルアクションは皆さまのご寄付によって支えられています。
子どもたちが希望と手をつないで歩める社会を目指しているフローレンスへの応援をよろしくお願いします。