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日本に暮らす「外国にルーツを持つ親子」の今に目を向けてみよう!【2月保育塾】

日本に暮らす「外国にルーツを持つ親子」の今に目を向けてみよう!【2月保育塾】

#障害児・医療的ケア児家庭支援 #みらいの保育園 #研修

外国にルーツを持つ親子には、生活する上で言語面や文化面などで様々な壁があるにも関わらず支援や制度が充実しているとはいえない日本の現状があります。

その背景には、どんな壁があるかを知らなかったり、文化面の違いへの理解が乏しいことや、日本に住む外国ルーツの子どもの中には、保育園・幼稚園・学校に通ってなく、所在すらわかっていない子ども(=無園児・無縁児)が存在するなど、見えない存在になっていることが挙げられます。

 

フローレンスが運営しているおうち保育園などで外国にルーツを持つ親子と接する機会もあることから、2月保育塾では、【日本に暮らす「外国にルーツを持つ親子」の今に目を向けてみよう!】というテーマで、保育塾を実施しました!

 

また、今回はNPO法人青少年自立援助センターYSCグローバルスクールで海外ルーツ青少年受け入れ体制推進事業を担当され、日本に暮らす移民/難民支援分野に15年ほど関わってこられた、田中志穂さんを特別ゲストとしてお招きしました。また、サポーターにはみらいのソーシャルワーク事業部の逢坂由貴さんを迎え、外国にルーツを持つ親子についてみんなで一緒に考えました。

*『公益活動における海外ルーツ青少年受け入れ体制推進事業』(minc-みんなでつくるインクルーシブ社会)は、特定非営利活動法人青少年自立援助センター定住外国人支援事業部が運営しています。さまざまな団体が多文化対応スキルを身に着けることで、海外ルーツの青少年が利用できる社会資源を拡充させ、支援の空白地帯をなくすことを目的として伴走支援などを行っています。

保育塾とは、フローレンスの全スタッフに向けた自主参加型の研修です。毎回異なるテーマをもとにサポーターをお呼びし、アクティブラーニングを通じて学びを深めています。

今年度の保育塾は「子どもにとってより良い環境を考える姿勢をもちながら、日々の業務に取り組むきっかけとなる場」をデザインしています。

外国ルーツの子どもの多様な背景

 

はじめに、田中さんから「この人は外国ルーツ」だと一括りにできるものではないということについてお話していただきました。

 

・ 両親、子どもともに外国籍。親が日本で生活基盤を立ち上げた後、子どもを呼び寄せるパターンの他、日本で生まれた子どもの場合も外国籍。

・ 母が外国籍、父は日本国籍(逆もあり)。子どもは日本生まれ日本育ちの日本国籍。

・ 両親ともに外国籍。難民として日本に逃れ、子どもは日本生まれ日本育ちの無国籍。

 

外国ルーツの子どもには上記のように、生まれた国、家庭での言語、学習の言語、来日時期、教育バックグラウンド、移動歴、家庭環境、経済状況など、多様な背景があります。「日本人」、「外国人」という言い方をしますが、実際は曖昧でグラデーションがあるということなのです。

外国ルーツの親子がおかれた社会的状況

 

次に、講義の中でこのような問いかけがされました。

 

 

“日本社会であなたはどんな立場ですか?”

 

日本においては、左側が多数派、右側が少数派です。一つひとつの項目がどのような意味を持つのか、自分のもっている特権について考えさせられました。

 

 

このように、日本で暮らす外国にルーツを持つ人は右側にチェックが入ることが多いかもしれません。

 

これらのチェックは固定化されたものではありませんが、日本に住む日本人の多くは「特権」を得ていて、意図せず「特権」をつかって生きています。そういった立ち位置が意図とは反して相手を傷つける言動につながったり、プレッシャーを与えているかもしれないと考える必要があります。これが自分の「特権」に自覚的になる、ということです。

例えば、多数派である自分の「当たり前」は、相手の「当たり前」ではない前提に立つことや、問題が起きたときに自分と相手にとって目指すべき「より良い」解決策は違うかもしれないことを認識することが大切です。

また、問題に介入する必要があるときには、その人の問題というより、社会の制度を変えていく必要があるということ同じように、その課題を社会的背景と結びつけて考える必要があると学びました。

ケースワーク

 

外国ルーツの親子の背景や現状と課題について講義をしていただいた後、一つのケースをもとに、グループに分かれて様々な視点で考えを深めました。

 

ケースワークの内容

Aちゃん(5歳)は、お父さんが日本人で、お母さんがインドネシア出身。去年来日し、先月から保育園に通っています。いつもお迎えに来るお母さんは日本語が十分に話せませんが、Aちゃんとは日本語でコミュニケーションがとれています。Aちゃんは、宗教食対応のため毎日お弁当を持参していて、周りの子どもたちは不思議がっている様子です。ある日、Aちゃんが他の子が食べている給食を自分も食べたいと言ってきました。

私はどう受け止め、どう対応する?

 

★考えるポイントのヒント★

・周りの子どもたちへの対応はどうする?

・Aちゃんの保護者にはどう伝える?

・Aちゃんにはどう対応する?

・この状態を私はどう感じるか?どうしたいと思っているか?

 

あるグループでは、「Aちゃん家庭の中でどのような話がされて、その食事をしているのか、Aちゃんはお友達と同じ食べ物を食べたいのか?お弁当箱を揃えたいのか?によって対応が変わるため、自分の価値観で判断せずAちゃんにもAちゃんの親御さんにも、まずはコミュニケーションをとることが大切だよね」という話がされていたようです。

 

その他、おうち保育園の事例のシェアを行なったグループがあったり、Aちゃんの発言をもとにみんなで学ぶ機会にするなど様々な話が展開されていました。

 

全体シェアの後、田中さんからは、「宗教の実践もムスリムはこうと決めるのではなく、親御さんやお子さんがどういう気持ちなのか、関係性や環境によって対応を考えるべき」ということや、「どこを受け入れ、どこはルールとしてみんなでやっていくのか、線引をするプロセスに関係者を巻き込み丁寧なコミュニケーションを行うことが大切」というコメントもいただきました。

 

事業部を越えて様々な視点の意見を交わすことで、参加者同士で学びを深められました。

 

おうち保育園での取り組みは、以下の記事で詳しくご紹介しています。

多様性を受容できる社会を目指して

マイクロアグレッションという言葉があるように、小さな偏見や差別や行動が、意図せず誰かを傷つけてしまうことがあります。完全に偏見を持たないことは難しいですが、常に「自分はバイアスをもっているかもしれない」ということを忘れずに、一人ひとりを見ていていくことが大切だと田中さんは仰っていました。

*マイクロアグレッションとは、ありふれた 日常の中にある、ちょっとした言葉や行動や状況であり、意図の有無にかかわらず、特定の人や集団を標的とし、人種、ジェンダー、性的指向、宗教を軽視したり侮辱したりするような、敵意ある否定的な表現のことである。(デラルド・ウィン・スー『日常生活に埋め込まれたマイクロアグレッション』マイクロアグレッション研究会訳、2020 年、明石書店)

 

フローレンスでも、実際に外国にルーツを持つ親子との関わりで困り感を抱える現場スタッフ、外国ルーツを持つ親子に関わった経験がないスタッフ、さまざまな立場のスタッフがいますが、ケースワークや質疑の中で活発な議論が交わされ、テーマについての関心度の高さが伺えました。

今回の研修ではじめて知る内容も多かったかと思いますが、今回の保育塾の場で疑問を全て解消するというよりも、知らないということに気づけたり、より深く問題意識をもつ機会になったのではないでしょうか。

 

今回の取り組みに多大なるご協力・ご支援をいただいたYSCグローバルスクールの田中さんには心から感謝を申し上げます。

 

外国ルーツの親子の側に問題があるのではなく、不公正な社会に問題があるとして、社会が問いただされ、多様性を受容できる社会を目指していけたらと思います。

 

私たちは「みんなで子どもたちを抱きしめ、子育てとともに何でも挑戦でき、いろんな家族の笑顔があふれる社会」を目指す団体としても、役割・役職に問わず全スタッフが学び続ける機会を充実させています。

 

フローレンスではともに考え、ともに学び、社会をよりよくしていく仲間を心からお待ちしています。


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