フローレンスの保育園では、「食」も保育の大切な一部と捉え、子どもたちが食体験を深めて『生きる力』にすることを目指しています。
今回、みんなのみらいをつくる保育園東雲では、生きているお魚が食に変わるまでを目の前で体験する食育イベントを行いました。
この記事では、イベントの様子を写真とともにお伝えします!
イベント当日、まずはお魚を仕入れるところから始まります。
園のスタッフが向かった先は、近くにある豊洲市場!
その様子を中継を通して園で見守る子どもたち。画面に映る魚介類に興味津々です!
お魚屋さん「丸佳」の山岸さんが用意してくれた新鮮な鯛をゲットし、園に持ち帰ります。
「生きているところから食べ物になるまで全部を見せてあげたい」
今回のイベントは、このような想いからはじまりました。
お魚が生きているところから食べ物になるまで、全部を子どもたちに見せてあげたい
企画は、なんと以前みんつく東雲で保育スタッフとして働いていたI先生からの提案でした。
今は他園で働くI先生が、なぜみんつく東雲でイベントをやろうと思ったのか、お話を伺ってみました。
「他園で食育活動を行った際は、すでに死んでいる状態のお魚を子どもたちの前で解体しました。そのとき、ある園児から『生きているお魚はどうやってやるの?』という質問があったのです。自治体や園のルールによってか、他園では食育で扱ったものと給食で使う食材が異なります。また、なかなか生きているお魚を扱うこともできません。」
先生は、このような現状に対して
「生き物や食べ物への感謝など、食育活動を通して本当に子どもたちに伝えたいことが伝わらないのではないか」と疑問に感じていました。
そこで、「フローレンスの保育園ならこの想いを実現できるんじゃないか!」
そう思い、みんつく東雲の園長先生に提案したことからこのイベントが企画されました。
リスクがあることに対して、「~が危ないからやめよう」「~の可能性があるからできない」。
こうやってすべて否定するのではなく、「こうすれば安全だ」「これならできそう」という風に、できないと思っていたことを、みんなでできるように工夫していく文化。
これがフローレンスの保育園の魅力です。
命をいただくということ
今回鯛をさばいてくださったのは、海太郎高島平店の秋山さんと廣瀬さん!(以下、お寿司屋さんと表記)
はじめに、お寿司屋さんから自己紹介があり、お魚の特徴や部位などのお話がありました。
そのときお寿司屋さんは、しきりに人間の体とお魚の体の似ているところに言及。
「お魚も自分たち人間と同じように生きているんだ」というメッセージを伝えてくださいました。
「命をいただくことで、みんなのちからになる。だからこそ、『いただきます』を言うんだ」
そして、今回は子どもたちの目の前でお魚の命をいただくことになるため、みんなでこんな約束をしました。
「鯛さんをシメる前にみんなで『いただきます』を言おうね!」
実は、今回のイベントのねらいは
「魚をシメるところから実際にみて、学び、命をいただいていることを知る」
「お寿司屋さんがどんな仕事をしているか知る」
でした。
「命をいただく」ということを実感してもらえるような体験を子どもたちに届けたい!
また、いきものが食べ物に変わるまでのあいだには、お魚屋さんやお寿司屋さんのように、大事なお仕事をしている人がいることを子どもたちに知ってもらいたい!
園のスタッフもこんな想いをもってこのイベントを企画しました。
生きている鯛がお刺身に…命をいただく瞬間を目の当たりにした子どもたち
今回のイベントをずっと前から楽しみにしてきた子どもたちですが、いざ、鯛を目の前にすると、いろんな反応をする子どもたちがいました。
「怖い」と言いながら後方の席に移動する子どももいれば、目を大きく開けて前のめりになる子どもも。
まだ生きている鯛は、尾びれをバタバタさせていてお寿司屋さんもテーブルに鯛を押し付けるのが大変。
子どもたちは夢中になってその様子を観察していました。
そしていよいよ、シメる作業。
お寿司屋さんと約束したとおり、みんなで手を合わせて、
せーのっ
「いただきます」
お寿司屋さんは、みんなの「いただきます」を聞いた後、シメる場面を見せてくれました。
鯛が動かなくなった瞬間、子どもたちも静かになりました。
前のめりだった子どもも、椅子に深く座ってなんだか悲しそう。
それでもお寿司屋さんの仕事はまだまだ続きます。
死んでしまった鯛をちゃんと美味しくいただくために、手早くお魚を扱うこともお寿司屋さんの大切なお仕事。
次は、鱗をとっておろします。
キラキラした鱗に興味津々な子どもたちに対して、先生が「どんな形?」「どんな色?」とさらに興味を掻き立てるような質問を投げかけます。
鱗をとっておろした後、その切り身が並べられました。
「これがみんながスーパーで見るお刺身の形だよ!」と先生が言うと、子どもたちも嬉しそう。
最後に、お寿司屋さんの見せどころ!(大本命!)
鯛の握り寿司が完成しました!
少し前まで生きていたお魚が、子どもたちが見慣れたお寿司に大変身し、子どもたちも大盛りあがりです。
ひとりひとりの気持ちや意見を大切にする「シチズンシップ保育」
イベント中、子どもたちの反応は十人十色。
途中からは違うことをして遊びたいと場を離れる子どもがいても、それはそれで良しとする保育スタッフの対応はまさに、フローレンスの保育園が大事にしている「シチズンシップ保育」のあり方の一つです。
シチズンシップとは、「一人ひとりが社会の一員として、よりよい社会の実現のために、積極的に多様な人々と協働して課題解決する資質、能力」のことを指します。具体的には、なにか問題があったときに誰かが解決してくれるのを待つのでなく「自分になにができるか?」を自発的に考え、積極的に関わる姿勢であったり、文化の違いや生活環境の違い、障害の有無などさまざまな多様性を受け止めて、他者と関われる姿勢であったりします。
フローレンスの保育園では日々の生活の中で、自分の気持ちや他人の気持ちを知り、大切にすること。子どもたちの「やってみたい」を1つ1つ子どもたちと考えながら実現していくこと。その積み重ねが大切だと考えています。
シチズンシップ保育は子どもたちひとりひとりの気持ちや意見を大切にし、子どもたちの「やってみたい」を応援する保育なのです。
このイベントでも、保育士たちは子どもたちの興味関心がどこに向いているかを常に観察し子どもたちと接していました。夢中になって観ている子どもにはさらなる問いかけを。悲しくて泣いてしまっている子どもには、なぜそのような感情になってしまったのか向き合えるような声掛けを。違う遊びに興味をもった子どもに対しては、自分で判断したことを尊重し一緒に遊びに入ったりなど。決して大人の都合を押し付けることなく、一人ひとりと寄り添っていました。
また、イベント終了後にこんなエピソードも。
お魚が解体される場面を見て大泣きしていた子どもが、ブロックでつくったお寿司をイベント終了後にお寿司屋さんに見せに行っていたのだそうです。
自分の感情を大切にしながらも、子どもたちを楽しませようとしてくれたお寿司屋さんの気持ちにも寄り添うような行動でした。
このような光景は、子どもたちが日頃から自分の感情に向き合い他人に伝えることを保育スタッフが大切にしているからこそ、見られたものだと思いました。
今回お寿司屋さんにさばいていただいた鯛は、鯛めしとして子どもたちに食べてもらいました!「美味しい~」と嬉しそうに食べる子どももいれば、そうでない子どももいたようです。
そんな姿も子どもたちのありのまま。
子どもたちのみらいにつながる大切な体験
今回のイベントを通して、子どもたちが見たこと、感じたことは、
これからの子どもたちにとってどんなふうに影響するでしょうか。
目の前で命を失うお魚を見て、
「怖い」「可哀想」という正直な感情を抱いたこと、それを表現できたこと。
そして、そのお魚が食べ物になるまでの一連の流れを見て、命をいただくことを知ったこと。
「いただきます」という言葉の真の意味を実感するような体験だったのではないでしょうか。
今後もフローレンスの保育園では、子どもたちが自ら未来を切り開いていけるよう、たくさんの体験を届けていきます!
ご協力いただきありがとうございました!
今回、新鮮な鯛をご準備してくださったのは、丸佳の山岸さん。
早朝から、子どもたちのもとへ元気な鯛を届けるために、たくさん準備をしてくださいました。
そして、鯛を解体してくださったのは、海太郎高島平店の秋山さんと廣瀬さん。
お魚のことや命をいただくということについて心を込めて伝えてくださいました。
お忙しいなか、ご協力いただき本当にありがとうございました!
フローレンスの保育園のWebサイトでも、シチズンシップ保育に関する記事を公開しています。
「シチズンシップ保育」にご興味ある方はぜひ、こちらもご覧ください!