あした食べるものがない、食料を必要としている子育て家庭への支援を後押しする仕組みが、実現しそうです。
生活困窮者などに食品を配布する取り組みをしている「フードバンク」。政府は、食べられるにもかかわらず捨てられている食品=食品ロスを減らし「フードバンク」の活動を推進するため、「フードバンク」に提供された食品で万が一、食中毒などの事故が起きても、その食品を提供した事業者の責任を問わない=免責される仕組みを導入する方針だと報じられました。
先日、閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2023」には、次のように明記されています。
食品ロス削減目標達成に向けた施策パッケージを年末までに策定する。
骨太の方針p.34
注記:食品の寄附や食べ残しの持ち帰りを促進するための法的措置、フードバンク団体の体制強化、賞味期限の在り方の検討を含む。
寄付した事業者の免責は「善きサマリア人の法」と呼ばれ、企業などからのご寄付で「こども宅食」を運営しているフローレンスとしても、実現に向け政策提言を行ってきました。
必要とされる支援と「食品ロス」
フローレンスが自治体や企業などと協働し2017年に始めた「こども宅食」は、食品や日用品を無料で子育て家庭にお届けすることをきっかけに、ご家庭と繋がり適切な支援を提供する取り組みです。
2018年からは「こども宅食応援団」を設立し、全国で「こども宅食」の立ち上げを支援しています。
ご家庭に届ける食品の多くは、企業など事業者から寄付していただいたものですが、特に米やスパゲッティなどの主食は非常に不足しているのが実情です。
一方で、毎日、大量の食品が廃棄されています。
農林水産省・環境省・消費者庁が今年6月に公表した令和3年度の日本の食品ロスの推計値は約523万トン。前年度より1万トン増え、国民1人あたり毎日、茶碗一杯のご飯の量に近い食品をロスしている計算になるそうです。
「こども宅食」や「フードバンク」などは、安全に食べられるのに捨ててしまうような食品の寄付を企業などの事業者に日々、お願いしていますが、全国のフードバンクなどが取り扱う量は、食品ロスの量には遠く及びません。
寄付を躊躇する理由のひとつが、万が一、食品事故が起きた場合の責任問題だと指摘されてきました。
農林水産省が公表している調査では、フードバンクへの支援意向がない企業(300社)に対し、今後支援していくために必要な条件について尋ねたところ、最も多かったのは「トラブルが発生した場合の責任の所在があらかじめ明確化されること」となっています。
食品寄付のハードルを下げる「善きサマリア人の法」とは
こうした課題を解決するのが、今回の「善きサマリア人の法」と呼ばれる仕組みです。
「人を助けるために無償で良いことをしたときは、失敗しても罰せられない」という趣旨で、聖書のたとえ話に由来しています。
アメリカやカナダ、オーストラリアなどでは食品寄付でこの考え方が導入されており、「万が一、食中毒のような食品事故が起きても、善意で寄付をした事業者の責任は問わない」という免責が定められています。
これが日本にも導入されれば、食品寄付のハードルは低減するはずだと考え、フローレンスは国会議員や関係省庁の担当大臣に、繰り返し政策提言を行ってきました。
報道によると、来年の通常国会での法改正を目指すということで、「フードバンク」に加えて「こども宅食」や「こども食堂」も対象になるよう、議論を注視したいと思います。
子育て家庭に厳しい状況続く 提言と実践を続けます
7月4日に公表された「国民生活基礎調査」によりますと、子どもの相対的貧困率は2021年時点で11・5%、ひとり親世帯でみると44・5%にのぼり、半数近くが貧困状態にあります。
また、信用調査会社「帝国データバンク」のまとめによりますと、7月に値上げされる食品や飲料は、パンなど3500品目あまりに上り、8月以降も乳製品を中心に値上げが予定されていて、ことし1年間の食品と飲料の値上げは累計で3万5000品目前後に到達すると予想されているそうです。
子育て家庭はますます厳しい状況に置かれ、「こども宅食」などの支援を必要としている親子は依然として多いのが実情です。
「善きサマリア人の法」が実現し、さらに多くの家庭に支援を届けられるようになることを心待ちにしつつ、フローレンスは政策提言と実践を続けていきます。
フローレンスの「こども宅食」では、食品の提供だけでなく、寄付企業のご協力のもと野球観戦などの体験機会の提供なども行っています。
こうした活動は皆さまからの寄付で支えられています。ぜひ、応援をよろしくお願いします。