お盆になると、弁護士事務所や司法書士事務所に相続の相談が増えるそうです。帰省して久しぶりに会った親の老いた姿を見て、何かと心配になる方が多いのかもしれませんね。
実は今、年齢に関係なく遺言書を書く方が増えているのをご存じでしょうか?
遺言書というと、「莫大な財産を保有している高齢の方が書くもの」といったイメージがあるかもしれません。
ところが今は、20代や30代の海外出張の多いビジネスマンや、お子さんのいないご夫婦、未成年のお子さんのいるご夫婦などで遺言書を書くケースが増えているといいます。
それはなぜか。こちらのケースをご覧ください。
<Aさん(35歳・独身・女性)の場合>
Aさんの祖父は昭和初期の生まれで、5人の子どもがいます。祖母はすでに他界しています。祖父の娘であるAさんの母は長女として、結婚してからも祖父の名義の家で同居してきました。Aさんはまだ独身で、実家暮らしです。
祖父に万が一のことがあったとき、当然、祖父の世話をしているAさんの母が、家も財産も継ぐのだと思っていました。
ところが、祖父が亡くなったとき、遺言書がなかったために、今住んでいる家や土地も含めて、すべての財産が、祖父の5人の子ども全員に等しく相続されることがわかったのです。
民法によれば、同居しているかどうかに関わらず、財産は子ども(1親等)に均等に分けられます。つまり、祖父の名義の家や土地も、祖父の5人の子どもたちに
く分配されることになるのです。5人のうち、亡くなっている人がいる場合(「代襲相続」といいます)には、その子ども(被相続人の孫)が法定相続人となります。
つまり、実家暮らしのAさんは、休日などに母親といくら祖父の世話をしてきたからといって、法的に財産を相続する権利はありません。
ところが、すでに他界している長男の子(Aさんのいとこ)は、祖父とは疎遠になっていたというのに法定相続人となるのです。
祖父は、世話をしてくれた長女や、すぐそばで可愛がっていた孫のAさんに遺産を残したかったのかもしれません。しかしながら、遺言書がなかったために、Aさんの母親は住んでいる家を守るために「遺産分割協議書」を作成する必要があり、大変な思いをすることになりました。
「遺産分割協議書」とは?
貯金は均等に分けられても、住んでいる土地や家をそのまま物理的に分割することはできません(但し、所有権を共有分割することはできます)。
そこで、相続人全員で遺産の分け方についての話し合いをすることで、誰がどの財産をどのような割合で相続するのかを決めることができます(但し、法定相続人全員の同意が必要)。
これを「遺産分割協議」といい、全員の合意が取れた内容を「遺産分割協議書」に記載し、全員が署名のうえ実印で押印します。
署名と押印の、意外と高いハードル
ちょっとここで想像してみてください。
年配の方は、兄弟姉妹が5人、7人という方も珍しくないですよね?その全員(あるいは亡くなっている場合はその子ども)から、書名と実印をもらうという作業が、いったいどれだけ大変なことでしょうか。
しかも、相続にはタイムリミットがあります。なんと、亡くなってから10か月以内に手続きをしないと、相続税の優遇措置が受けられないのです。
全員の署名と押印が集められなければ、遺産分割協議書は成立しません。相続人が行方不明になっていたり、認知症で判断能力がなくなっていたりした場合、手続きは非常に煩雑になってしまいます。
対象となる財産の額や規模は関係ありません。遺産分割協議が調わなければ、土地や家の売却や名義変更も難しくなってしまいます。
遺言書は、残される人への思いやり
遺言書があれば、相続する人の負担を減らせます。
今回のケースであれば、遺言書を残しておけば、遺産分割協議書を作成する必要はありませんでした。法で定められた遺留分(注1)を侵害しない限り、相続人に遺産分割の負担をかけることなく意志を反映させることができます。
(注1)遺言によっても奪うことのできない法定相続人(兄弟姉妹(代襲の場合は甥姪も)以外の法定相続人)が取得できる最低限の遺産の割合
高齢の方がお亡くなりになったケースをご紹介しましたが、若い方の間でも遺言書を書く方が増えている理由は、もうお分かりでしょうか?
お子さんがいない場合や、お子さんが未就園児の場合、その手続きはさらに煩雑になります。配偶者や大切な人に確実に財産を残すためには、遺言書が必要なのです。
「遺言書」で、この先の人生を豊かにする
若い人が遺言書を書くことのメリットは、自分が今いる場所を確かめられる、ということにもあります。一度、自分の人生の棚卸しをしてみることで、どんな人生を送ってきたのかを振り返り、今の自分は何を大切にしているのかに気づくことができれば、ここからの人生がより豊かなものになっていくでしょう。
「遺言書」はいつでも書き換えられます。ときに立ち止まり、人生を見直すきっかけにするのも良いかもしれませんね。
「遺贈寄付」という選択 ー遺言で、生きた証を次の世代へ
遺言書は、相続人側の負担を減らすだけのものではありません。遺言書によって、財産を残される方のご意志を、「遺贈寄付」という形で次世代につなぐこともできます。
近年、大切に築き上げた財産を、自分の生きている社会に還元する、あるいは未来の社会をよくするために遺すという考え方が、欧米だけでなく日本でも広まりを見せており、この10年間で「遺贈寄付」件数は2倍弱、寄付金額は2倍強の168億円に達しました。
遺贈寄付というと莫大な金額をイメージされる方も多いかと思いますが、実は少額からの寄付も可能です。フローレンスにも「財産の一部を、未来の子どもたちのために役立てたい」という故人のご意志を継いで数万円からの寄付をしてくださる方もいます。
実際に、フローレンスにご寄付いただいた方のエピソードをご紹介します。
西本 結子さん(仮名)50代
お母様の幸子さん(仮名)から受け取った相続財産を、社会貢献活動に活かすことを検討されていました。生前の幸子さんのご意向もあり、子ども支援をしている団体に寄付したいが、どの団体へ寄付するべきかを非常に悩まれたそうです。
「フローレンスは2004年から長い期間、活動されていて実績もあります。様々なメディアで紹介もされていて、信用できると感じました。そんなフローレンスを応援することに決めました」
うれしいお言葉とともに、相続財産の一部をフローレンス全体の活動支援へご寄付いただきました。
フローレンスを信頼し、託してくださった方々の想いを受け取り、次世代を作る子どもたちのために活用していくこと、それがフローレンスの使命と考えています。
大切な方のご意志を、未来の子どもたちの笑顔につなぐフローレンスの遺贈寄付について、詳しくはこちらからご覧いただけます。
「遺贈寄付」付きの遺言書が無料で書けるチャンスです!
「遺言書」があると安心だということは、おわかりいただけたと思います。
でも、いきなり「遺言書」を書けといわれても、二の足を踏んでしまいそうですよね。
そこで、日本承継寄付協会が今年も無料で「遺贈寄付」付きの遺言書が書ける、「無料寄付遺言書作成週間」を実施します!
「無料寄付遺言書作成週間」とは?
自分の思いや願いを遺言書に託すことができる文化が根付くようにとの思いから、日本承継寄付協会が相談窓口を経由してご紹介する司法書士の方々のご協力のもと、寄付遺言書作成を「無料」で実施(該当する寄付遺言書の要件あり)するキャンペーンです。
フローレンスは本キャンペーンの賛同パートナーです。
※該当する寄付遺言書の要件があります。また、印紙代や郵送代はご負担いただきます。
▼詳細は特設サイトをご覧ください
フローレンスの無料相談のご案内
「遺贈寄付に興味がある、でも、まずは気軽に相談したい」という方は、ぜひフローレンスにご相談ください。遺贈・相続寄付に関するご相談を無料で受け付けています。相談ご希望の方は下記お問い合わせフォームよりご連絡ください。遺贈寄付担当者よりご連絡差し上げます。
フローレンスは、日本の子ども・子育て領域の課題解決と福祉活動を全国で展開する国内最大規模の認定NPO法人です。
日本初の訪問型病児保育事業で2004年に設立し、子どもの虐待、子どもの貧困、障害児家庭の支援不足、親子の孤立の課題を解決するため、多様な保育事業を運営するほか、全国で「こども宅食」「おやこよりそいチャット」「にんしん相談」「赤ちゃん縁組」などの福祉事業と支援活動、政策提言をおこなっています。
2018年より遺贈寄付や相続財産の受付を開始し、これまでに弊会に託されたご遺志を、子どもの福祉や子育てにかかる問題の解決に役立ててまいりました。
下記より資料請求もできますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。