フローレンスは様々な領域で寄付企業とともに新しい分野に挑戦しています。
わたしたちが次に挑戦していきたいことの一つが、障害児のeスポーツ、すなわち「スーパーeスポーツ」です。
eスポーツという言葉を目にしたり、耳にする機会は増えてきたかもしれません。また、eスポーツが高齢者のリハビリとして注目されたり、障害のある選手が活躍していることも認知され始めています。
一方で、まだ年齢の低い障害児がeスポーツを楽しんだり、それを通して周囲の人とコミュニケーションする力を伸ばす可能性があることはまだまだ知られておらず、未開拓な分野です。
言葉でうまく意思伝達ができないお子さんや、自由に手足を動かせないお子さん。
そんなお子さんたちもサポートする機械を使うことでゲームを楽しめるようになります。リモコンの操作を友達と分担することで協力しながらゲームをするやり方もできます。サポートする機械に楽しみながら慣れていくことで、それを応用して絵を描いたり、普段のコミュニケーションにも活用することができるのです。
「きっとできない」が「できる」にかわる―――
ゲームを通じて、まだ出会ったことのない自分と冒険する経験をこどもたちやご家族と一緒に実現していきたいと考えています。
テクノロジーの力がこどもの見えない可能性を開く
医療的ケア児とは、たんの吸引や人工呼吸器など医療的なデバイスとともに生きるお子さんです。新生児医療の発達とともに医療的ケア児の数は15年で約2倍に増加し、現在日本で約2万人いると言われています。
一方で、医療的ケア児家庭の生活を支えるインフラは全く整備が進んでおらず、親御さんが24時間お子さんの看護をして、特に母親は就業を諦めることがほとんどでした。
そこでフローレンスは医療的ケア児家庭が働く選択肢もできるよう、2014年に日本で初めて障害児を専門に長時間お預かりする「障害児保育園ヘレン」を開設し、それ以来医療的ケア児・障害児を保育・支援する事業を展開してきました。
医療的ケア児をお預かりする中でわたしたちが驚いたのはお子さんの可能性です。
例えば、入園時には経管栄養をつけて口からは食事をすることができなかったお子さんが、お友だちと過ごす中で食に興味を持ち、何度も試す中で、口から食事をとることができるようになり、経管栄養が外れたということがありました。
その他にも保育をする中でお子さんがわたしたちの想像を超える成長を見せる場面に何度も遭遇してきました。
さらにお子さんたちの可能性を広げるのではと感じたのが、デジタルツールとの出会いです。
こちらのとても素敵な作品は、フローレンスの医療的ケアシッター ナンシーを利用中のお子さんがベッドの中からパソコンを操作して作ったものです。
医療的ケア児、障害児の中には視線やわずかな表情の変化、手の動きで支援者や親御さんとコミュニケーションをとるお子さんがいます。
そういったぱっと見た感じでは気づくことのできない、お子さんの中にある嬉しい・悲しい気持ちや、やりたい・やりたくないといった意思などの豊かな世界を周囲に伝える補助をしてくれるのがデジタルツールなのです。
ただこのデジタルツールを活用できるようになるには本人の意欲はもちろん、家族や支援者の理解とサポートも必要で、それなりの手間や時間がかかります。
なんとか楽しみながらできないか―――
そこで注目したのがゲームでした!
ゲームをして競おう!1番になりたい!
昨年、島根大学の伊藤助教とともに開催したのが、重度障害児・者を対象にした視線入力訓練ゲーム「EyeMoT 3D シリーズ」を用いたeスポーツ全国大会【フローレンス杯】アイ♡スポです。
「どんなに重い障害があっても同じ土俵でみんなでガチンコで楽しめるゲーム大会を!」をテーマに行われ、視線をパソコンのマウスのように使って意思表示をする「視線入力」の技術を使い、選手たちがゲームを実施。
フローレンスの障害児家庭支援事業を利用しているお子さんを含む多くの選手が全国から参加し、視線をパソコンのマウスのように使う「視線入力」の技術を使って、ぬりえや徒競走などのゲームを行いました。
大会会場は株式会社オリィ研究所が運営する「分身ロボットカフェ DAWN ver.β」。
実際に現地に足を運んだ選手もいれば、オンラインで参加する選手もいました。
現地にはご家族や支援者も訪れ、選手たちの戦う様子に大盛りあがり!
大会を観戦したある親御さんは、「どうせわからないから、きっとできないからと、息子に対して希望を持つことを諦めていました。でも、嬉しいと笑い、不快だと泣く息子を見て、いつか息子の声を聴く方法が見つかるかもしれない。わたし自身、また一つ希望が生まれた大会でした」と話してくれました。
参加した選手、親御さん、盛り上がる観客の姿を見て、わたしたちは本会に続く二回目の大会も開催したい、そして障害児がデジタルツールに幼い頃から触れて、家族や支援者とコミュニケーションをとりやすくできる世界を作っていきたいと考えています。
きっとその先には、障害の有無に関わらずだれもが仕事や希望する選択ができる世界が広がっているのではないか…そんな希望も持っています。
日本オラクル本社でスーパーeスポーツ体験会を開催!
そんなわたしたちの思いに共感し、スーパーeスポーツに興味を示してくれたのが日本オラクル株式会社(以下、日本オラクル)です。
日本オラクルさんとは、2016年からひとり親家庭や医療的ケア児家庭の就労支援、スーパーeスポーツへの支援などをテーマにパートナーシップを組んでいます。医療的ケア児の親御さんの再就職支援の際に、様々なトピックスについてディスカッションしていく中で、「『テクノロジーの力で世界をより良くする』という点に共感して、スーパーeスポーツを応援できないか一緒に考えたい」と声をかけてくださいました。
しかし、スーパーeスポーツを応援するといっても、障害のあるお子さんが身近にいない限りイメージが湧きにくいのが実際のところです。
「どんなデバイスを使ってやるんだろう…?」
「手が動かない友達はどうやってゲームを楽しむんだろう…?」
そういった疑問にお答えするべく、あらゆる人がゲームを楽しむためのコントローラー「Flex Controller(フレックス・コントローラー)」の開発を監修したテクノツール株式会社(以下、テクノツール)に企画・協力いただき、日本オラクルの社員と家族を対象に「スーパーeスポーツ体験会」を開催することにしました!
当日は10組の親子が参加しました。
みんな普段と違うやり方でどうやってプレイできるのか興味津々!
体験会でお子さんたちに出されたテーマは、レースゲームに勝つことだけではなく、「身体のどこかに動かない箇所があることを想像していつもとは違うやり方を考えて積極的にチャレンジする」ということ。
例えば体がうまく動かせないお子さんの場合、視線を動かして操作をしたり、指先や足先・あごや頬などの動かせる一部分を使ってゲームを楽しむ方もいます。
そんな創意工夫あふれる障害児のゲームプレイを見たお子さんたち、色んな方法を考えてくれました!
足の指先だけで操作するお子さんたち。一人はハンドル操作、もう一人はアイテムを投げるなど、二人で一つのキャラクターの操作を分担しています。
友達に押さえてもらって顔を固定し、目線だけでキャラクターを操作するお子さん。
寝転んで頬についたスイッチと手の平だけを使って操作するお子さん。
やり方は三者三様で、こどもたちは大人顔負けの方法を次々と編み出します。
これには参加した親御さんもびっくり。
「こどもたちの様子を見て、やっぱり大人とは発想が違うと驚きました。いつもと違うやり方でやっているのに、足で操作してる子が1番になったり、頭で操作してる子が1番になったりしながら普通にゲームが成り立っていました。
あとは、役割分担をして、 協力してやることができるということも発見でした。もしかして障害のあるお子さんとないお子さんが一緒に混ざってやることも『あ、結構できそうじゃん』って腑に落ちて。そういう可能性が見えた体験会でした」
と、体験会を振り返ってコメントくださいました。
スーパーeスポーツに一緒に取り組んでくれるパートナーさんを募集しています!
体験会を実際にやってみて「『障害』と言われるものが、テクノロジーの力で乗り越えられることを体感しながら、よりインクルーシブな社会のためにするためにどんなことができるのか、遊びながら学ぶ機会になりました」と、日本オラクルのCSR担当者の川向さん。
「体験会ではこどもたちがいろいろな障害を想定しながら、制約がある中でも出来ることに目を向けて、コントローラーの使い方を工夫し、新しい可能性をどんどん見つけていく姿が印象的でした。また、今回の体験会を通じて、複数人で協力しながら一つのプレーヤーを動かす楽しさと難しさを知りました。このコントローラーを使ったら、障害の有無や年齢に関わらず、多様な人が一緒のチームでプレイをすることも可能です。スーパーeスポーツには、そういう意味でもインクルーシブなスポーツの可能性を強く感じました」
フローレンスでは、今後、インクルーシブな社会への第一歩として、スーパーeスポーツ大会を継続的に開催し、障害のあるお子さんが小さい頃からゲームなどの楽しい体験を通じて周囲の人とコミュニケーションを豊かにとっていくきっかけづくりがしたいと考えています。
テクノロジーの力で社会をより良くしていきたい!実現に向けて「寄付」で応援したい!一緒にいちから企画してみたい!と考えてくださる企業さんをお待ちしています。
日本オラクルと実施したような体験会も可能です。まずは知ってみることから始めませんか?ぜひお声がけください!