こんにちは!フローレンス仙台支社でライターをしている小澤です。わたしは医療的ケア児の息子を育てているのですが、その過程で様々な壁にぶつかり、それを解決したいと思い、フローレンス仙台支社の皆さんと一緒に活動しています。
「医ケア児家族LIFESTORY」では、医療的ケア児のご家族にインタビューし、今までの苦労やどう考え乗り越えてきたか、などそれぞれの「生き方」をご紹介し、医療的ケア児の保護者の様々な「したい!」が実現できるよう応援していきます。
▼これまで掲載してきたLIFESTORYはこちらから読めます
「楽しんじゃったほうがいいと思うんです。」
インタビューの最後に、鈴木さんは、優しい笑顔でこうおっしゃいました。
鈴木さんには双子の息子さんがいますが、どちらの子にも障害があります。未熟で産まれ、生後まもなく2人とも脳出血を起こした影響で、一人は寝たきりの重症心身障害児に、もう一人のお子さんには、足に麻痺が残りました。
そんな鈴木さんのご家族は「親もきょうだいも、みんなが楽しむ」をモットーに、お子さんの学校の長期休暇の時には家族で外出や旅行をする生活をしているそうです。
そんな生活を送る鈴木さんが大事にしている考え方や暮らし方をお聞きしました。
こどもの体調をみながらの生活
重症心身障害児の息子さんには、経鼻経管栄養という医療的ケアが必要です。今、中学校3年生(2024年3月現在)で、仙台市の特別支援学校に通っています。
鈴木さん「支援学校に通い始めた時は、バスに乗れなかったり、教室まで送っていかないと行けなかったりで、大変なこともありました。でも今は”どこまでできるか”を先生たちと話し合いしながら決めていくこともできています。先生たちの配慮もあり、『送るのは昇降口まででいいよ』って言ってもらえたり、授業中に息子が寝ちゃっても別室で寝させてくれたりなど、無理なく過ごせるようになってきています。わたし自身も、ほかの親御さんと出会えたり、情報交換ができるようになったりしたので、学校は楽しく通えていますね。
ただ、ここ数年は体調を崩しやすくなってきているので、その点配慮は必要かな。学校にも、最近は毎日通うことができていません。少し先ですが、生活介護に通うことになったとしても、平日毎日通うのは難しいんじゃないかなと思っています。」
息子さんの体調を考えながら、通学や放課後などデイサービスへの通所なども調整が必要な生活。でも、鈴木さんは焦りや不安を口にしませんでした。
鈴木さん「わたしも働いているので、今後どうするかは色々考えているところです。でも一番は、この子が体調よく毎日過ごせることなので、通所にこだわらず、在宅支援もうまく活用してやっていきたいと思っています。
難しいのは、在宅生活だけだと息子にとってよくないこともあるかなっていうことですね。家にずっといれば体力も落ちるし、刺激も少なくなるし、お友達と関わる刺激ってやっぱり大切だし。うちの子は疲れて体調崩してしまうんですけど、疲れるってことはたくさん刺激をもらえているっていうことで、いろんなことを感じるから疲れるんだなって思うと、ゆっくりさせることと、刺激を与えることと、そのバランスは難しいです。」
キャンプ場からテーマパークまで!バギーと一緒にどこまでも
息子さんの体調が優先の生活をしながらも、毎年どこかしら旅行に行っているという鈴木さん一家。旅行に行って得られる体験や感覚も大事にしているそうです。
鈴木さん「うちの子はお風呂が好きなので、温泉に入ると嬉しそうな顔をするんです。入浴には家族の介助が必要なので、貸し切りのお風呂じゃないと温泉に入るのは難しくて、旅館に泊まりに行かないとできない体験なんですよね。あと、夏だったら海から吹いてくる風にあたると気持ちよさそうにするので、海辺のキャンプ場に行ったりもよくします。」
こどもに医療的ケアがあってもキャンプ場に行けるのか、ということに個人的に驚いたので、もう少し聞いてみました。
鈴木さん「コテージのあるキャンプ場だったら、問題なく行けますよ!お湯も水も使えますし、電気も通っているので空調も心配ありません。最低限の設備は整っている上に、外にも出やすくて、焚き火など屋外のアクティビティもできるのがコテージのいいところだなと思います。
情報はインターネットで『〇〇県 コテージ』などで調べています。中にはバリアフリーの情報が掲載されているところもあるので便利です。その情報をもとに、電話して、確認して、予約を取っています。その時に、『寝たきりで、車椅子の子がいる』という話は必ずするようにして。これはコテージに限らず、温泉旅館に泊まるときにも話しています。中にはそれを聞いて配慮してくれるところもあるんですよ。たとえば、以前旅館に泊まったときは、夕食がブッフェだったんですが、大きな会場ではなくて個室に案内してくれたことがありました。大きなホテルや旅館だと、色んな人が泊まりに来るので、そういう配慮に慣れてるのかもしれないです。
配慮や過ごしやすさでいうと、小さい頃に行った東京ディズニーランドも、やっぱりすごくよかったですね。キャストの方の対応も素晴らしいし、疲れたら救護室もありますし。車で行ったんですけど、高速道路を使って移動すると、道中も楽なんですよ。知ってますか?高速道路のサービスエリアって、必ず多目的トイレがあって、ユニバーサルシートがあるんです。それとベビーコーナーもあるので、お湯ももらえます。トイレやおむつ替えどうするかって、長距離移動だと悩むじゃないですか。あらかじめ調べていかないといけないし。でも高速道路を使えば、そこはあんまり考えずに乗ってしまって、あとは最寄りのサービスエリアで済ませればいいので、すごく楽です。なので、外出が億劫とか、難しいとか考える方には、高速道路を使うのは結構おすすめです。もしあまりいい目的地が見つからなくても、フードコートでご飯食べたりするだけでも楽しいですし、こどもにとっても刺激になると思います。」
まず行ってみたことが始まり
医療的ケアのある子と出かけることは大変、という声をよく聞きますが、鈴木さん一家が旅行に定期的に行くようになったきっかけは何かあったのでしょうか。
鈴木さん「もともと、わたしが出かけるのが好きだったからです。だから、こどもが小さい頃から、『ここに行きたい!』って思ったらあまり深く考えずに行ってみていました。おむつ替えができる場所があるのかも調べずに行って、どこにもない、ということもあったりしたんですが、なんとかなるもんです(笑)花火大会に行った時は、車でおむつ替えしました。那須に行った時は、入った施設にユニバーサルシートがなくて、受付の人に『おむつが替えられる場所ないですか?』と聞いたら、事務所の一角を貸していただきました。医療的ケアや障害がなくても、こどもが具合悪くなることもあるでしょうし、そういうときのために休む場所を用意しないととか、施設側も対応を考えているんじゃないでしょうか。出先で『困った、どうしよう』ってなったケースや、嫌な思いをしたことは今までになかったです。」
家族もこどもも楽しめるところへ
鈴木さん「こうして外出の経験を重ねていくと、『今度はこれを用意しておこう』とか『これをあらかじめ確認しておくといいんだな』とか、気をつけるポイントがわかってくるようになります。そうするとどんどん外出のハードルは下がっていきますよ。体調の変化にさえ気をつければ、あとはなんとかなります。こどものためだけじゃなく、家族にとっても楽しめる場所、特にうちはきょうだいがいるので、きょうだいにとっても楽しい場所とか、わたしたち親にとっても楽しい場所を選ぶようにしています。」
外に出るだけでもこどもには刺激になるはず。あまり気負わずにでかけてみる
周りの目が気になるとか、外出が億劫とかいうことはなかったんでしょうか。
鈴木さん「周りの目が気になる、というのは、前はあったかもしれないけど、今は全然なくなりましたね。慣れかもしれませんが、最近は街やショッピングセンターとかでも医療的ケア児や障害児をよく見かけるようになりましたよね。世の中も変わってきているな、と思います。もし見られたとしても、それは注目してくれている・認識してくれているということ。だから、いざとなったら助けてくれるかもしれない人だって、思うようにしています。」
「遠出できなくても、ショッピングモールとかに行くだけでもわたしはいいと思っています。こどもが小さい頃は、うちもよくショッピングモールに行っていました。出かけるには近場かもしれないけど、それでも家にいるのとは環境がだいぶ違いますよね。人も多いし、聞こえるものとか、感じるもの、全部刺激になってるんじゃないかなって」
「いつかUSJに行きたい」医療的ケア児の外出サポートがもっと気軽に使えたら嬉しい
最近は息子さんの体調優先で、近場の旅行が多いという鈴木さん。できたら行きたいなと思っているところがあるそうです。
鈴木さん「双子のきょうだいが、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)に行きたいって言うんです。連れて行ってあげたいのは山々なんですが、移動距離の長さや旅行先で何かあったら、と思うとなかなか踏み切れません。体調が悪くなったときにスムーズに病院受診ができたり、医療者の同行とか、そういうサービスが気軽に使えるようになったりしたら嬉しいですね。そんな方法がないかを模索しつつ、しばらくは近場で楽しみます。また近々温泉に泊まりに行く予定があるので、楽しみです。」
周りの目を気にせず、過度に気負うこともなく、家族で楽しめれば近場でもOK!
そんな鈴木さんの外出の考え方や行動力に、わたし自身、お話を聞きながら勇気をもらえました。
『医ケア児家族LIFESTORY』シリーズは「#医ケア児もいっしょに まざらいんキャンペーン」の一環として、医ケア児のご家族の様々な「生き方」をご紹介しています。
#医ケア児もいっしょにまざらいんキャンペーン についてはこちら