フローレンスでは、2019年度(令和元年)に仙台のおうち保育園で「保育園こども食堂」を開始しました。「保育園こども食堂」の活動を通して、保育園に通う家庭のみならず、保育園を地域の親子に開くことで、孤独や困難を抱える家庭とつながり、相談に応じたり支援をすることができるようになり、保育園の役割の1つとして、大きな手ごたえを感じています。
全国で100を超える事例。「保育園こども食堂」の拡がり
昨年度フローレンスは、自園での事業実施、国や自治体への政策提言だけでなく、全国に「保育園こども食堂」及び「保育園等を起点とした食支援活動」の仲間を拡げるべく、こども家庭庁補助事業「ひとり親家庭等の子どもの食事等支援事業」を受託し、全国で保育園こども食堂等を実施する団体への助成事業を実施しました。多くの方がこの助成事業にエントリーしてくださり、全国で100を超える事例が集まりました。
2024年5月28日、こども家庭庁保育政策課、フローレンスの助成事業を元に「保育園こども食堂」を実施した3団体の皆さんにご登壇いただき、「保育園こども食堂 事例共有会」を実施しました。オンラインで200名を超える参加者が集まり、同日開催の意見交換会では、活発な議論が交わされました。
▼事例共有会の動画はこちら
当日事例共有会の中でご紹介した、「事業者アンケート調査報告書」「利用者アンケート調査報告書」の概要についてご紹介します!
▼事例共有会の資料はこちら
「保育園こども食堂」地域子育て家庭支援への高い効果を実証。要支援家庭の対応も
フローレンスでは、「保育園こども食堂等を起点とした食支援事業」を行う事業者を対象にアンケートを実施し、助成を通じた活動の現状や利用者に対しての効果やニーズを詳細に調査しました。また、食支援活動の実施団体を経由して、利用者にアンケートを依頼。食支援事業を利用している家庭のニーズや家庭状況を明らかにして、今後の保育園多機能化の可能性を探りました。
(事業者向けアンケート調査期間:2024年3月25日(月) ~4月24日(水)、回答数:72件)
(利用者向けアンケート調査期間:2024年3月28日(木) ~4月23日(火)、回答数:254件)
調査結果サマリ
トピックス
1.「保育園こども食堂」実施事業者の95%が「地域の子育て家庭の支援ができた」と実感。利用者アンケートからも育児支援に高い効果が認められた
2.実施事業者の76%で要支援家庭への対応が発生
3.「保育園こども食堂」実施事業者の約7割が次年度も継続意向
4.「保育園こども食堂」実施事業者の負担は事務作業や人員配置
1.「保育園こども食堂」実施事業者の95%が「地域の子育て家庭の支援ができた」と実感。利用者アンケートからも育児支援に高い効果が認められた
今回の助成事業を実施する前に、実施事業者が最も「保育園を起点とした食支援活動に期待していたこと」は「地域の子育て家庭の支援ができること」(96.4%)でした。
実際に「保育園こども食堂」を実施した事業者が最も効果を感じた項目も「地域の子育て家庭の支援」(94.9%)で、ほぼ期待通りの高い効果が得られたと言えます。
利用者アンケートでも「保育園等を起点とした食支援活動」を通じて、経済的負担、家事負担の軽減だけでなく「保育園が身近な居場所・相談先となった」と評価されています。
特に利用者アンケートの自由記述コメントからは、離乳食や食育に関するアドバイスを受けることができる点が、多くの親から好評を得ていることがわかりました。 また、保育園こども食堂を利用することで、親子がリラックスして食事を楽しむ時間が増え、精神的な余裕が生まれた、他の親や地域の方々との交流が増え、孤独感が軽減されたとの意見もありました。
事業者アンケートでは、地域連携の効果も報告されています。 地域の様々な施設や団体と連携して食支援活動を行うことで、地域全体で子育てを支援する体制が強化されています。多くの事業者が、この連携によって地域のつながりが深まり、支援の輪が広がっていると感じています。他にも、保育園の認知度向上やスタッフのモチベーション向上に寄与しているとの声も寄せられました。
2.実施事業者の約7割で要支援家庭への対応が発生
実施事業者の76.4%が助成事業を活用した事業の中で「支援が必要な家庭」への対応が発生したと回答しました。
ひとり親家庭、経済的困窮家庭、育児疲れの見られる家庭はもちろん、孤立した親子や、障害者家庭への支援にも有効だと考えられます。
「支援が必要な家庭」への対応としては「継続的な利用の案内」が最も多く(85.5%)、次いで「保護者との個別面談や声掛けの実施」(63.3%)が続きます。「行政や関係機関への連絡・相談」も3割発生しました。実施団体が行う別事業(学習支援、保護者への相談支援)につないだ事例や、食堂に行政の担当者が来て相談会を実施しているといった事例もありました。
3.「保育園こども食堂」を実施した保育事業者の約7割が次年度も継続意向
「保育園こども食堂」を実施した約70%の保育事業者が、次年度も継続して活動を実施する意向を示しています。実施事業者からは「まだまだ出逢えていない支援の必要な家庭がいるので、継続することで救いあげることができる」や「定期的に開催し続けることで、より要支援世帯の方にも情報がゆき届き、支援を受けていただけるのではないか」との声も上がっています。
4.「保育園こども食堂」実施事業者の負担は事務作業や人員配置
一方で事業継続の課題も浮かび上がりました。継続しない、未定と回答した事業者の多くが「事務作業の負担」や「人員配置の負担」を理由として回答しています。
利用者からの声
アンケートに寄せられた子育て家庭の悩みを一部ご紹介します。
子育てに関して、ちょっとした悩みや相談をできるところがない。(ママ友などではなく、保育士などの専門家)
1人の時間がない。特に0歳児。気軽に話せるママ友がいない。
基本ワンオペです。夕飯の支度にかける時間が最も長いので短縮したい。
物価高騰の影響もあり、こども食堂を利用する機会が増えたが、頻度が少ないので増やして欲しい。
食費、衣類費、日用品費ととにかくお金がかかります。節約もしてますが苦しいです。
小学校に入学し、こどもの居場所が少なくなったと感じます。また、親同士の交流がすくなく、子育て相談場所があまりありません。
これらの悩みを「保育園こども食堂」や「保育園等を起点とした食支援活動」が軽減することが期待できます。
「保育園こども食堂」に取り組む団体が広がるよう、自治体や企業にも本アンケートを提供していきます。
参考資料
「保育園こども食堂等を起点とした食支援事業」事業者アンケート調査報告書(地域をつなぐ「保育園こども食堂」)
利用者アンケート調査報告書(保育園こども食堂の効果と利用者の声)
※ご使用の際には、下記2点をお願いしております。
・引用元として「認定NPO法人フローレンス」と出典の明記をお願いいたします。
・弊会の取材申込フォームに使用用途を記載の上お知らせください。
ソーシャルアクション・政策提言は皆さんのご支援で運営しています
フローレンスは、支援現場を自分たちの手で運営しながら、そこから日々得られる親子の生の声や、事業ノウハウを社会に広げ、国や地域の制度に具体的施策を提言をすることで、日本のこどもを取り巻く環境、綱渡りを強いられているハードな子育て環境を、アップデートしていきます。
今回、おこなった全国調査、提言活動についても全て皆さんからの寄付により実現しています。いつも応援してくださる寄付者の皆さん、参加・協働してくださっている多くの皆さんに心から御礼申し上げます。
日本中のすべての親子の笑顔のために、フローレンスはこれからも皆さんと共に「新しいあたりまえ」を形にしていきます。