シチズンシップ保育を〝探究〟した1年間
フローレンスの保育園では、「みんなの未来をつくることに自ら参加し、貢献し、そして楽しむ心を育む」ことを保育理念に掲げ、「シチズンシップ保育」を実践しています。
みらいの保育園事業部では、シチズンシップを育むための具体的な保育のあり方を握っていこう!と、2023年度は1年間かけて保育現場での実践とその結果を持ち寄り、保育のありかたを深め、言語化していく取り組みを行っていくことにしました。
私たちの「保育」を、自分の言葉で語れるように。チームで協力しながら、こどもたちと一緒に気づき、学び、保育園ですごす時間の意味を考え、楽しんでいけるように。保育者として、とことん!保育について考える「シチズンシップ保育探究」の時間を重ねてきました。
シチズンシップ保育を探究して1年、研修・実践を通して「自分の言葉で保育を語る」経験を重ねたことで、これまで感覚的であった保育から、確実な1歩を踏み出しました。安心感と自信、これからの保育に、より一層希望を感じる先生たちの姿がそこにありました。
少しだけ振り返ると、はじまりは一人一人が「シチズンシップ保育ってどんな要素から成り立っている?」ということから考え始め、マップを作り、探究していくための「問い」を立てるところからでした。
「大人のシチズンシップ 保育者が保育を楽しむには」
「シチズンシップ保育をする中で、自由と放任の線引きとは」
「こどもの〝やりたい!〟を叶える保育とは?」
立てた問いを軸に、往還型研修の機会と並行して日々の保育で実践、気づきを振り返り、また実践。時に悩みながら、相談しながら、こどもたちと、保育と向き合ってきました。立てた問いに対しての答えに辿りつくまでに、大切な気づきや学びがあり、成果発表会では各園の取り組みを通した総合的な気づきをシェアして、参加者全員で現在地を確認しました。(報告会についての様子も記事一覧から確認することができます)
保育者の言語化・概念化を「探究の効果」として測る
年間を通して3回、効果測定のポイントをおきました。
同じアンケートに回答することで、年間ゴールにしていた保育者としての言語化・概念化を見ていきます。
数値回答20問、記述式回答4問の内容で、これまで「感覚」で行ってきた保育を、自己採点し深掘りしていきます。
こどもも大人も、「みんな違ってみんないい」だけじゃない。
その先の、どうしたら違いのあるそれぞれがより良く、〝一緒に〟生きていけるのか。保育を通してできることがある。
私たちは意図を持って、願いを込めて、こどもたちの生活の場をつくっている。
大切なことは〝言語化する〟ことで、確かめていける。
アンケートに回答しながら、自身のこどもたちへの関わりに至る背景や想いにも気づいていきます。より詳しく、みていくことにします。まず、こちらの項目についての設問を1〜5点で保育者が自己採点していきます。
1.シチズンシップマインド、志向性
2.子どもたちに対して大切にしている関わり
3.こども観・保育観
4.チームへの姿勢
5.保育の連続性
※各項目4つの設問あり
自覚として、「できている/できていない」を立ち止まって考える機会となりました。
こちらは19名全員の1回目〜3回目の合計点の推移です。
回答を重ねるごとに「できている」という認識が増していきます。保育者自身の理解や、園状況によって、上昇するのみではないこともありますが、総合的に回答点数は「できている」傾向になってきています。
全3回、全参加者合計点の推移は上昇していきました。 その理由として、各研修回でのインプットや他園保育者との振り返り、シェアによる気づきを実践にいかしながら理解や学びが深まっていったことが考えられます。 個別の点数についても、合計点の推移をレーダーチャートで見てみます。 点数の増加からも一人一人がシチズンシップ保育の理解を深めていっていることを感じます。
自分の言葉で保育を語れる
自分の言葉で回答する(記述式)設問は以下4つ
・シチズンシップ保育を体現する保育者として、行動した具体的なエピソードを教えてください。
・シチズンシップ保育を理解した保育者になるために、「大切にしたい考え方」と、「必要な行動」について、どんなことが考えられますか。
・なぜ、シチズンシップ保育を通してこどもを育む必要があるのか、あなたの考えを教えてください。
・こどもたちが「みらいをつくる」ことをもっと当たり前にするために、あなたは何ができると思いますか。
こちらは同じ先生の1回目〜3回目の回答です。
Q:なぜ、シチズンシップ保育を通してこどもを育む必要があるのか、あなたの考えを教えてください。
1回目回答 | 自分の気持ちや考えを大切にし、自己肯定感を持って生きてほしい。 |
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2回目回答 | これからの人生に選択肢が豊富にあり、自分で選べるように、自己肯定感を高くもっていろんなことに挑戦できるようになってほしい。 |
3回目回答 | 今までとは違う価値観や社会、文化の中で、こどもがより良く生き、社会に参加して行くために必要な資質を育むため。 |
Q:シチズンシップ保育を理解した保育者になるために、「大切にしたい考え方」と、「必要な行動」について、どんなことが考えられますか。
1回目回答 | 大人の価値観を押し付けない。一人の人間として大切に関わる。手を出しすぎないが、必要な時にはいつでも助けられるよと言う存在であること。 |
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2回目回答 | 決めつけや、押し売りはしない。こどもの現状を知り、その子にとって必要な事、大切にしたい事を考え、感じ、行動すること。 |
3回目回答 | みんなが自分らしくいられるような温かな雰囲気作り。決めつける事はせず、理由や気持ちを確認し、一緒に最善策を考えていく。 |
全3回を通してみて、回答の表現力や具体性、視野の広さが感じられます。また、重ねて同じ設問に回答することで、ぶれない自分の中で大切にしている考えを、繰り返し回答することによって確かめることができました。 私たちは、どんなこどもたちとも向き合っていきたい。だからこそ、自分自身も柔軟であること、無意識の思い込みがないかを疑い、前向きに考える姿勢が必要なんだ。 立てた「問い」に対して直接的な答えではなくても、大切なことに気づいていきます。 固定的な考えに気づき、柔軟に、視野を広く考えることから、表現の幅が広がっていくように思います。 研修日の先生たちの表情や、シェアする実践内容からも、「先生たち自身が試行錯誤して、その時の”最適”を選んできた経験」が、自信となって言葉にされていたように思います。
効果測定アンケートを実施したまとめ
全3回、効果測定アンケートを実施して見えてきたことは以下
・探究を進めることで、効果測定平均スコアが71.8pから83.4pに10pアップ
その変化は、こどもにとってはもちろん、大人自身にも良い影響があった。
(自己効力感の上昇、チーム保育の推進)
・年間通してスコアが高い項目と、低い項目があることがわかる。
高い:愛着形成/安心感の醸成
低い:子どもの興味から活動を計画実行/コントロール・管理しない/率直に意見を言える
・保育者自身の言語化は確実に進んでおり、探究研修のコンテンツや参加者同士の対話が寄与していたと考えられる。
成果と同時に、課題(これからにつなげていくこと)も見えてきました。
・往還型の機会を活かしきれず、理由としては「時間が取れない」「園内への共有不足」「共有したが積極的な意見交換にならない」という声があった。このような理由から、アウトプットへのハードルがあることがわかった。
・言語化が進んだことで保育者としての得意・苦手傾向が見えてきた。スコアが低い項目については、より意識的に引き上げていくような取り組みを実践するのが次のステップ。
以上、効果測定アンケートの分析レポートでした。
保育って可能性だらけ
保育って可能性だらけ。こどもたちの成長の可能性だけではなく、保育者としての自分への可能性もありました。 こどもたちが、そして私たちがシチズンシップであることで、これからどんな毎日が積み重なっていくでしょう。 シチズンシップ保育を通して、人として大切なことを学んできた気がします。悩んでも、すぐに最適な方法に辿り着かなくても、前向きに考えられれば、保育者として成長していける。毎日が楽しく、幸せに、いろんな人と共に生きていける社会を目指して、保育を考える喜びも改めて確かめることができた1年間でした。ここで終わりではなく、私たちの「シチズンシップ保育探究」はこれからも色を変え、形を変えながら日々を重ねていきます。
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フローレンスの保育園 各園情報
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0-2歳児のこどもたちのための小規模な保育園です。園名には、「おうちにいるような安心感を感じられ、こどもたちにとっての第2のおうちになりたい」という願いが込められています。
(東京都 江東区/台東区/品川区/豊島区/中野区/杉並区/渋谷区/宮城県 仙台市)
みんなのみらいをつくる保育園
0-5歳児のこどもたちのための認可保育所です。園名には、「”みんなのみらいをつくる人”に育ってほしい」という願いが込められています。
(東京都 江東区/渋谷区)
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